ファイナンス

【図解】「財務会計」と「管理会計」の相違点|例説!ビジネス用語の違いシリーズ
【図解】「財務会計」と「管理会計」の相違点|例説!ビジネス用語の違いシリーズ 1024 683 Biz Tips Collection

会計は大きく分けると財務会計と管理会計の二つに分けられ、それぞれの作成方法と利用用途はまったく異なったものとなっている。ビジネスパーソンにとって会計は重要な基礎知識であり、その違いを理解していないと上司との会話において検討違いな発言をしてしまう可能性もある。そのような恥ずかしい思いを防ぐために、今回は、「財務会計」と「管理会計」の違いについて解説していくものとする。

なお、双方を包括した会計については「財務会計と税務って何?どんな違いがあるの?」にて解説しているので参考にして欲しい。

※ビジネス用語は会社や業界によって様々な言い方や意味の違いが存在する。本「例説!ビジネス用語の違い」シリーズでは身近に存在する似ているようで実は微妙に意味が違うビジネス用語を比較し、これらの相違点と違いが生まれてきた背景を例を持って解説していく。ビジネス用語の絶妙な違いを把握して適切なビジネスコミニケーションを見につけてほしい。

 

「財務会計」は他社と比較してもらう用の成績表(外部関係者向け)

財務会計は、会社のステークホルダーである投資家・債権者(銀行)等に向けて作成するものである。

そのため、他社と比較することができるように作成される。その比較可能性を担保するのが、いわゆる「会計基準」というものである。企業は経理部によって作成された帳簿(簿記)をベースにして財務諸表を作成するが、その際に作成基準とされるものが会計基準だ。

この会計基準が担保している「比較可能性」はあまりなじみのない言葉だと思うので、会計基準がなかったらどのような事態になるか、例を用いて考えてみることとする。

例えば、同じ不動産業の上場会社が2社あったとする。両方とも同じぐらいの売上高で、B社の方が利益率が高い。双方ともカジノ施設の建設に名乗りを上げているとの話を聞いているので、不動産業が上手い方に投資したいと考えている。

皆さんだったらどちらの会社に投資を決定するだろうか?
当然、同じ条件でB社の利益率の方が高いので不動産業の経営が上手と考えて、B社を選ぶだろう。

しかし、実際は下記の図のような状況だったらどうだろう。

有価証券、つまり金融商品の運用による売上が90%を占めており、本業の不動産業による売上はA社の10%にも満たなかった。
おそらく、投資家のあなたはカジノ施設の建設業者になることが株価上昇の鍵になると考え、A社へ投資を変更するはずだ。

このように、投資家が投資の意思決定をする際に参考にするものが財務諸表であり、その判断が誤った情報で行われないように相当程度同じ実態を同じ数値で表現できるように会計基準は規制をしているのだ。実際の会計基準でも本例のように本業出ない金融投資における収益の売上への計上は禁止されている。

 

「管理会計」は自社の経営を分析するための成績表(経営者(内部)向け)

一方、管理会計は経営者等の社内関係者向けに作成される資料である。
そのため、財務会計とは異なり画一的な基準はない。基本的にどのような切り口で成績表を作成しようと自由なのだ。

経営者は現場のひとつひとつの数値をもとに分析を重ね、経営状態をより良い状態にしていくことが仕事だ。さまざまな切り口からデータを取り直し、改善すべきポイントを探していく。当然、経営者個々人・会社の状況によって求められる数値の算出方法はちがうので提出すべき資料はそれぞれ異なるのだ。
様々な切り口で数値を作成するといってもイメージが着きにくいと思うので、先ほどと同様に例を用いて解説することとする。

例えば、小売業を営むC社の100店舗の売上を分析する場合、どのような形で資料を作成するのがベストか?
・駅から100m以内の店舗とそうでない店舗に分けて売上の差を見てみる
・店舗の店員構成比率(アルバイトと正社員)によって売上の差を見てみる
・店舗を面積ごとの売上高(売上高/面積)に差がないかみてみる
などなど

