【5分でわかる】レモン市場・ピーチ市場とは?解説と具体例

【5分でわかる】レモン市場・ピーチ市場とは?解説と具体例 1024 634 Biz Tips Collection

レモン市場は、情報の非対称性が市場に与える影響に関するミクロ経済学の理論だ。例えば自分の属す業界や買い手となっている市場において、情報の非対称性がどんな悪影響を与えるか把握することで、対策を立てることができるだろう。※ちなみに、情報の非対称性とは知っている者が得をする状態のことで公平な状況でないことを指す。

レモン市場とは、買うまで商品価値がわかりにくい市場

レモン市場は、レモンの原理とも呼ばれる。
情報の非対称性が大きく、すぐに商品の価値がわかりにくい市場のことだ。

レモンは、厚い皮を持つため、外見から鮮度を判断できない。
レモンのように、商品の品質がわかりにくい市場では、商品の品質についての情報は売り手のみが持っており、買い手には共有されていない。ここに情報の非対称性(不公平な状況)が存在する。

例えば、中古車市場がよい例だ。中古車は、購入してしばらく乗ってみるまで、その車の品質がわからない。乗り始めてすぐ不調が出たり壊れても、もはや返品できないのだ。
一時期のSEO業者もレモン市場と言われることがある。頼むまで効果はわからず、(しかも結果が出るまで時間がかかる)、業者が乱立し、どこがいいのか悪いのか買い手には区別がつきづらい。

 

レモン市場は、崩壊する

レモン市場では、どんなことが起こるだろうか。
①まず、不良品など質の低い商品を売る事業者が増える。質のいい商品をしっかり売るよりも、粗悪品をさばく方が得するからだ。どうせ買い手にはわからない。
②消費者が不安になり、高いお金を出さなくなる。(消費者の期待価格が、良品と粗悪品の間の金額になる。)
③真面目に質のいいものを出している事業者がますます儲からなくなる。
④安い金しか出さない消費者と、粗悪品しか出さない事業者だらけになる。
⑤消費者は商品を買わなくなり、市場はなくなる。

このように、レモン市場では、市場の商品の質と価格が下落し、売り手も買い手も得しない状態になる。市場は縮小し、崩壊することすらある。

レモン市場の理論では、良品をピーチと呼び、粗悪品をレモンが呼ばれることが多い。レモンは英語で「良くない」「うまくいかない」といった意味があるからだ。情報の非対称性が大きい市場では、人はピーチとレモンの見分けを付けれないため、市場はレモンだらけになっていく。

 

レモン市場の食い止め方

市場全体として、商品の質も価格も下落していくのは、売り手にとっても買い手にとってもいいことではない。

レモン市場の問題の回避方法は、情報の非対称性をできるだけなくすことだ。

1つのやり方は、可能であれば、「ピーチを市場に投入する」というやり方がある。
ピーチ(桃)はレモンと違い、少し古くなると、表面が黒ずみ、鮮度の低下がすぐに見て分かる。
つまり、透明性が高く質の高いものを市場に投入すれば、買い手は皆そっちに群がるので、他社も追従せざるを得なくなるということだ。
ただし、そもそも買うまで質がわかりにくい商材がレモン市場なので、透明性を高める(買い手に質の高さを買う前に納得してもらう)ことが現実的でない場合も多い。

他にも、以下のようなやり方がある。

・規制
法律や、業界団体が、品質担保や透明化のための規制を実施する場合がある。成分などの表示義務や、検査義務化、などだ。むりやり市場の透明性をあげる方法だ。
例えば、サブプライムローンが出回っていた金融市場はレモン市場と言えるだろう。金融商品の理解には専門知識が必要である上、商品は複雑化し原資がどこから来ているのか追えない場合も多かった。金融商品の原資の追跡可能性(トレーサビリティ)を規制で確保しようとする動きは、この一例だろう。

・第三者評価
アマゾンの商品レビューや、食べログのレビューなど、第三者による評価は、市場の透明性を高める効果がある。また、業界規制でもあるが、第三者の評価機関を設置する形もあるだろう。

・ブランド化
市場自体の改善というよりは一事業者視点では、ブランド化がある。例えば先ほどの買うまでわからない中古車市場でも、「会社Aのものは質がよい」というブランドが築ければ、業界自体がレモン市場化し価格下落していったとしても、会社Aは高品質高価格を維持できるだろう。あくまでイメージなので、透明性が高いと呼べるかは微妙だが、先ほどのピーチを市場に投入するという考えに似ている。

 

ピーチ市場とは、情報の非対称性が少ない市場

先ほど、良品をピーチ、粗悪品をレモンと例えたが、
レモン市場と逆の考えとして、情報の非対称性の少ない市場をピーチ市場と呼ぶ場合もある。

こんな市場では、レモン市場と逆のことが起こる。
商品の良し悪しが買い手にもすぐにわかってしまうので、粗悪品は駆逐される。
また、良いものは良いとアピールしやすく、買い手にも粗悪品をつかまれるリスクが少ないので、レモン市場のように価格が下落していくことはない。
売り手も質を上げる努力をするだろうし、他社との違いの良さをアピールしやすいため価格も上げやすい。

 

まとめ

・レモン市場は、情報の非対称性がある市場
・情報の非対称性がある市場では、品質劣化と価格下落がおこる
・対策は、情報の透明性をあげること。方法は「ピーチ」を投入する、規制、第三者レビュー、ブランド化、などがある。
・情報の非対称性が少ない市場(ピーチ市場)では、逆に質が粗悪な商品が駆逐されていく。