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仕事の進め方は段取り8割!スケジュール/タスク/ToDoの立て方コツ
仕事の進め方は段取り8割!スケジュール/タスク/ToDoの立て方コツ 1024 768 Biz Tips Collection

「段取り」=「作業の設計」
特定の業界や職種ではよく聞く言葉ではあるが、馴染みのない人にとっては違和感のある言葉かもしれない。

ここでは、”目的達成に向けて、自身が行う業務を明らかにし、To-Doやタスクを検討してスケジューリングする、一連の行為”と定義しよう。実はこの作業設計こそが全ての仕事の基本と言っても過言ではない。作業設計の出来不出来が最終アウトプットに大きく影響を与えるのだ。

本稿は主に新人ビジネスマンを想定したものではあるが、ぜひ、中堅以上の皆様も一度目を通してみて、正しい作業設計が日々出来ているか確認してもらいたい。上司と仕事のソリが合わない、仕事が遅いと指摘されているといった方がこれを知って劇的に改善した例がある。

理解を深めるために以下のような状況に置かれたと想定して欲しい。

日々業務に頑張るあなたは上司から次のような言葉を掛けられた。

「翌月曜日朝一の定例会議の場で君に調べてもらっている範囲の検討状況をプレゼンすることとなった。君の最近の頑張りを見ていて、資料にどう落とし込むかも含めプレゼンを一度任せてみたい。もちろん、事前に私の確認を通してね。あ、それと、検討状況の1つの◯◯に関しては他部署の石井さんも別の切り口から進めているから、彼の検討状況もプレゼン内容に含めておいてね。」

初めてのお客様へのプレゼンのチャンス。ここで頑張りと能力を伝えてこの先につなげたいと意気込むあなた。さあ、どうやって進めていこうか。順を追って解説していきたい。

ゴールまでの道筋を描こう

① 関係者(ステークホルダー)を把握する

業務に関わる関係者(または社)を洗い出そう。

一概に正解と言える指標はないが、初期の段階(全体像を把握する段階)ではあまりに細かすぎる粒度は避けたほうがよい。意思決定または作業の代表者程度にとどめておくのが望ましいだろう。
本件の場合だと上司、石井さん、自分となるだろうか。

②ゴールの確認とマイルストーン(中間地点)の設定

簡単に言えば、「いつまでに何をしなければいけないかを把握して、ゴールから逆算してやらなければならないことを洗い出していく」作業だ。
小学生でもできると思っただろうか。もちろんだ。難しいことはやっていない。
本件の状況において、自分ならどうするだろうか、少し読み進むのを止めて考えていただきたい。
ただし、1つだけ留意してもらいたいポイントがある。それは、可能な限り具体的に日時を検討することだ。誤っていても構わない。「所与の条件を考えればそれくらいはいるよね」を繰り返して、お尻から頭までのスケジュールをひいていってもらいたい。

改めて本件について、ゴールを確認した上で逆算していくと、、

ゴール-1:上司への説明
⇒ダメ出しを受けて修正を行う可能性がある。上司は木曜の朝一と金曜の午後しか空いていない、、、となると、遅くとも木曜日の朝9時には説明に行かなければいけない

ゴール-2:資料完成
⇒上記に則り、水曜日中には資料を作っておかなければ。

ゴール-3:資料素材収集
⇒資料を作るために必要な素材はどうなっているんだっけ。石井さん以外のパートは私の方で集まりそうだ。となると、石井さんから水曜日中にはヒアリングする必要があるぞ。石井さんの予定は、、火曜日の午前しか空いていない!もう月曜日の夕方だ!今すぐに石井さんに明日の打合せの依頼をしなければ!

いかがだっただろうか。

まずはじめに、初めてのチャンスに意気揚々として、資料の構成をどうするか、見せ方をどうするか考えた人も少なくないのではないだろうか。
そう、少なくとも本件の場合においては、調査内容の検討や資料構成の検討などより、まず第一に石井さんにアポを取らなければ上司がオーダーした内容を満たすことすらできない可能性が高かったわけだ。

③成果物と主要な検討項目の洗い出し

石井さんにアポを取ったら次は、それぞれのマイルストーン間での成果物を洗い出す。
ここまでくれば全体像の把握まで後一歩だ。マイルストーンを実現するためには、何が必要なのか(何ができている必要があるのか)を洗い出そう。併せて、成果物作成にあたって主要な検討項目も洗い出そう。
ここまでの一連の取り組みにプレゼン当日までの流れも含めて図示してみると以下のようになる。
もちろん、こんなに大仰なものを毎回毎回作る必要はないが、作業にのめりこみ全体像を忘れないためにも頭の中に絵を描いておくか、ノートに記しておくと便利だ。
さあ、これでゴールまでの道筋が明確になった!あとは一直線に走るだけ!
※別稿で触れるが、プロジェクトマネージメントの基本も上記の通りだ。より複数のステークホルダーが存在し、複雑化したプロジェクトであればあるほど、全体像を一枚でまとめた図は非常に重要になる。図を基にWBSを作成する、プロジェクト全員の合意をとる、運用する、などなどは別の機会でお話したい。

作業設計は百利あって一害なし!絶対やろう

作業を設計することで、重要なポイントを逃さずに余裕をもって業務を進められることをおわかりいただけただろうか。
それだけではなく、進捗状況を上司や周囲へ正しくわかりやすく伝えることも容易になるし、結果、信頼を獲得することもできる。
最初のうちは一々面倒くさいと思うかもしれないが、結果、最も効率的かつ効果的に業務を進めて評価を獲得することができるのだ。
ここまでお付き合いいただいたが、いかがだったろうか?
何も特別なことはなく、何なら我々が日常でやっているプロセスを明確化して肉付けしただけに過ぎない。
にもかかわらず、ことビジネスの現場になると、これが途端にできなくなるケースが散見される。自分が興味のある分野から取り掛かったり、簡単そうな箇所から取り掛かったり。
あなたが得意かどうか、好きかどうか、これらは二の次なのだ。あくまでも、やらなければならないことをやらなければならない期日までにやることこそが求められていることなのだ。
こう書くと冷たい言い方に聞こえるが、一方で気が楽にならないだろうか。人間性や趣味嗜好は関係ない、ある種のゲームのようなものだと思ってもらうといいかもしれない。ビジネスというゲームにおいて、本サイトで有利になる攻略法を身に着けながら、ぜひとも大海へと漕ぎ出して行って欲しい。進めば進むほど、ゲームは面白くなる。
健闘を祈る。
業務改善や振り返りのためのフレームワーク「KPT」とは?
業務改善や振り返りのためのフレームワーク「KPT」とは? 1024 682 Biz Tips Collection

よく振り返りをするべきと言われるが、実際に振り返っても意味があったのか実感できないことが多くないだろうか。振り返りはぼんやり行っても意味はない。チームとしての場合も、個人としての場合も、振り返りを行う際はその指針として、簡単なフレームワークが1つあれば、考えるべきポイントが明確になる。