いずれも正解だ。経営改善のために必要な施策を見つけ出すための分析用の資料になっていたり、行った施策の効果が出ているかを前年度と比較できるようモニタリング用の資料になっていたり。
様々な状況・用途に合わせて管理会計手法が考案されており、その多くが企業が考案したものとなっている。
以下、管理用途の例を挙げる。
・製品別や各部門別の原価計算
・損益分岐点分析
・キャッシュフロー分析
・安全性や収益性分析
・予算管理
・事業評価指標
・投資案件の適否判断

 

財務会計と管理会計の共通点は簿記をベースにしていること

これまで報告対象と報告目的を起点とした財務会計と管理会計の違いについて解説してきた。最後に共通点を確認することとする。

財務会計と管理会計の共通点は簿記により記録された帳簿を元にしていることが共通点だ。いずれも帳簿に記録されている様々な項目をその目的に応じて取り纏め、必要な報告形式に整形しなおしている。実は税務についても同様の共通点があり、全ての基礎は簿記にあるともいえる。

 

まとめ

さて、財務会計と管理会計の違いをまとめると以下のようになる。

これらをもって、会社の会計についての一層の理解を深めてほしい。

財務諸表とは何か?財務諸表の役割と見方について
財務諸表とは何か?財務諸表の役割と見方について 1024 768 Biz Tips Collection

皆さんは、自分の会社のことをどこまで理解されているだろうか。社歴や商品知識、人事制度など、会社を理解するために必要なことは多いが、定量的な部分は「財務諸表」から捉えることが有意義だ。財務諸表は、読み方が分かっていないと、ただの数字の羅列に見えてしまう。自らの会社をより深く理解するために、財務諸表の読み方のコツをマスターしてほしい。

財務諸表とは何か?

財務諸表(Financial statements、通称F/S)とは、「企業の経営状態を定量的に把握できる資料」と理解してほしい。財務諸表は以下の4つから構成されている。

①.貸借対照表(Balance sheet、通称B/S):企業の一時点の財産の状況(財政状態という)を明らかにする表
②.損益計算書(Profit&Loss Statement、通称P/L):企業の一定期間の利益の状況(経営成績という)を明らかにする表
③.株主資本等変動計算書(Statements of Shareholders’ Equity、通称S/S):B/Sの純資産の部の一定期間の変動を明らかにする表
④.キャッシュ・フロー計算書(Cash flow statement、通称C/F):企業の一定期間の現金の変動を明らかにする表

ここで重要なのは専門的な言葉の定義ではない。理解してほしいのは、企業の経営状態を定量的に把握するときは、①持っている財産(資産という)と債務(負債という)、②稼いだ利益、③純資産(資産から負債を差し引いた差額)の変動、④稼いだお金。という4つ視点から見ていくということ。そして、この4つは互いに繋がっているということだ。

 

財務諸表のそれぞれの繋がり(B/S,P/L,S/S,C/F)

それでは、財務諸表がそれぞれどのように繋がっているかを具体的に見ていこう。ここでは、架空の商店の取引を例に見ていく。皆さんが1人で事業をおこしたと想像して読んでもらいたい。

 

財務諸表の作成

あなたは駄菓子屋の開店すべく、以下のことを行った。
①自分の預金口座から1,000円を会社用の口座に移した。
②600円を現金で支払って商品を仕入れた。
③500円分の商品を1,200円で販売した。ただし入金は1か月後とした。

