
VRIO分析とは?企業の競争優位性を手軽に明確化するフレームワーク
VRIO分析とは?企業の競争優位性を手軽に明確化するフレームワーク https://biz-tips-collection.com/wp/wp-content/uploads/2018/05/vrio_eyecatch-1-1024x683.jpg 1024 683 Biz Tips Collection Biz Tips Collection https://biz-tips-collection.com/wp/wp-content/uploads/2018/05/vrio_eyecatch-1-1024x683.jpg「自社の競争優位性は長期的に維持できるのか」「競争優位性を向上するにはどうすればよいのか。」このような問いに対して、VRIO分析とは、企業の保有する競争優位性を明確化し、維持・向上に役立てるためのフレームワークだ。このフレームワークのいいところは、簡単なフローで4つの評価項目を順番に分析するだけで、誰でも比較的手軽に分析できることだ。
VRIOは企業の経営資源を分析するためのフレームワーク
VRIOは内部分析のフレームワークだ。VRIOでは、4つの評価軸から、企業の経営資源がどれほど有効活用されているか、どこに競争優位性があるか、どれほど競争優位性があるか、分析する。
経営資源とは、企業内部にある資源のことで、いわゆる「ヒト、モノ、カネ、情報」だ。
この経営資源を評価する4つの要素は、以下の通りだ。
・価値(Value)
・希少性(Rarity)
・模倣困難性(Imitability)
・組織(Organization)
それぞれの項目については、次項で詳しく説明するが、まずどんな分析するかを見ると、イメージがわきやすいだろう。
VRIO分析のステップはシンプルだ。以下のフローチャートの通り、この4つの要素それぞれが自社にあるかを、順番に確認していく。
上記の図の見方は以下の通りだ。
その経営資源が、価値すらなければ、競争で劣位と考える。アウトソースしてしまってもよいだろう。
その経営資源に、価値はあるが、希少性がなければ、競争が均衡状態と言える。競争優位に寄与はしていないが、最低限必要でむげにできないものの場合が多い。
その経営資源に、価値と希少性があり、しかし模倣可能であれば、競争優位だが一時的だ。いずれ他社が真似してくるだろう。
その経営資源に、価値、希少性、そして模倣困難性があるが、資源を活用できるよう組織が設計されていなければ、持続的な競争優位性のポテンシャルがある、もしくは持続的な競争優位性を発揮しているが余計なコストがかかっている可能性がある。一言で言えば、持続的競争優位性のポテンシャルがあるが最大限活用されていない、と見る。
その経営資源に、価値、希少性、模倣困難性があり、そしてそれを最大限活用できるよう組織が設計されていれば、持続的な競争優位性を発揮できている。
また、フローチャートでなく、以下のような表で表現することも多い。順番にでなく、同時に全4要素を分析するやり方だが、基本的に結論はフローチャートでする場合と変わらない。
この4つの質問を通して、自社資源がどれほど競争優位に寄与しているか、もしくはどの資源が自社の強みになっているか、分析することが可能だ。
この後実例で見てみるが、その前に4つの要素についてもう少し補足する。
VRIOでは、Value(価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣困難性)、組織(Organization)を分析
価値
価値とは、そのまま企業にとってその資源に価値があるかどうかだ。価値があるというのは、外部の機会獲得に役立つ、脅威への対抗に役立つ、顧客に対しての価値を向上する、のどれかと考えてよい。例えば、牛丼屋の牛丼を作る機材類の物的資源は、顧客への価値を提供するので、価値があると言えるが、他社もいつでも買えるので希少性はない。
希少性
