戦略

3分でわかる!バリューポートフォリオとは?株主と経営者の両視点の事業分析フレームワーク
3分でわかる!バリューポートフォリオとは?株主と経営者の両視点の事業分析フレームワーク 1024 683 Biz Tips Collection

バリューポートフォリオ分析は、経営戦略に使われるフレームワークの1つだ。事業ポートフォリオとして、どの事業に経営資源を投下し、どの事業から撤退するか、の判断に使われる分析だ。特徴は、事業を株主視点と経営者視点の両方から分析することだ。

バリューポートフォリオは株主視点と経営者視点の双方から事業ポートフォリオを分析

以下がバリューポートフォリオ分析の例だ。

ごらんの通り、バリューポートフォリオでは、以下の2軸で各事業を評価する。
・ROI (株主視点)
・会社ビジョンとの整合性(経営者視点)
また、円の大きさは投下した資本で表すことが多い。投下した資本の大きさによって事業の力の入れ具合がわかるので、大きいほうから順に優先的にポジショニングを確認していくべきだ。

それぞれについて見てみよう。

ROI

ROI(Return on Investment)は、「投資利益率」のことだ。
一言でいえば、その事業がいくら儲かってるかの指標だ。

式としては、「利益(儲かった金)÷資本(投入した金)」で、数値が高ければ高い程、投資した金に対してより多く利益を上げていることになる。

株主にとっては、自分が投資した金がより多く利益を上げることが一番の目的のため、このフレームワークでは、このROIが株主視点として位置づけられている。

ビジョンとの整合性

金を投資してそこから更なる利益を上げるのが会社の目的の1つである一方、会社には加えて「経営ビジョン」がある。
経営ビジョンとは、会社として「将来あるべき姿」や「実現したい姿」のことだ。

これは、利益目標と関連しつつもそれと別の、会社としての夢や目標なので、このフレームワークでは、経営者視点と位置づけられている。

例えば、ライオン株式会社の経営ビジョンは以下の通りだ。

次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ
「健康、快適、清潔・衛生を通じた新たな顧客体験価値の創造」により、毎日の習慣を、もっとさりげなく、楽しく、前向きなものへ”リ・デザイン”することで、1人ひとりの「心の身体のヘルスケア」を実現する。

このように、会社として何を目指しているかを、示している。

ライオン株式会社の例で言えば、健康や快適さに関係する事業であれば、ビジョンとの整合性は高いと判断できる。逆に、広告事業や出会い系事業などを始めたら、それはビジョンとの整合性が低いと判断されるだろう。

 

バリューポートフォリオの各セグメントの戦略

ROIとビジョンとの整合性の2軸で、会社の各事業を評価すると、以下の事業を4象限のセグメントに分けることができる。
・本命事業
・課題事業
・機会事業
・見切り事業

これら各セグメントの事業に対して、どんな戦略が望ましいのか。詳しく見ていこう。

本命事業は更なる拡大

ROIも高く、経営ビジョンとの整合性も取れている事業は、本命事業だ。
しっかり利益を上げつつ、あるべき姿に向かっているという、完璧な事業だ

これは、事業ポートフォリオの中で、最重要視すべき事業たちであり、更なる拡大を狙うべきだろう。

課題事業は利益向上を狙う

会社のビジョンと整合性は高いが、利益をいまいち上げていないのは、課題事業だ。
求められるのは、採算性を改善して、うまく本命事業に持っていくことだ。
長期にわたってそれができないと、いくら会社のあるべき姿に向かって貢献しようとも、株主や投資家から撤退するよう圧力を受けてしまうかもしれない。

機会事業はビジョンとの整合性を合わせる

利益を上げているが、会社ビジョンと合致しないのは、機会事業だ。
これも、課題事業と考え方は同じで、ビジョンとの整合性を持たせて、本命事業になるように持っていくのが望ましい。

方法は2通りある。①うまくビジョンと整合するように事業を微調整・ピボット(方向転換)する。②経営ビジョンを定義し直す。もちろん②の方がハードルが高い。しかし多角化した新事業がもはやメイン事業となり、それに合わせて経営ビジョンを変更した例は実際多々ある。

ビジョンと整合しなくても、あくまで収益源として位置づけて残すという手もある。主要事業としてWebサービスを作っているベンチャーが、主要事業が利益を上げるまでシステム開発の受託を主な収入源にする場合はよくある。

しかし、ビジョンと整合しない事業を長期に続けると、従業員のモチベーション低下や対外的なブランド力低下という悪影響があるとも言われており、できるだけビジョンに合わせるようにした方が望ましい。

見切り事業は見切る

利益も上げず、本業とも関係ない事業は、見切り事業だ。
これはその名の通り、撤退するのが望ましい選択だ。

 

まとめ

・バリューポートフォリオは、自社の事業を、ROIとビジョンとの整合性の2軸で評価・分析
・ROI高・ビジョン整合性高:本命事業⇒拡大
・ROI低・ビジョン整合性高:課題事業⇒採算性向上
・ROI高・ビジョン整合性低:機会事業⇒ビジョンとのすり合わせ
・ROI低・ビジョン整合性低:見切り事業⇒撤退