これらを財務諸表に表すと以下のようになる。
簿記の知識が無いと、すべてを正確に理解するのは難しいかもしれないが、結果を見て大体のイメージが持てれば問題ない。念のため、財務諸表の各資料の説明を補足しておく。
・B/S・・・会社の財産となるのは、現金400円(会社資金1,000円ー現金仕入600円)と、将来現金になる売掛金1,200円、将来販売できる商品100円(仕入600円-販売500円)。債務についてはなし。純資産については、株主資本等変動計算書から転記(後述)
・P/L・・・会社の利益となるのは700円(商品売上1,200円ー商品売上原価500円)、利益の結果を株主資本等変動計算書へ転記
・S/S・・・純資産の変動は資本金の流入1,000円と当期純利益の発生700円。結果について、貸借対照表へ転記
・C/F・・・営業活動(販売活動)からは600円の赤字(600円の商品仕入 ※商品売上については未入金)、投資活動はなし。財務活動については資本金の流入1,000円。現金の残高について貸借対照表へ転記。

 

財務諸表の繋がり

上記の例により作成された財務諸表を見て、理解してほしいのは、財務諸表は互いに連携しているということだ。そして、すべての起点になっているのは貸借対照表だ。あなたが、事業をしようと思ったときを想像してほしい。まずに初めに行うことは、借入れだろうが、自己資金(自分のお金)だろうが、会社を運営するための資本の用意だろう。貸借対照表から事業が始まり、事業の成果が貸借対象表へ帰ってくるのだ。

 

財務諸表の読み方まとめ

今回の内容をまとめると以下の通りだ。
①財務諸表とは、企業の経営状態を定量的に把握できる資料
②財務諸表は4つの資料で構成されており、それぞれ以下を明らかにするために作成する
・貸借対照表(B/S)・・・持っている財産(資産という)と債務(負債という)の金額
・損益計算書(P/L)・・・企業が一定期間に稼いだ利益の金額
・株主資本等変動計算書(S/S)・・・純資産(資産から負債を差し引いた差額)の一定期間の変動額
・キャッシュ・フロー計算書(C/F)・・・企業が一定期間に稼いだお金
③財務諸表の起点は貸借対照表で、4つの資料は互いに連携している

上記を理解できていれば、財務諸表を分かると言っても差し支えないだろう。ただし、財務諸表の繋がりを理解しても、その会社にどのような特徴があるか理解するためには、もう一歩突っ込んだ見方が必要だ。財務諸表の分析方法のコツについては、別の機会で紹介したい。

株式とはなに?資金調達方法のフレームワーク
株式とはなに?資金調達方法のフレームワーク 1024 683 Biz Tips Collection

皆さんが勤めているであろう株式会社。株式会社の発展に伴って、経済成長が進んだと言っても過言ではない。この株式会社の発展に寄与したのが株式制度だ。さて、みなさんは株式についてどこまで理解しているだろうか。株式を理解するためには、貸借対照表(B/S)の科目である資本と合わせて理解することが重要だ。また、資本にまつわる環境変化として仮想通貨なども関係してくる。これらの理解により、資本、ひいては企業を取り巻く資金調達の環境について理解を深めてほしい。

株式とはなにか?

株式とは「投資のリスクを分散する仕組み」である。いきなり、このような定義を持ち出しても難しいと思うので、株式会社の成り立ちから見ていこう。

株式会社の成り立ち

株式会社の生まれは、17世紀のオランダで設立された東インド会社と言われている。世界史を学んだ方なら記憶の片隅にあるだろう。東インド会社の事業は、インドや東南アジアから、船で香辛料などの特産品をヨーロッパに持ち帰ることだった。しかし、航海は危険が多い。(当時は現在ほど航海技術が発達していなかったし、海賊による襲撃や、疫病の伝染など、無事に特産物を持って帰れる可能性が低かった。)さらに、船による航海は長期間に及びお金もかかる。東インド会社は航海のたび、船を出航するための出資者を探した(船の出港には、船の維持費や乗組員を雇う費用等が必要になる。)。出資者は、航海の準備に必要な全ての費用を、事前に負担する代わりに、持ち帰った特産物を乗組員への給料等を差し引いた上で、全て受け取ることができる。航海に成功した場合は出資した金額以上のリターンを得られる訳だ。さて、ここでみなさんが出資者になると想像してみてほしい。無事に帰ってこれるか分からない航海の費用の全額を負担できるだろうか。自分の資産にかなりの余裕がなければ、なかなか決断できないだろう。出資はそれぐらいのバクチだった訳だ。そこで、東インド会社は1隻当たりの出資者を複数募った。これにより、東インド会社は出資者を集めやすくなり、多数の船を航海に出すことができるようになった。さらに、今までは資産が足りず出資できなかった者も、出資者の一員に加わることができるようになる。これが、株式会社の成り立ちと特性だ。投資リスクの分散、大規模化、数の増加について、理解頂けただろうか。