今回はそのための基本的なフレームワークを1つ紹介する。

 

KPTとは、Keep,Problem,Try

KPTは、もともとはシステム開発のプロジェクトなどで使われていた、振り返りのためのフレームワークだ。

KPTは以下の略となる。振り返る時はこのK→P→Tの順序でするとよい。
K= Keep(続けること)
P= Problem(問題があること)
T= Try(新しく取り組むこと)

たったこの3つの基本的なフレームワークだが、振り返るべきところが明確になり効率的だ。

逆に明確な指針なしの振り返りは、ただの感想になってしまいがちだ。

KPTは、プロジェクトの業務改善の一環でチームとして振り返る場合も、個人的に振り返る場合も有効だ。

もともとはチームで実施されることが多いフレームワークで、その場合はホワイトボードなどに以下のような枠を作って実施することが多い。

振り返るそれぞれの項目について見てみよう。

 

Keep (続けること)

Kでは、良かった/うまくいったので継続することをリストアップしていく。
チームで振り返る場合でも、個人的にうまくいったことをシェアしてもよい。

ポイントは、ただ良かった結果だけを挙げるのではなく、その結果に結びついた行動を挙げることだ。
(もちろん、結果を挙げてはいけないわけではない。まず結果を挙げて、どの行動がよかったのか考える順序でもよい。)

 

Problem(問題があること)

Pでは、問題があることを書き出していく。
以下のようなものが含まれるだろう。

  • 実際に問題が発生したこと
  • 不安なこと、リスクを感じること
  • よりよくできそうなこと、工夫できそうなこと

気をつけることは、個人の責任を追及するような会議にしないことだ。

犯人の吊るし上げでなく、あくまでチームとしてどんな課題があるかを考えよう。

 

Try(新しく取り組むこと)

Tでは、次に新しく試すことを書き出す。
Problemで上がった問題点の改善策などでもよいし、やったらいい気がしていることでもよい。
たくさん上げていき、最後にいくつかに絞って実行するのがよいだろう。

また、KPTを使った振り返りを複数回実施する場合は、挙げられたTryを次回のKeepやProblemで見直すとよいだろう。

 

まとめ

  • KPTは、振り返りを有意義にするためのフレームワーク
  • K→P→Tの順序で振り返りを実施
  • KはKeep(良かったので、このまま続けること)
  • PはProblem(問題のあること、改善すべきこと)
  • TはTry(新しく取り組むこと)
自由競争のメリット?弊害?ウィンブルドン現象とは | 実例と解説
自由競争のメリット?弊害?ウィンブルドン現象とは | 実例と解説 1024 682 Biz Tips Collection

グローバル化の流れに伴い、多くの国や産業で、市場の自由化・規制緩和が議論されてきている。自由化・規制緩和には当然いいこともあれば悪いこともある。ウィンブルドン現象(または、ウィンブルドン効果という)は、自由化・規制緩和によって発生する現象を呼んだ言葉だ。

ウィンブルドン現象とは

ウィンブルドン現象の語源は、テニスの世界的な大会であるウィンブルドン選手権から来ている。
今では「最も格式の高い大会」とまで言われるが、元々はイギリスのローカルな小さな大会だった。しかし、参加ルールを規制緩和し、外国人選手の参加を受け入れるようにしたことで、世界中から競合が集まる世界的な大会となり大成功した。それが今のウィンブルドン選手権の起源だ。大坂なおみ選手が活躍されていて、日本のテニス熱も再燃しつつあるので聞いたことがある方も多いだろう。

一見ハッピーエンドだが、実は弊害もあった。イギリスの大会なのに、イギリスの選手が全く活躍しなくなってしまったことだ。男子シングルスでは、実に77年間もイギリス選手の優勝はなかったのだ。

この件になぞらえて、市場の門戸を開き自由競争を促進した結果、市場自体は活性化するものの、地元企業が海外勢に淘汰されたり買収されたりしてしまう現象を、ウィンブルドン現象と呼ぶ。

 

ウィンブルドン現象の例

最も有名な例は、これもイギリスの、金融市場だろう。
サッチャー政権時代に、ビックバンと呼ばれる金融市場の大規模な規制緩和が行われた。これによって、停滞していたロンドンの金融市場は再び世界の金融ハブとしての地位に復活したのだが、代わりに伝統的な金融機関のほとんどが外資系企業に買収された。

また、1970年代には、主に日本のメーカーが家電や自動車を米国に輸出強化した結果、GMなど多くの現地企業が破綻したのも1つの例だろう。

程度の違いはあれ、市場自由化により海外プレーヤーだらけになってしまったケースは、世界中にある。

また、語源通りスポーツの世界での減少にもこの言葉が使われることはまだある。例えば、日本の相撲業界でウィンブルドン現象が見られる。特に一時期は、日本人選手の横綱が不在で海外出身選手だらけだった。プロゴルフや格闘技も同様だ。ちなみに、日本の観客はウィンブルドン現象があまり好きでないらしく、外国人選手が増えると視聴率が下がるという話もある。

 

ウィンブルドン現象はいいことか悪いことか

ウィンブルドン現象には、ポジティブの見方とネガティブな見方がある。
ネガティブな見方はもちろん、国内のプレーヤーが淘汰されるということだ。
ポジティブな見方は、国内のプレーヤーや競争が少なくても、競争を促進して経済を活性化させることだ。地元企業の淘汰よりも市場として発展させる方が経済効果が大きいという見方だ。(多くの場合、とはいえ地元企業の活躍の場は残りはすると考える。)自由主義の経済的合理性を正当化する際に使われることもある。

イギリスの金融市場の件は、よかったことだと見る考えも多い。地元プレーヤーの力が足りなくても、海外資本の注入や活性化される競争によって、結果市場が好況にできた。
話の元になっているウィンブルドン選手権も、結果世界的な大会となり大成功した。また海外の強豪との競争にさらされることで現地選手のレベルも上がったのではないだろうか。(優勝を取り返すまで77年かかったが。)

実際のところは、ネガティブな意味で使われることの方が多い。特に規制緩和に反対し市場を守るための議論の文脈で使われる。日本のみならず、韓国の銀行やインドのBPOなどの議論でも持ち出されたようだ。

 

まとめ

ウィンブルドン効果:市場の門戸を開き自由競争を促進した結果、市場自体は活性化するものの、地元企業が海外勢に淘汰されたり買収されたりしてしまう現象

  • 自由競争にさらされて地元企業が淘汰・買収されてしまうネガティブな現象としての見方
  • 海外勢による競争促進による市場発展というポジティブな現象としてとらえる見方

がある。

 

【初心者必見!】財務分析の前に理解しておきたいこと|オススメ分析のやり方
【初心者必見!】財務分析の前に理解しておきたいこと|オススメ分析のやり方 1024 761 Biz Tips Collection

安定してると思っていた大企業が、実際は、経営の危機に陥っていたというニュースを見たことがあるだろう。ニュースで見た場合は他人事に感じるが、それが自分の会社だったとしたら、明日からの生活に不安になるのではないか。また、ビジネスパーソンに限らず、就活生や株式投資を始めたい方々も、会社の経営状態を客観的にとらえることは非常に重要だ。
財務諸表を使った経営分析(財務分析)は、専門書等も多く発行されているが、ROI・ROE・PERなどのワードが出てきて、アレルギーを起こしやすい。このアレルギーは、そもそも財務分析をする前に理解すべきことを一足飛びにしているために起こる。そのため、今回は財務分析を学ぶ前に理解すべき以下3つのことについて紹介したい。

1. 分析とは何かを理解する
2.分析結果にはパターンがあることを理解する
3.示唆を入れて初めて優秀な分析

なお、分析以前にそもそも財務諸表とは?という状態の方は、まずは「財務諸表とは何か?財務諸表の役割と見方について」を参照頂きたい。

 

おさらい:財務諸表とは?

