株式とはなに?資金調達方法のフレームワーク

株式とはなに?資金調達方法のフレームワーク 1024 683 Biz Tips Collection

皆さんが勤めているであろう株式会社。株式会社の発展に伴って、経済成長が進んだと言っても過言ではない。この株式会社の発展に寄与したのが株式制度だ。さて、みなさんは株式についてどこまで理解しているだろうか。株式を理解するためには、貸借対照表(B/S)の科目である資本と合わせて理解することが重要だ。また、資本にまつわる環境変化として仮想通貨なども関係してくる。これらの理解により、資本、ひいては企業を取り巻く資金調達の環境について理解を深めてほしい。

株式とはなにか?

株式とは「投資のリスクを分散する仕組み」である。いきなり、このような定義を持ち出しても難しいと思うので、株式会社の成り立ちから見ていこう。

株式会社の成り立ち

株式会社の生まれは、17世紀のオランダで設立された東インド会社と言われている。世界史を学んだ方なら記憶の片隅にあるだろう。東インド会社の事業は、インドや東南アジアから、船で香辛料などの特産品をヨーロッパに持ち帰ることだった。しかし、航海は危険が多い。(当時は現在ほど航海技術が発達していなかったし、海賊による襲撃や、疫病の伝染など、無事に特産物を持って帰れる可能性が低かった。)さらに、船による航海は長期間に及びお金もかかる。東インド会社は航海のたび、船を出航するための出資者を探した(船の出港には、船の維持費や乗組員を雇う費用等が必要になる。)。出資者は、航海の準備に必要な全ての費用を、事前に負担する代わりに、持ち帰った特産物を乗組員への給料等を差し引いた上で、全て受け取ることができる。航海に成功した場合は出資した金額以上のリターンを得られる訳だ。さて、ここでみなさんが出資者になると想像してみてほしい。無事に帰ってこれるか分からない航海の費用の全額を負担できるだろうか。自分の資産にかなりの余裕がなければ、なかなか決断できないだろう。出資はそれぐらいのバクチだった訳だ。そこで、東インド会社は1隻当たりの出資者を複数募った。これにより、東インド会社は出資者を集めやすくなり、多数の船を航海に出すことができるようになった。さらに、今までは資産が足りず出資できなかった者も、出資者の一員に加わることができるようになる。これが、株式会社の成り立ちと特性だ。投資リスクの分散、大規模化、数の増加について、理解頂けただろうか。

株式市場の発達の経緯

先ほどの例の通り、出資者は事前の出資(リスク)をする代わりに、会社の成果(リターン)を得る。そして、出資者はその証として、権利証を受け取る。これが株式の原型だ。さて、ここでまた、みなさんが出資者(=株主)だと想像してほしい。あなたは権利証を受け取ったが、その権利がお金に代わるのは何ヶ月あるいは何年も先だ。一方で、急に大金が必要になったとしよう。あなたは、その権利を誰かに譲ろうと考えるのではないか。この権利の売買が、株式売買である。株式は紙媒体のため受け渡しも容易だ。そして、株式の売買が増加するに従って、売買の仲介人が生まれた。株式を売りたい人と買いたい人を繋げる人だ。さらにこれらが発展したものが「証券取引所」だ。このように、特産品を受け取る権利が紙に置き換わったことで、格段に流通性が増し、株式の「市場」が形成された。補足すると、2009年より上場企業は株式が電子化されており、流通性が一層増している。驚くべきことは、つい最近まで株式を購入すると紙の株券を受領することとなっていたことだ。

以上のように株式会社の所有権は株式を有することで、どれくらい保有しているかは株式の保有割合により決定する。つまり、会社の持ち主は、社長でも、従業員でもなく、株主なのだ(法的には)。

資本とはなにか?

さて、話は変わるが、冒頭に説明した資本とはなにかを確認しよう。資本とは「商売や事業に必要な資金」をいう。いわゆる、元手というやつだ。

返済が必要な資本

みなさんの中で会計に明るい方は、資本=資本金、つまり、返済不要の資金と理解しているかもしれないが、ここでいう資本はそうではない。先ほどの例を会社側から見ると、船の航海が失敗した場合でも、株式会社は出資を受けた金額を返済する必要はない。しかし、仮に船を造るにあたって、銀行からお金を借りていたらどうだろうか。航海の成否に関わらず、借りたお金は返さなければならない。借りたお金であっても、商売や事業に必要な資金であるので「資本」となる。そして、株式のように返済不要の資本を「自己資本」、借入れのように返済が必要な資本を「他人資本」と呼ぶ。そして、出資者側からみると、自己資本の場合は、事業の成果(これを配当という)から、他人資本の場合は、元本と利子によってリターンを得るのだ。

自己資本と他人資本の関係

今までの話をまとめると図のようになる。

ご理解頂けただろうが、ここで重要なことは、株式とは資本に含まれる一つの分類ということだ。そして、会社所有権や返済義務などのフレームワークでみたとき、自己資本と他人資本は大きく異なる。株式会社は状況に応じて、どちらの資本によって事業に必要な資金を調達するか、その都度選択する。この意思決定プロセスについては、別の機会で紹介したい。

新しい形の自己資本

株式市場の発達については、すでに説明した通りだが、昨今の企業の資金調達の方法はますます多様化している。例えば、仮想通貨のニュースが新聞誌面等を賑わせているが、仮想通貨を利用する資金調達方法がイニシャル・コイン・オファリング(以下、ICO)だ。

ICOの特性

ICOは、返済不要な資金調達方法のため、「自己資本」に大別されると考えられる。しかし、内容は自己資本と他人資本の折衷のような位置付けだ。ICOでは、出資者に対して、デジタル権利証(トークンと呼ばれる)が発行される。その権利証には、会社の所有権もなければ、配当や利子の受け取る権利もない。出資者は事業の成功に伴う、トークンの値上がり後、対応する仮想通貨の取引所でトークンを売買することでリターンを得る。場合によっては、商品の購買権利やクーポン等が発行される場合もある。まとめると以下の通りだ。

ICOを代表とした新しい資金調達方法は、今後一層増えていくだろう。どのような資金調達方法であっても、会社が返済義務を負うか否かで他人資本か自己資本に分類することができる(少なくとも会計的には)。

資本の調達方法の整理

今回の内容をまとめると以下の通りだ。
①株式(自己資本)は投資のリスクを分散する仕組み
②株式(自己資本)は資本の中の1つの分類
③資本には、返済が必要な他人資本もある
④資本の調達方法は、ICOなど一層多様化している
⑤そのような調達方法であっても、フレームワークで整理することが可能
これらをもって、会社についての理解を深める一助となってほしい。