株式市場の発達の経緯

先ほどの例の通り、出資者は事前の出資(リスク)をする代わりに、会社の成果(リターン)を得る。そして、出資者はその証として、権利証を受け取る。これが株式の原型だ。さて、ここでまた、みなさんが出資者(=株主)だと想像してほしい。あなたは権利証を受け取ったが、その権利がお金に代わるのは何ヶ月あるいは何年も先だ。一方で、急に大金が必要になったとしよう。あなたは、その権利を誰かに譲ろうと考えるのではないか。この権利の売買が、株式売買である。株式は紙媒体のため受け渡しも容易だ。そして、株式の売買が増加するに従って、売買の仲介人が生まれた。株式を売りたい人と買いたい人を繋げる人だ。さらにこれらが発展したものが「証券取引所」だ。このように、特産品を受け取る権利が紙に置き換わったことで、格段に流通性が増し、株式の「市場」が形成された。補足すると、2009年より上場企業は株式が電子化されており、流通性が一層増している。驚くべきことは、つい最近まで株式を購入すると紙の株券を受領することとなっていたことだ。

以上のように株式会社の所有権は株式を有することで、どれくらい保有しているかは株式の保有割合により決定する。つまり、会社の持ち主は、社長でも、従業員でもなく、株主なのだ(法的には)。

資本とはなにか?

さて、話は変わるが、冒頭に説明した資本とはなにかを確認しよう。資本とは「商売や事業に必要な資金」をいう。いわゆる、元手というやつだ。

返済が必要な資本

みなさんの中で会計に明るい方は、資本=資本金、つまり、返済不要の資金と理解しているかもしれないが、ここでいう資本はそうではない。先ほどの例を会社側から見ると、船の航海が失敗した場合でも、株式会社は出資を受けた金額を返済する必要はない。しかし、仮に船を造るにあたって、銀行からお金を借りていたらどうだろうか。航海の成否に関わらず、借りたお金は返さなければならない。借りたお金であっても、商売や事業に必要な資金であるので「資本」となる。そして、株式のように返済不要の資本を「自己資本」、借入れのように返済が必要な資本を「他人資本」と呼ぶ。そして、出資者側からみると、自己資本の場合は、事業の成果(これを配当という)から、他人資本の場合は、元本と利子によってリターンを得るのだ。

自己資本と他人資本の関係

今までの話をまとめると図のようになる。

ご理解頂けただろうが、ここで重要なことは、株式とは資本に含まれる一つの分類ということだ。そして、会社所有権や返済義務などのフレームワークでみたとき、自己資本と他人資本は大きく異なる。株式会社は状況に応じて、どちらの資本によって事業に必要な資金を調達するか、その都度選択する。この意思決定プロセスについては、別の機会で紹介したい。

新しい形の自己資本

株式市場の発達については、すでに説明した通りだが、昨今の企業の資金調達の方法はますます多様化している。例えば、仮想通貨のニュースが新聞誌面等を賑わせているが、仮想通貨を利用する資金調達方法がイニシャル・コイン・オファリング(以下、ICO)だ。