財務諸表(Financial statements、通称F/S)とは、「企業の経営状態を数値で把握できる資料」だ。そして、財務諸表は以下の4つから構成されている。
①.貸借対照表(Balance sheet、通称B/S)…企業の一時点の財産の状況(財政状態という)を明らかにする表
②.損益計算書(Profit&Loss Statement、通称P/L)…企業の一定期間の利益の状況(経営成績という)を明らかにする表
③.株主資本等変動計算書(Statements of Shareholders’ Equity、通称S/S)…貸借対照表(B/S)の純資産の部の一定期間の変動を明らかにする表
④.キャッシュ・フロー計算書(Cash flow statement、通称C/F)…企業の一定期間の現金の変動を明らかにする表

財務諸表3表

財務諸表の中でも、特に重要なものが、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書だ。これらは「財務諸表3表」と呼ばれている。この3つの分析をすることが、企業の経営状況を効率的に把握する近道だ。

 

1.分析とは何かを理解する

財務分析に限らず、分析とは「比較すること」することだ。当たり前の様であるが意外とこれを理解いない人が多い。とりあえず、全体の何%か計算してみたり、ROI・ROEなどのフレームワークの計算をするのが典型的な失敗例だ。目的を理解し、そのために必要なもの同士を比較して初めて分析といえる。そのため、分析を始める前に比較する”対象”と比較する”方法”を整理しておくことが重要だ。

では、比較する”対象”と比較する”方法”とはどういったものだろう。普段皆さんが無意識に行っている比較を例に挙げて解説する。例えば、ビタミンの摂取量に不安があり、高ビタミンな食材を購入しにスーパーにいったとする。限られた時間の中で効率的に食材を探し出し購入する場合、どのような思考プロセスを経ているだろうか。

まず、大体の人が何処のコーナーで食材を購入するかを検討するはずだ。これが比較する対象(What)の検討だ。例えば、「A. のり・乾物コーナー」と「B. 果物コーナー」のどちらで食材を探すのが効率的だろうか。
おそらく、「B. 果物コーナー」を探すのが効率的だと感じてたはずだ。それは「A. のり・乾物コーナー」の方が一般的にビタミン包含量の少ないイメージだからだ。

次に「B.果物コーナー」の中でビタミン保有量の多い食材を選定する。どのような基準で選ぶかを考えて食材を選ぶはずだ。これが比較する方法(How)だ。方法としては「a. 目で色合いや鮮度を比べる」「b. 触って大きさや密度を比べる」「c. 品種毎のビタミン量を調べて比べる」などがある。いずれも有効そうであるが、最も定量的かつ客観的に比較できるのは、c. の方法だろう。

このように分析を行うためには必ず「対象(A&B)」と「方法(a&b&c)」が必要だ。恐らく食材探しであれば読者の皆さんも無意識にできているはずだ。しかし、この2つが事前に整理されていないと広いスーパーで生産性のない食材探しを行うことになる。
いざ、財務分析と聞くとROI・ROEの分析方法や計算式を暗記しようとしてしまう人が多い。実は財務諸表の分析も食材購入の例と同様の思考プロセスで成り立っていることを知って欲しい。目的があり、それを明らかにするための比較対象があり、比較する方法が存在するのだ。

比較する対象(What)と目的

比較する”対象”は、その資料を作成する目的に合わせて決定する必要がある。財務諸表3表の作成目的を踏まえると、比較する”対象”は以下が望ましい。

比較する方法(How)

次に比較する”方法”だが、財務諸表を定量的に比較する方法は、大きく以下に分類される。
①時系列の分析(例えば、ある会社の売上高の推移)
②全体と一部の比較(例えば、市場全体とある会社の比較)
③一部と一部の比較(例えば、競合他社とある会社の比較)

 

2.分析結果にはパターンがあることを理解する

分析する方法と対象をシンプルにしたときに得られる分析結果について、触れておきたい。
対象の数字を一定の方法で比較したとき、結果は①増加した/②減少したとなる。そして、増加したことが会社にとって、喜ばしいことであれば「良化」、そうでないなら「悪化」と言い換えることができる。前述した比較対象を見直すと、ほとんどの対象は増えるほど、良化したと言えるものだ(負債合計だけは異なる)。以上を踏まえた上で、分析結果のパターンをまとめると以下のようになる。


分析対象と分析方法をシンプルにすると、当然、分析結果もシンプルにすることができるのだ。

 

3.示唆を入れて初めて優秀な分析

改めて考えてみてほしい。財務分析をやったことがない人でも、分析結果はパターンで仕分けられる。財務諸表を見ながら、「A社は、○○な会社ですね」なんてことは容易に言えるはずだ。ただし、そこで止めてはもったいない。分析結果から、その人なりの示唆ができて、初めて優秀な分析と言える。パターン化された分析結果を並べても、「そんなの見れば分かる」や、「それで何が良いたいの?」と言われるのがオチだ。それについて、具体的に見ていこう。

分析結果から考えられる示唆

例えば、売上高の推移が以下の図のようになっていたとする。

A社の売上高の分析した場合、単純な分析結果は「売上高を時系列で比較したとき、10%ずつ良化している」といえる。しかし、そこにB社の売上高分析、市場全体の分析結果を踏まえると、「市場全体は緩やかに縮小し、シェア50%程度を占めるB社も売上減少が続く、そのような中で、市場シェアが小さいA社は10%以上の売上伸長を達成している」といった、踏み込んだ分析結果になるだろう。さらに想像を膨らませれば、A社は、×5年も売上が伸長するのでは?や、他社が持っていない販売ルートがあるのでは?とか、特殊な営業部隊がいるのでは?といった独自の意見を言うことができる。つまり、財務分析で言う「示唆」とは以下のことを指す。

 