次に評価するのは、その資源が希少かどうかだ。希少というのは、その資源が限られていたり、他社が持っていないもののことを言う。今で言うと、例えばAIに詳しい人材という人的資源が、そもそも数が少ないので希少性があるが、模倣困難ではないと言えるのではないだろうか。その気になれば、他社も自社のエンジニアに教育することが可能だからだ。そのような資源は、一時的な競争優位を築けるが、将来どうなるかわからないので、何か手を打つべきかもしれない。
模倣困難性
次に評価するのは、その資源が模倣困難かどうかだ。VRIO分析を考案したバーニー教授は、以下の4つのケースを挙げている。
歴史的状況:企業の歴史的背景や、長い期間を通して培ったものは、模倣困難な場合が多い。例えば「業界50年」というブランディングは価値を生むし、今更時を遡って模倣することはできない。
曖昧な因果:他社から見て、その資源がどう活用されているのか、どの資源が活用されているのか把握できない場合は、そもそも何を模倣したらいいかわからないため、模倣困難だ。ブラックボックス化とも呼べる。
社会的複雑さ:企業の文化や外部との関係性によるものは、模倣しにくい。例えば、政府や規制機関との人的な繋がりが含まれるだろう。
特許:もちろん特許があれば法律で守られるので、模倣は困難だ。
組織
ここでいう組織とは、経営資源が活用されるよう組織が設計されているかどうかだ。経営資源は、価値があり、希少で、模倣困難なだけで、必ずしも効果を発揮するとは限らない。その資源を最大限活用されるよう、社内プロセスや組織構成、社内文化などがしっかり設計・機能していて初めて、意味のある資源となる。
極端な例を挙げれば、社がせっかく模倣困難な特許技術を使った製品を持っているのに、その製品を営業が理解できるような社内教育がない、より簡単な商品を売ったほうが営業にとって楽なインセンティブ設計になっている、などの状況により営業がその製品を売ってくれない状況が、駄目な例だろう。そのような場合でも、一部の営業はその製品を売っていたりするので、その資源が全く活用されていないわけではないが、少なくとも最大限に活用はされていない。
VRIO分析の実例
例えば、マクドナルド社の経営資源を見てみる。
資源:安くておいしいハンバーガーのレシピ
マクドナルドは、様々な挽肉をブレンドすることで(安くておいしくない肉においしい脂身を混ぜる)、安いのにおいしいハンバーガーを提供してきた。
これは価値はある。しかし、他のファストフードも今では同じようなことをしていると思われ、希少性はあまりないかもしれない。少なくとも、模倣困難性はないだろう。ここが強みではないことがわかる。
資源:世界中でのブランドイメージ
価値がある。また、ここまでのブランドは希少だ。そして、これほどのイメージを培うには年月がかかるので、模倣困難と言えるのではないだろうか。また、世界中に店舗を展開し各国で社員・流通が機能するよう組織化しているので、組織的にもしっかりこのブランドイメージという資源を有効活用している言えるだろう。
他にも、資金調達をする力は、マクドナルドにとって価値ある資源だろうが、これは同じくそれを持つ競合はいくらでもいるので、希少性はない。また、マクドナルドの低価格の理由の一つに、世界規模の流通システムを構築していることがあるが、これも同じく価値があり希少で模倣困難かつ組織的に活用されている資源と言えるだろう。
VRIO分析では、以下のように資源を横軸に並べて、VRIO分析することもある。
これにより、どの資源が自社にとって重要か、実はポテンシャルがあるのに有効活用されていないかなどがわかる。自社の強みとして挙げていたものが実はそうでもないとわかる場合もあるだろう。
縦軸の資源が思いつかない場合は、SWOT分析やバリューチェーン分析などから項目を出すことも可能だ。
(図は架空の企業)
VRIO分析で内部資源を評価
VRIOは、どの経営資源が競争優位性に寄与しているか、どれほど有効活用されているか、把握するためのツールだ。経営資源を価値、希少性、模倣困難性、組織の4要素で評価する。これを元に、何に力を入れるべきか、場合によっては何をアウトソースすべきか、などの判断材料に利用可能だ。
一点、注意すべきは、持続的に競争優位とフレームワーク上出ても、外部環境が変われば、そもそも価値があった資源の価値がなくなり、優位性でなくなる場合もあるので安心してはいけないことだ。