ICOの特性

ICOは、返済不要な資金調達方法のため、「自己資本」に大別されると考えられる。しかし、内容は自己資本と他人資本の折衷のような位置付けだ。ICOでは、出資者に対して、デジタル権利証(トークンと呼ばれる)が発行される。その権利証には、会社の所有権もなければ、配当や利子の受け取る権利もない。出資者は事業の成功に伴う、トークンの値上がり後、対応する仮想通貨の取引所でトークンを売買することでリターンを得る。場合によっては、商品の購買権利やクーポン等が発行される場合もある。まとめると以下の通りだ。

ICOを代表とした新しい資金調達方法は、今後一層増えていくだろう。どのような資金調達方法であっても、会社が返済義務を負うか否かで他人資本か自己資本に分類することができる(少なくとも会計的には)。

資本の調達方法の整理

今回の内容をまとめると以下の通りだ。
①株式(自己資本)は投資のリスクを分散する仕組み
②株式(自己資本)は資本の中の1つの分類
③資本には、返済が必要な他人資本もある
④資本の調達方法は、ICOなど一層多様化している
⑤そのような調達方法であっても、フレームワークで整理することが可能
これらをもって、会社についての理解を深める一助となってほしい。

財務会計と税務会計の相違点【図解】|例説!ビジネス用語の違い
財務会計と税務会計の相違点【図解】|例説!ビジネス用語の違い 1024 683 Biz Tips Collection

ビジネスパーソンなら必ず仕事上業務中にぶつかる、会計や、税務という単語。自分の旅費・宿泊費の精算や交際費使用の際に耳にすることが多いのではないか。「なぜ?」「どういう意味?」と感じても、会社のルール上で決まっています、などと経理の人間には、お役所対応されてしまうこともある。今回は、会計と税務はどのような違いがあるのかを理解してもらいたい。

会計とはなにか?

まずは、会計から確認する。会計は、報告する相手に応じて「財務会計」と「管理会計」に分かれるが、その差は別の機会に明らかにするとして、今回は一般論(特に税務との差)を解説していく。

会計の目的

会計の目的は、端的に言うと、「企業の経営成績を定量的に報告する」ことだ。報告する相手は、財務会計なのか、管理会計なのかで変わってくるが、共通しているのは、企業活動を収益と費用に区分して、差し引いて計算した利益を報告することだ。経営成績=利益と考えるとイメージしやすいだろう。

例えば、400円で仕入れたものを、1,200円で販売し、そのために交際費(運搬費など)を100円支出した場合は、収益1,200円、費用400円+100円=500円として記録される。この場合、差し引き利益は700円と計算される。以上が、会計の報告内容だ。また、報告形式は、様々な企業や部門がある中で、比較しやすいように財務諸表(損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)などの総称)という画一的なフォーマットにより「報告」される。会計基準という一定のルールにより同一の取引には同一の報告が規定されているので、他社同士でも比較しやすくなる。このルールが会計を世界に広く発展させた特徴の一つだろう。

 

税務とはなにか

税務は特に企業活動で関連する税法律があり、それにより報告内容が規定される。基本的には法人税法と消費税法だ。今回は会計と同様にまずは税務の目的から確認する。

税務の目的

税務の目的は、「企業の必要納税額を報告する」ことだ。報告する相手は税務署(国)となる。報告内容は、納税額の計算結果だ。納税額は、課税所得から計算される。この課税所得は、会計における利益とは違い、益金から損金(会計では利益=収益-費用であったため違う)を差し引くことで求められる。

例えば、400円(消費税)で仕入れたものを、1,200円で販売し、そのために交際費(運搬費など)を100円支出した場合は、益金1,200円、損金400円+50円=450円として記録される。課税所得が750円のため、750円に対して法人税などの税率を乗じることで必要な納税額が計算されることになる。そして、報告形式は税法上規定された税務申告書だ。画一的なフォーマットにより税務署に対して納税額を報告している。