財務分析の前提まとめ

今回の記事で、分析とその結果について、そして、分析結果から考えられる示唆についてご理解頂けたのではないだろうか。まとめると以下のようになる。
①分析=「比較すること」
②分析の”対象”と”方法”は事前に整理すること
③分析結果はパターン化できる
④分析結果を積み上げて「示唆」できてこそ1流
財務諸表という単語だけで、アレルギーを起こす気持ちはよく分かるが、1つ1つの工程は決して難しいことではない。また、「分析」という言葉も曖昧に使われることが多いが、財務諸表に限らず、記事のやり方に沿って試してみてほしい。
また、世の中には「経営指標」といい、財務諸表の数値を用いて、経営状態を分析するツールが存在する(すでに示唆が含まれているツール)。今回は考え方とプロセスまでを理解してほしかったため割愛したが、また別の機会に紹介しよう。

【5分】セット売りやリピーター促進!ディドロ効果とは?活用方法例は? | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ
【5分】セット売りやリピーター促進!ディドロ効果とは?活用方法例は? | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ 1024 683 Biz Tips Collection

「化粧品を1つ買ったら、一式同じブランドで揃えたくなる」
「身の回りのものをついつい同じ色のものばかり買ってしまう」
「テーブルを買ったら、同じメーカーのイスをまとめて買いたくなる」
このように思うことはないだろうか。
これは、ディドロ効果と呼ばれる心理が影響している。ディドロ効果とはどんなものなのか、企業はどのように活用できるか、解説する。

 

ディドロ効果は、同様のものを揃えたくなる心理

ディドロ効果(Diderot effect)という名は、ディドロという人物のエピソードがもとになっている。
ある日、ディドロはエレガントで高級なガウンをプレゼントされた。それがきっかけで、ディドロは身の回りのものを全て同様にエレガントで高級なもので揃えだした。

このように、新しいタイプや雰囲気のものが身の回りに導入されると、そのトーンに合わせた同様のものを揃えたくなる心理を、ディドロ効果と呼ぶ。
主に、高級品を1つ買ったら、全て高級品で揃えたくなる心理として語られることも多い。しかし、高級品の話に限らず、例えば節約志向に走り、身の回りのものを全て安物で揃えたくなるのを、同じくディドロ効果だ。

分かりやすい例は、着る物などを全て同じブランドで揃えたくなったり、部屋のインテリアを同じ雰囲気で揃えたくなり、ついつい必要なくても購入してしまう場合などだ。

 

ディドロ効果の発生理由は、一貫性を求める人の心理

ディドロ効果の背景には、人の物や行動が「一貫していたい」という心理がある。

人は違和感に居心地悪さを感じ、統一されていると安心する。
なので、シリーズ物で一部穴があると残りが欲しくなってしまったり、イスだけ部屋の雰囲気から浮いていると買い換えたくなったりするのだ。

また、「一貫していたい」心理の理由のもう1つに、購入や所有が自己表現でもあることがある。
自分はこういう人間なのだと外に向かって表現するためには、ある程度の一貫性がないとどんな人間か伝わらないのだ。
衣服が最もわかりやすい例だが、それ以外の持ち物にも、意識的にか無意識にか、本人の自己が表現されているものである。

ディドロ効果の活用方法

ディドロ効果はマーケティングや販促で活用可能だ。
同様のもので揃えたくなる心理を使うと、セット売りやリピーター化を促進し、顧客当たりの単価上昇を狙える。
いずれにせよポイントは、「同じジャンルの商品のまとまり」を消費者の頭の中に意識させることが前提だ。「同じ金額帯で物を揃えたい」、「同じ色で物を揃えたい」、というディドロ効果を消費者に発揮されても、全てを自社商品で取り込むことはできない。そのため、自社の商品で揃えた「まとまり」を消費者に意識させることが重要なのだ。

主に以下のような手法が見られる。

統一された世界観でブランディングする

自社ブランドだろうが、様々なところから仕入れるセレクトショップだろうが、有象無象のものを提供しているわけではない。これには様々な効果があるが、ディドロ効果もそのうちの1つだ。
ブランドは商品を売るのではなく、「世界観」や「ライフスタイル」を売ることによって、消費者をリピーター/ファン化していくのだ。

ブランディングされた世界観を維持して、多角化する

有名ブランドが商品ラインを多角化すると売りやすいのは、ブランドの信頼があるからだけでなく、このディドロ効果もある。
衣服から始まったブランドが、鞄や香水に商品を広げていくが典型だ。
これまで衣服をそのブランドで揃えてた人を、それまではそれで満足していたはずなのに、鞄も合わせなきゃ違和感がするような気持ちにさせることができる。

シリーズやセットで商品ラインナップを組む

同じトーンの商品でシリーズのラインナップを作ったり、セットで展示するのは、よくある手だ。
リアル店舗で、マネキンに揃えられた着こなしや、同じ雰囲気のインテリアを一緒に展示する、テーブルとイスを一緒に展示する、などはよく見られる手だ。このように、ちょっとした展示の仕方で、1個だけ買っても「足りない感」を醸成できる。

最初の一品目の獲得のハードルを下げる

ディドロ効果の起源となった、ディドロのエピソードでも、きっかけはプレゼントだった。特に高級品であれば、最初の獲得ハードルを下げる施策は有効だろう。
例えばソーシャルゲームでも、無料プレイしていたのに、ちょっとした時にレアカードが手に入り、手持ちをレアで揃えたくなって課金してしまう、ということがある。よくソーシャルゲームは、レアカードを一枚持ってれば遊べるものは少なく、手に入れたカードを3つ程選んでデッキやチームを組むことが多い。これは、レアカードが例えば2枚あったら残り1枚もレアにしたいという欲求をかきたてているのかもしれない。

 

まとめ

・ディドロ効果は、同様のものを揃えたくなる心理
・ディドロ効果の発生理由は、一貫性を求める人の心理
・以下のような手法で、ディドロ効果により顧客単価向上が狙える
-統一された世界観でブランディングする
-ブランディングされた世界観を維持して、多角化する
-シリーズやセットで商品ラインナップを組む
-最初の一品目の獲得のハードルを下げる

また、逆に消費者として無駄な買い物をしないためにも、本当にその商品が必要なのか、ただ揃えたくて欲しくなってしまっているのか、自問するのがよいだろう。

「行動経済学的マーケティング手法シリーズ」では以下も紹介している。
ウィンザー効果とは?実践例は?企業はこのように活用している!
選択肢で行動を操るテクニック4選

【5分で丸わかり!】スーパーの新トレンド、グローサラントとは?背景やメリットは?
【5分で丸わかり!】スーパーの新トレンド、グローサラントとは?背景やメリットは? 1024 682 Biz Tips Collection

食品流通業界でのトレンドであるグローサラント。アメリカのスーパーなどで注目を浴びている形態で、日本でも導入するところが増えてきたものだ。今回はこのグローサラントが何なのか、普及の背景は何か、などを解説する。

 

グローサラントとは?イートインとの違いは?