「戦略」と「戦術」の違いとは?ビジネスにおける具体例と解説
「戦略」と「戦術」の違いとは?ビジネスにおける具体例と解説 1024 682 Biz Tips Collection

よくごっちゃにされてしまう「戦略」と「戦術」という言葉。しっかり違いをわかっているだろうか。2つの違いを解説する。

戦略とは中長期の方向性。戦術は具体的な手段

戦略や戦術はもともと軍事用語だ。軍事では、全体的な攻め方、例えばどこに兵を配置するか、どの地域を攻めるかなどを、戦略と呼ぶ。個別の戦闘における戦い方は戦術と呼ばれる。今ではビジネスを含め様々な場面で使われる言葉だ。

簡単に言うと、戦略は、目標達成のための全体的な方向性だ。
まず目的がと現状があり、その間のギャップをどう埋めるのか、というのが戦略だ。

対して、戦術とは、戦略に沿った具体的な手段となる。
戦略の方向性に対して、実際にどんな個々の打ち手を打つのかが戦術だ。

戦略がWhat(何をするか)で、戦術がHow(どうやってするか)と考えるとよい。
戦略では大局的・長期的な視点で向かう方向性を決めるが、戦術は短期的な具体策だ。

 

ビジネスにおける戦略と戦術の例

まずシンプルな例を見てみよう。

商品の事業戦略:まずは認知を上げる。
戦術:TV CMを打つ。

人事戦略:エンジニア人員を拡大する。
戦術:①エンジニア向けの転職サイトに掲載する。②既存エンジニアによる社員紹介制度を導入する。

戦略と戦術の違いのイメージがついただろうか。
目的に対して戦略も複数設定されることや、1つの戦略に対して複数の戦術が設定されることは問題ない。
他にも実際の例を見てみよう。

ユニクロの例

企業戦略:価格の安さで競争優位性を確立する。(コスト・リーダーシップ戦略と呼ばれる)
戦術:SPA(製造小売業)。企画、生産、販売まで一貫して自社で行うことで、低価格を実現する。

ロケット・インターネットの例

企業戦略:既存のITサービスを速攻でパクり、まだない国でローンチする
戦術:アメリカのオークションサイト「イーベイ」をパクって、ドイツで「アランド」というオークションサイトをローンチする

この企業は、この方法で200以上のサービスをローンチした。

セブンイレブンの例

出店戦略:むやみに様々なエリアに進出せず、特定の地域に高密度に出店していく
戦術:①まずは○○区にXX店出店する。②○○区に絞ってフランチャイズオーナーの募集をかける

セブンイレブンのこれは、いわゆるドミナント戦略と呼ばれるものだ。同じエリアに大量に出店することで、認知度や親近度が上がる、物流や広告のコストが下がる、といったメリットがある。
コンビニが広まり始めていた頃、別のコンビニ企業は、各地域に一店づつ出店していきセブンイレブンよりカバーする地域は広かったが、この戦略を取ったセブンイレブンの方が業績がよかったという。まさに戦略勝ちのいい例だろう。

 

戦略と戦術のどちらかが欠けてもうまくいかない

戦略と戦術は、どちらかの方が重要ということではない。しっかり両方を意識することが重要だ。

戦術なき戦略では、実行が伴わない。
どんなすばらしい戦略の絵を描いても、実際に実行しなければ意味はない。

逆に、戦略なき戦術は、どこに向かうべきかわからない、かむしゃらな努力になってしまう。
労力も分散してしまうし、どの戦術をよしとすべきかの判断も難しい。ビジネスではリソースは限られている。戦略は何をするかを決めることで、逆に何をしないかを決めていると見ることもできる。「戦略とは捨てること」と言う人もいるくらいだ。

戦略がしっかりあることで、現場での判断がしやすくなる。ただ「売上を上げろ」という状態の営業部隊よりも、「特定の業界を狙う」、「商品Aをフックにして、後々Bを追加発注させる」、などといった販売戦略的な方針がある営業部隊の方が、動きやすい。

また、戦略も戦術もあるが、戦術が戦略に対応していないというケースもある。例えば、上層部は新規開拓への注力を戦略としてあげているのも関わらず、現場は既存顧客の対応ばかりしているという場合だ。戦略と戦術は、しっかり対応させることで意味がある。

 

戦略と戦術の両方を持とう

まとめると以下の通りだ。
・戦略は、目的達成のための全体的な方向性
・戦術は、戦略に沿った具体的な手段
・戦略と戦術はいずれも欠けず、しっかり対応していることが重要

話に上がった案は、戦略なのか戦術なのか、常に意識できるとよいだろう。事業全体の話をしているのに、戦術的な具体策の話に話題がひっぱられてしまうことは多々ある。

会社のヴィジョンや目的と、戦略や戦術の関連性については、以下の記事も参考頂きたい。
組織の目的と戦略に一貫性を持たせる! VMOSTモデル