鋭い方はコレまでの説明で気づいただろう。会計と税務の違いでキーとなるのは、収益と費用と、益金と損金の名称が異なる点だ。名称の差があることに違和感を感じることだろう。名称の差があることと同様に例であげた費用と損金に金額の差があり、それにより経営成績(収益)と納税額(課税所得)といった報告内容が異なってきている。会計と税務は報告する目的が異なり、報告形式を規定するルールが違うので報告内容に差が出てくるのだ。

会計と税務、それぞれにおける報告作成者の気持ち(思惑)

みなさんは自分の年収を少し多め(よく見られたい)に言ったり、一方で税金が高いと思ったことがあるはずである。企業における報告作成者も実は同じ気持ちを持っており、報告を作成する際にその思惑が変わってくる。ここではその思惑について述べたいと思う。

会計の思惑とチェック体制

会計の作成者は企業またはその企業の財務部門となる。作成者は「報告」をする一方で、報告相手から評価されることになる。例えば、部門の場合は、社内人事評価や、賞与月数決定の材料として使用されるだろう。そして、評価対象となる以上、作成者には利害関係が生まれる。すなわち、会計には報告内容を「良く」見せたいという思惑があるのだ。この思惑に対して、外部の目から信頼性を担保しているのが、監査法人の会計監査だ。

税務の思惑とチェック体制

税務の作成主体は企業となる。作成主体は、必要な納税額を税務署に報告し納税額を納める。自分の報告した内容により自身の支払う税金の大小が決まる。税務には報告内容を「悪く」見せたいという思惑があるのだ。この思惑に対して、外部の目から信頼性を担保しているのが、国税局(または国税庁)による税務調査だ。報告作成者(企業)が嘘の報告をしている可能性をがあるので、税務署はこの納税額が本当に正しいのかを評価することになる。

会計と税務の共通点と違い

さて、会計と税務の報告と、その思惑やチェック体制をまとめると以下のようになる。

ここで、理解をしていただきたいのが、会計と税務は利益、課税所得を計算するという意味では、かなり近いことをしているが、その思惑は全くの逆ということ。そして、チェックする外部の目も別の組織が行っているということだ。

会計と税務の違いって?

これまで解説してきたとおり、チェック体制が異なっている関係で会計と税務のルール作りは別の組織体で行っている。会計であれば会計基準というルールを、公益団体法人である財務会計基準機構が作成しており、税務であれば、国税庁により各種税法が作成している。ここで重要なのは、設定主体の思惑もそれぞれということだ。例えば、会計のルールであれば、企業は「良く」見せたいと考えているので、費用が過少に計算されないようにルール作りがされている。一方で、税務のルールであれば、企業は「悪く」見せたいと考えているので、損金が過大に計算されないようにルール作りがされている。会計と税務の差は報告ルールとそれにより発生する思惑にある。

会計と税務は二重帳簿なの?

では、会計と税務が全く別ものかというとそうではない。企業が会計と税務で全く別の計算をしていたとしたら、記録や報告にかかる事務手続きは2倍になってしまう。企業内の会計・税務の報告書作成ルールは、通常は会計、税務の双方の規定を踏まえて、どちらの規定にも抵触しないように定められている。例えば、税務上の規定の方が厳しい部分(交際費や寄附金などが該当する)には、税務よりの会社規定を設定するといった具合だ。読者たちが、経理部門からあるときは会計、またあるときは税務という単語によって説明を聞くことがあるのはそのためだ。

会計と税務は思惑が違う

最後に会計と税務の違いをおさらいすると以下の通りだ。
①会計は「良く」見せたい、税務は「悪く」見せたい
②会計は収益-費用=利益、税務は益金-損金=課税所得
③会計は監査法人による会計監査によりチェックされ、税務は国税局による税務調査でチェックされる。
④それぞれのルールに抵触しないよう、会社独自のルールを設定している
これらをもって、会社についての一層の理解を深めてほしい。