グローサラントとは、grocery(食品スーパー)とrestaurant(レストランと)を掛け合わせた単語だ。
簡単にいうと、食品スーパーと飲食スペースを融合した業態だ。
スーパーの敷地内で、売っている食材を使ったレストラン並みの料理を食べれるスペースを提供している。
顧客は、売っている商材を購入して、グローサラントのメニューを家で再現することも可能だ。
外食と内食の間である、中食事とも呼ばれるものの一種だ。
欧米で注目を浴び、日本でも提供され始めている。

グローサラントは、イートインやフードコートと似ている。
イートインは、スーパーやコンビニなどで、その場で買ったものを食べられるスペースだ。
また、フードコートは、複数のテナントが集まって営業する形だ。
対してグローサラントは、そのスーパーで販売している食品を使ってその場で調理してくれたものを食べられる。
イートインを進化させたようなものと考えてよい。
ただし厳密には、オペレーションコストの問題などから、実際は調理でなくそのまま買える惣菜の盛り付けだけで、実態として大きなイートインになっているものもある。

 

グローサラントの背景・スーパーの狙い

グローサラントがトレンドとなっているのには、いくつか背景がある。

イートインの普及

そもそも多くのスーパーや特に日本のコンビニなどでは、イートインが増えてきている。いわゆる中食の需要が増えているという形だ。それを次の段階に進める形で、より付加価値の高いイートインを提供しようという流れでグローサラントが提供されてる。

外食需要の取り込み

イートインやグローサラントを導入するスーパーは、外食などのシェアを奪って新たな売上を上げたいという狙いがある。外食需要の取り込みという意味で、イートインからより質の高い料理を提供するグローサラントへの移行は、自然な1つの方向性だろう。また、ついで買いによるプラス効果もある。
ただし、少なくとも現段階の日本の実態としては、外食市場は減っていなく、内食の場面がこの中食に移行しているのがほとんどという話もある。

 

スーパーの差別化戦略

スーパーにとって、グローサラントは差別化の要素の1つだ。これには2つの意味がある。

1つ目は、競合の小売店との差別化だ。
前述したようにそもそもイートインを提供するスーパーなどが増えている中、他社との差別化としてより高付加価値のグローサラントを提供する動きもある。また、コンビニなどの小型店舗ではイートイン以上のものを提供するのが難しいため、差別として大型のスーパーに導入されている。

2つは、ECとの差別化だ。
近年、あらゆる小売がオンライン販売にシェアを取られている。食材を扱うスーパーも、最近は例外ではない。そんな中、リアルだからこそ提供できる価値として、このような空間を提供している。

 

今後の動き

中食の需要増や、イートインコーナーを増やしている対コンビニという観点から、日本のスーパーでもどんどんグローサラントは増えていくのではないだろうか。

一方で、日本では海外と比べて立地が狭い・人手不足などの制限もあり、提供は一部のエリアに限られるかもしれない。実際、立地や人手の問題から、オペレーションコストを減らすため、本来の「販売している食材を材料に調理したレストラン級のメニューを提供する」ものでなく、そのまま買える惣菜を提供する実態としてイートインと変わらないものをグローサラントと呼んで提供している場合もあるようだ。

小売の動向を要チェックだ。

 

まとめ

・スーパーなどにおけるグローサラントがトレンド
・グローサラントは、グローサリーとレストランを合わせた造語で、そのスーパーで販売している食品を使ってその場で調理してくれたものを食べられる場
・背景は、イートインの普及、外食需要の取り組みの狙い、競合との差別化

【5分でわかる】レモン市場・ピーチ市場とは?解説と具体例
【5分でわかる】レモン市場・ピーチ市場とは?解説と具体例 1024 634 Biz Tips Collection

レモン市場は、情報の非対称性が市場に与える影響に関するミクロ経済学の理論だ。例えば自分の属す業界や買い手となっている市場において、情報の非対称性がどんな悪影響を与えるか把握することで、対策を立てることができるだろう。※ちなみに、情報の非対称性とは知っている者が得をする状態のことで公平な状況でないことを指す。

レモン市場とは、買うまで商品価値がわかりにくい市場

レモン市場は、レモンの原理とも呼ばれる。
情報の非対称性が大きく、すぐに商品の価値がわかりにくい市場のことだ。

レモンは、厚い皮を持つため、外見から鮮度を判断できない。
レモンのように、商品の品質がわかりにくい市場では、商品の品質についての情報は売り手のみが持っており、買い手には共有されていない。ここに情報の非対称性(不公平な状況)が存在する。

例えば、中古車市場がよい例だ。中古車は、購入してしばらく乗ってみるまで、その車の品質がわからない。乗り始めてすぐ不調が出たり壊れても、もはや返品できないのだ。
一時期のSEO業者もレモン市場と言われることがある。頼むまで効果はわからず、(しかも結果が出るまで時間がかかる)、業者が乱立し、どこがいいのか悪いのか買い手には区別がつきづらい。

 

レモン市場は、崩壊する

レモン市場では、どんなことが起こるだろうか。
①まず、不良品など質の低い商品を売る事業者が増える。質のいい商品をしっかり売るよりも、粗悪品をさばく方が得するからだ。どうせ買い手にはわからない。
②消費者が不安になり、高いお金を出さなくなる。(消費者の期待価格が、良品と粗悪品の間の金額になる。)
③真面目に質のいいものを出している事業者がますます儲からなくなる。
④安い金しか出さない消費者と、粗悪品しか出さない事業者だらけになる。
⑤消費者は商品を買わなくなり、市場はなくなる。

このように、レモン市場では、市場の商品の質と価格が下落し、売り手も買い手も得しない状態になる。市場は縮小し、崩壊することすらある。

レモン市場の理論では、良品をピーチと呼び、粗悪品をレモンが呼ばれることが多い。レモンは英語で「良くない」「うまくいかない」といった意味があるからだ。情報の非対称性が大きい市場では、人はピーチとレモンの見分けを付けれないため、市場はレモンだらけになっていく。

 

レモン市場の食い止め方

市場全体として、商品の質も価格も下落していくのは、売り手にとっても買い手にとってもいいことではない。

レモン市場の問題の回避方法は、情報の非対称性をできるだけなくすことだ。

1つのやり方は、可能であれば、「ピーチを市場に投入する」というやり方がある。
ピーチ(桃)はレモンと違い、少し古くなると、表面が黒ずみ、鮮度の低下がすぐに見て分かる。
つまり、透明性が高く質の高いものを市場に投入すれば、買い手は皆そっちに群がるので、他社も追従せざるを得なくなるということだ。
ただし、そもそも買うまで質がわかりにくい商材がレモン市場なので、透明性を高める(買い手に質の高さを買う前に納得してもらう)ことが現実的でない場合も多い。

他にも、以下のようなやり方がある。

・規制
法律や、業界団体が、品質担保や透明化のための規制を実施する場合がある。成分などの表示義務や、検査義務化、などだ。むりやり市場の透明性をあげる方法だ。
例えば、サブプライムローンが出回っていた金融市場はレモン市場と言えるだろう。金融商品の理解には専門知識が必要である上、商品は複雑化し原資がどこから来ているのか追えない場合も多かった。金融商品の原資の追跡可能性(トレーサビリティ)を規制で確保しようとする動きは、この一例だろう。

・第三者評価
アマゾンの商品レビューや、食べログのレビューなど、第三者による評価は、市場の透明性を高める効果がある。また、業界規制でもあるが、第三者の評価機関を設置する形もあるだろう。

・ブランド化
市場自体の改善というよりは一事業者視点では、ブランド化がある。例えば先ほどの買うまでわからない中古車市場でも、「会社Aのものは質がよい」というブランドが築ければ、業界自体がレモン市場化し価格下落していったとしても、会社Aは高品質高価格を維持できるだろう。あくまでイメージなので、透明性が高いと呼べるかは微妙だが、先ほどのピーチを市場に投入するという考えに似ている。

 

ピーチ市場とは、情報の非対称性が少ない市場

先ほど、良品をピーチ、粗悪品をレモンと例えたが、
レモン市場と逆の考えとして、情報の非対称性の少ない市場をピーチ市場と呼ぶ場合もある。

こんな市場では、レモン市場と逆のことが起こる。
商品の良し悪しが買い手にもすぐにわかってしまうので、粗悪品は駆逐される。
また、良いものは良いとアピールしやすく、買い手にも粗悪品をつかまれるリスクが少ないので、レモン市場のように価格が下落していくことはない。
売り手も質を上げる努力をするだろうし、他社との違いの良さをアピールしやすいため価格も上げやすい。

 

まとめ

・レモン市場は、情報の非対称性がある市場
・情報の非対称性がある市場では、品質劣化と価格下落がおこる
・対策は、情報の透明性をあげること。方法は「ピーチ」を投入する、規制、第三者レビュー、ブランド化、などがある。
・情報の非対称性が少ない市場(ピーチ市場)では、逆に質が粗悪な商品が駆逐されていく。

 

ウィンザー効果とは?実践例は?企業はこのように活用している! | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ
ウィンザー効果とは?実践例は?企業はこのように活用している! | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ 1024 722 Biz Tips Collection

人は情報の中身が同じでも、ちょっとした違いで受ける影響が大きく変わる。情報の入り方もその1つだ。ウィンザー効果も、よく利用される人間の傾向だ。この傾向を把握することで、うまく利用し、また影響を受けすぎないことが可能だ。今回は、ウィンザー効果とその実践方法の例を紹介する。

 

ウィンザー効果とは?

ウィンザー効果は、直接本人に言われるよりも、第三者から伝えられた方が、信頼性が増すという心理効果だ。

イメージしてもらいたい。
上司から「君には期待している!君は絶対に売上を達成できる!がんばってくれ!」と言われるのと、
同僚から「上司Aが、君にむちゃ期待してると言ってたよ。あいつなら絶対今回売上を達成できるとかって」と間接的に言われる。

どちらが、頑張る気になるだろうか。
恐らく、同僚から言われた場合だろう。本人に言われても、本当かよ、皆に言ってるだろ、などと考えてしまうのではないあろうか。
よく考えると、入ってきている情報は同じであるにも関わらず、やはり第三者から聞いた方が信頼できるのが、人の心理だ。

上司の意見を素直に受け取れない理由は、利害関係があるからだ。第三者である同僚には、特に利害関係がないので、事実のような気分で受け取れるのだ。

 

ウィンザー効果の活用例:お客様の声を載せる

ウィンザー効果に基づいて最も多用されているのはこれだろう。
会社の営業や広告が「この商品はすごい」と言うよりも、ユーザーレビュー、口コミなどが「これすごかった」と言っている方が信頼できる。

ハンバーガー屋が「うちおいしいですよ」と言っていても気にとめないが、友達から「あのハンバーガー屋おいしかった」と聞けば、言ってみたくなるだろう。

多くの営業資料で、「お客様の声」を載せているのはこのためだ。
もちろん、直接口コミを聞く方がよりよいが、載せないよりはよい。

この場合、厳密には第三者の声を本人が伝える形になっているので、いかに本当に第三者の声であるか説得力を持たせることが重要だ。
多くの営業資料やウェブサイトで、声に顔写真を添えているのは、このためだ。
また、アマゾンのレビューやツイートなどを引用してくるのも手だ。

 

ウィンザー効果の活用例:SNSなどで発言させる

先ほどの例のように、本人が第三者の意見を伝えるよりも、第三者の意見を第三者から聞く方がもちろんよい。

よく、「このハッシュタグをつけて感想をツイートしたら、抽選でプレゼント!」みたいなキャンペーンを見ないだろうか。商品について発信することに、プレゼントなどの報酬を与えることで促すのだ。バズればなおよしだ。

アフィリエイトプログラムもこのやり方の1つだろう。報酬が金銭というより直接的なものになっただけだ。しかし、これはこれでアフィリエイトの仕組みを理解している人からすると、相手に利害があることがわかってしまうので、信頼性を生まない場合もあるが、なんだかんだ多数の人はひっかかるのだろう。

 

ウィンザー効果の活用例:アンバサダー戦略

上記にもとても似ているが、アンバサダーを作るという手法もよく見る。
アンバサダーとは、直訳すると大使。要は、自発的に周りに商品の大使となって広めてくれるコアファンのことだ。

多くの商品・サービスなどが、まずコアファン作りに力を入れることがある。コアファンには、何かもらえたりイベントに参加できるなど、様々な特典を提供していたりする。これは、いつも買ってくれてる感謝だけで提供しているわけではない。より商品のことを好きになってもらい、最終的にはアンバサダーとなって周囲に広めてくれることを狙っているのだ。

 

ウィンザー効果の活用例:ステルスマーケティング

一時期問題になったが、いわゆる「ステマ」である。
ステルスマーケティングはまさにウィンザー効果を狙ったものだ。

会社や会社の息がかかった人が、それを隠してネットなどで商品を褒める。ユーザーは第三者の意見と勘違いして信頼してしまうのだ。褒められた手法ではないかもしれないが、効果があるのは間違いない。

特に最近多いステルスマーケティングの手法である、芸能人・Youtuber・インスタグラマーなどのインフルエンサーを活用したマーケティングは、権威のある第三者の意見なので、更に効果がある。

今では、自主規制で、スポンサーがいる場合はそう記載するようになっているが、それでもそれなりに効果はあるようだ。

 

ウィンザー効果の活用例:顧客から顧客を紹介してもらう

もちろんウィンザー効果は、B2Cのマス相手だけで効果を発揮するものではない。
多くのB2Bなどもっと狭い範囲でももちろん活用できる。

よくあるのは、顧客に顧客の紹介をお願いすることだ。サービスに満足してくれている顧客であれば、OKしてくれる場合はある。これは単純に営業リストを拡大するだけでなく、第三者を挟んで紹介してもらうことで、信頼性を上げているのだ。

より直接的に顧客紹介に特典を付けている場合も多々ある。B2Cだが、ゲームアプリなどで友達に紹介させるとポイントが入る仕組みもそうだ。

 

ウィンザー効果をうまく活用しよう

このように、ウィンザー効果は、いたるところで活用されている。
この効果を把握することで、うまく活用することができ、またこの効果を狙った企業の施策に影響を受けすぎないようにもなれる。
まとめると以下の通りだ。
・ウィンザー効果は、直接本人に言われるよりも、第三者から伝えられた方が、信頼性が増すという心理効果
・効果の理由の1つは、情報源の利害関係の有無
・いたるところで活用されている:お客様の声、SNS発信促進、アンバサダー、ステルスマーケティング、顧客紹介、など

 

「行動経済学的マーケティング手法シリーズ」では以下も紹介している。
選択肢で行動を操るテクニック4選

【図解】「財務会計」と「管理会計」の相違点|例説!ビジネス用語の違いシリーズ
【図解】「財務会計」と「管理会計」の相違点|例説!ビジネス用語の違いシリーズ 1024 683 Biz Tips Collection

会計は大きく分けると財務会計と管理会計の二つに分けられ、それぞれの作成方法と利用用途はまったく異なったものとなっている。ビジネスパーソンにとって会計は重要な基礎知識であり、その違いを理解していないと上司との会話において検討違いな発言をしてしまう可能性もある。そのような恥ずかしい思いを防ぐために、今回は、「財務会計」と「管理会計」の違いについて解説していくものとする。

なお、双方を包括した会計については「財務会計と税務って何?どんな違いがあるの?」にて解説しているので参考にして欲しい。

※ビジネス用語は会社や業界によって様々な言い方や意味の違いが存在する。本「例説!ビジネス用語の違い」シリーズでは身近に存在する似ているようで実は微妙に意味が違うビジネス用語を比較し、これらの相違点と違いが生まれてきた背景を例を持って解説していく。ビジネス用語の絶妙な違いを把握して適切なビジネスコミニケーションを見につけてほしい。

 

「財務会計」は他社と比較してもらう用の成績表(外部関係者向け)

財務会計は、会社のステークホルダーである投資家・債権者(銀行)等に向けて作成するものである。

そのため、他社と比較することができるように作成される。その比較可能性を担保するのが、いわゆる「会計基準」というものである。企業は経理部によって作成された帳簿(簿記)をベースにして財務諸表を作成するが、その際に作成基準とされるものが会計基準だ。

この会計基準が担保している「比較可能性」はあまりなじみのない言葉だと思うので、会計基準がなかったらどのような事態になるか、例を用いて考えてみることとする。

例えば、同じ不動産業の上場会社が2社あったとする。両方とも同じぐらいの売上高で、B社の方が利益率が高い。双方ともカジノ施設の建設に名乗りを上げているとの話を聞いているので、不動産業が上手い方に投資したいと考えている。

皆さんだったらどちらの会社に投資を決定するだろうか?
当然、同じ条件でB社の利益率の方が高いので不動産業の経営が上手と考えて、B社を選ぶだろう。

しかし、実際は下記の図のような状況だったらどうだろう。

有価証券、つまり金融商品の運用による売上が90%を占めており、本業の不動産業による売上はA社の10%にも満たなかった。
おそらく、投資家のあなたはカジノ施設の建設業者になることが株価上昇の鍵になると考え、A社へ投資を変更するはずだ。

このように、投資家が投資の意思決定をする際に参考にするものが財務諸表であり、その判断が誤った情報で行われないように相当程度同じ実態を同じ数値で表現できるように会計基準は規制をしているのだ。実際の会計基準でも本例のように本業出ない金融投資における収益の売上への計上は禁止されている。

 

「管理会計」は自社の経営を分析するための成績表(経営者(内部)向け)

一方、管理会計は経営者等の社内関係者向けに作成される資料である。
そのため、財務会計とは異なり画一的な基準はない。基本的にどのような切り口で成績表を作成しようと自由なのだ。

経営者は現場のひとつひとつの数値をもとに分析を重ね、経営状態をより良い状態にしていくことが仕事だ。さまざまな切り口からデータを取り直し、改善すべきポイントを探していく。当然、経営者個々人・会社の状況によって求められる数値の算出方法はちがうので提出すべき資料はそれぞれ異なるのだ。
様々な切り口で数値を作成するといってもイメージが着きにくいと思うので、先ほどと同様に例を用いて解説することとする。

例えば、小売業を営むC社の100店舗の売上を分析する場合、どのような形で資料を作成するのがベストか?
・駅から100m以内の店舗とそうでない店舗に分けて売上の差を見てみる
・店舗の店員構成比率(アルバイトと正社員)によって売上の差を見てみる
・店舗を面積ごとの売上高(売上高/面積)に差がないかみてみる
などなど

いずれも正解だ。経営改善のために必要な施策を見つけ出すための分析用の資料になっていたり、行った施策の効果が出ているかを前年度と比較できるようモニタリング用の資料になっていたり。
様々な状況・用途に合わせて管理会計手法が考案されており、その多くが企業が考案したものとなっている。
以下、管理用途の例を挙げる。
・製品別や各部門別の原価計算
・損益分岐点分析
・キャッシュフロー分析
・安全性や収益性分析
・予算管理
・事業評価指標
・投資案件の適否判断

 

財務会計と管理会計の共通点は簿記をベースにしていること

これまで報告対象と報告目的を起点とした財務会計と管理会計の違いについて解説してきた。最後に共通点を確認することとする。

財務会計と管理会計の共通点は簿記により記録された帳簿を元にしていることが共通点だ。いずれも帳簿に記録されている様々な項目をその目的に応じて取り纏め、必要な報告形式に整形しなおしている。実は税務についても同様の共通点があり、全ての基礎は簿記にあるともいえる。

 

まとめ

さて、財務会計と管理会計の違いをまとめると以下のようになる。

これらをもって、会社の会計についての一層の理解を深めてほしい。

「社長」と「代表取締役」、その他経営陣の呼び方の違いとは|例説!ビジネス用語の違いシリーズ
「社長」と「代表取締役」、その他経営陣の呼び方の違いとは|例説!ビジネス用語の違いシリーズ 1024 512 Biz Tips Collection

ビジネス用語は会社や業界によって様々な言い方や意味の違いが存在する。本「例説!ビジネス用語の違い」シリーズでは身近に存在する似ているようで実は微妙に意味が違うビジネス用語を比較し、これらの相違点と違いが生まれてきた背景を例を持って解説していく。ビジネス用語の絶妙な違いを把握して適切なビジネスコミニケーションを見につけてほしい。

今回は、「社長」と「代表取締役」、その他経営関係の役職に関するの違いについて解説していくものとする。

 

「社長」と「代表取締役」ってどっちが偉いの?

皆さんがお勤めされている会社の一番偉いひとは誰だろう。社長と答える人もいれば代表取締役社長と答える人もいるだろう。会社によってはさまざまな組み合わせも存在している。このようなワードを調べていると、CEOやCFO、CIOやCTOといった役職との組み合わせも出てきてもはや意味がわからなくなってくる。例えば、人気フリマアプリのメルカリだと、代表取締役会長兼CEOと取締役社長兼COOがいる(2018/6時点)。

偉さには様々な捉え方や政治的な部分も多いので一概には定義することはできない。結論から言うと、会社や人間関係によって違うのだ。

あくまでも呼び方であって基本的にはなんと名づけても良いのだ。例えば、バイト先でのイメージでこのような状況はなかっただろうか?店長はバイトだけど、最近入ってきた新人は社員らしい。。。(おそらくこのようなケースは店長が一番えらいのだけど、政治的な理由(将来の正社員へのキャリアアップ)も含めて新人に対して敬語をつかってる・・・)

会社の経営陣でも例に挙げたような状況があるのだ。先にあげたメルカリを例にとってみると代表取締役会長は海外事業に注力することになったので、日本国内の経営を他の人に任せる必要が出てきた。取締役というとちょっと一番偉い感(国内)がなくなってしまうので社長という言葉を追加しよう!といった感じだ。

次章ではこれ等の呼び方の違いが発生している原因について述べる。結局どう取り扱えばいいのか?については最後の章に記載しているのでそちらを参考にして欲しい。

 

「社長」と「代表取締役」などの経営陣の呼び名の類型とそのようになった原因

先ほど触れたように経営陣の役職様々な組み合わせがある。
最近のトレンドでは大きく分けると3つの役職類型があり、それらに付随した役職・呼び名が存在する。「法的役職」・「職掌的役職」・「機能的役職」だ。

 

「法的役職」は権利の絶対基準!

法的役職は会社法上定められた会社設立時に役所に届け出なければならない役職だ。会社法上ではそれぞれの役職の目的や意味が記載されており、それ以外のものが役割を実行することが法令で認められていない。具体的な例を出すと会社の取引はすべて代表権を持った者でないといけないことになっている。

たとえ、ひとつのペンを買う取引だったとしても契約書を交わすのであれば最終的に代表者の印が押されることになる。多くの場合は上長の承認が合えればこの規模と取引は成立可能であるが、仮に取引先が部長印ではダメだ!などといいだした場合、会社の社内規定上認められている社内規定を提示するしかなかったり、それを相手が認めなかった場合は法的には代表印を押す必要性もでてくるのだ。

法的役職は以下のものが存在する。
代表取締役・取締役・社外取締役・代表執行役・執行役・監査役・社外監査役・監査委員・会計参与

これらの役職ですべてであり、会社の法的体制によって存在しないケースもある。

面白い例を2点ほど紹介する。
ひとつは実は一般的にメジャーな代表取締役は必ずしも必要なく、取締役が一番偉いケースもあるのだ(代表取締役と選任していない場合に限る)。
二つめに執行役員と呼ばれている役職は法的役職ではないので法的には経営者ではないということだ。

 

「職掌的役職」は島耕作に良く出てくる役職

職掌的役職を形容するのに最もわかりやすい例が島耕作の役職だ。職掌とは、会社が任意(勝手に、社内で)設定した役目のことでその役目に応じて設定されている。

一般的に浸透している呼名もおおく、コチラの呼び名を持っているお偉いさんも多い。

これらの例は会長、社長、副社長、常務、専務、執行役員、本部長、部長、室長、課長、主任、リーダーなどといったものがある。

一般的に専務以上の人が法的役職上の取締役であるケースが多いが、どれも会社が任意で自由に設定している呼び名なのであまり参考にならない。ちなみに一般的には執行役員以上を経営層・経営陣といったりする。ベンチャー企業では結構それっぽいという理由で命名されるケースもあるので気をつけなければならない。

 

「機能的役職」は最近の流行り

機能的役職はココではいわゆるCXO(Xは変数)とよばれる役職のことを指すこととする(厳密にはVice presidentのような直訳すると副社長という意味のものが日本では課長クラスであったりするケースも含むが)。対外的役職はインターネットの普及やグローバル化の影響を受けて機能的に見せるために最近浸透してきた役職である。定義としては法的役職とその他のその他の分類に含まれており、職掌的役職と同様の意味を持っている。

例えば、CEOであればchief executive officer、CFOであればchief executive officer、COOであればchief operating officerである。CEOとCOOの違いはいわば会長と社長のような違いで代表権を持った上での違いと海外では一般的に解釈される。

歴史ある企業でも例に挙げた3役職程度は定義されているケースは多いが、これ以外のXも存在する。
例えば、CIO(Information )、CTO(Technology)、CSO(SalesまたはStrategy)、CMO(Markting)。世の中にはCAAO、CAO、CAO、CBO、CBO、CCO、CGO、CHRO、CIE、CISO、CITO、CKO、CLO、CMTO、CPO、CROなるものまであるらしい。もはやわけがわからない。

Xという変数で好きな領域の英単語を入れていいよ、というような状況になっているので職掌的な役職よりも無法地帯になっていると考えたほうがよい。

これ役職が広まった経緯としては日本で一般的であった職掌的役職が会社の機能(例えば、マーケティングだったり、財務、営業)と一致しておらず、執行役員の以上の経営者層も専門性を持って機能的な各領域を担当したほうが良いという人事戦略的な観点が理由だ。

 

結局どうしたらいいの?

これまで呼んでいただけた読者にはトリビアな話になってしまわないように、当初の目的に立ち返ることとする。おそらく皆様は会食や会議室の席順、メールのあて先の役職の順番、議事録の出席者の順番に困って本ページを開いていただけたことだろう。そのような時のBizTpsを伝授する。方法は2パターンある。

①がんばって順番に並べるパターン
もはや根性論のように聞こえるかも知れないが、ココまで内容をしっかり読んでいただけた方には理解いただけると考える。最も参考にすることができるのが法的役職順だ。そして、職掌的役職>機能的役職の順番といえよう。組み合わさっている場合は組み合わせが多い方を偉いと捉えたほうが無難だ。

難しいのは経営陣未満の場合。ここは本当に会社によって違うので、先輩に聞くという手が一番早い。しかし、気をつけて欲しい、先輩によっては何でそんなこともわからないのと意味のわからないことを言ってくることもある。聞くときは必ず、順番に並べた紙を用意し、本部長と部長どっちが偉いんですかね?と聞こう。大体わかっているけれども一部だけわからないから質問したという状況を演出するのだ。

②無礼講パターン
次に無礼講パターンだ。これは必殺技的なもので時間のない際に利用する。わかりやすい例で言うとメールや議事録の記載に最後に(順不同・敬称略)と付け加えるのだ。

会議参加者:山田、斉藤、大木、西村(順不同・敬称略)

飲み会や会議の場合も、入場時に「アジェンダが多くて時間がない」などの理由をつけてそれぞれ適当に座らせ、「会議内容的に上下関係のない広く忌憚のない意見を聞けるようにいつもとは違う、席順を決めてない形としました、議論が活発にできるよう進めていくのでよろしくお願いします」などと添えれば、大丈夫なはずだ。この方法はとっさの時に聞いてくる方法なので、乱発しないように気をつけて欲しい。

これらの方法を駆使して、偉さという難しいビジネスシーンを乗り越えて欲しい。決して秩序のない現代にドロップキックしてしまわないように。。

 

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