マーケティング

ウィンザー効果とは?実践例は?企業はこのように活用している! | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ
ウィンザー効果とは?実践例は?企業はこのように活用している! | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ 1024 722 Biz Tips Collection

人は情報の中身が同じでも、ちょっとした違いで受ける影響が大きく変わる。情報の入り方もその1つだ。ウィンザー効果も、よく利用される人間の傾向だ。この傾向を把握することで、うまく利用し、また影響を受けすぎないことが可能だ。今回は、ウィンザー効果とその実践方法の例を紹介する。

 

ウィンザー効果とは?

ウィンザー効果は、直接本人に言われるよりも、第三者から伝えられた方が、信頼性が増すという心理効果だ。

イメージしてもらいたい。
上司から「君には期待している!君は絶対に売上を達成できる!がんばってくれ!」と言われるのと、
同僚から「上司Aが、君にむちゃ期待してると言ってたよ。あいつなら絶対今回売上を達成できるとかって」と間接的に言われる。

どちらが、頑張る気になるだろうか。
恐らく、同僚から言われた場合だろう。本人に言われても、本当かよ、皆に言ってるだろ、などと考えてしまうのではないあろうか。
よく考えると、入ってきている情報は同じであるにも関わらず、やはり第三者から聞いた方が信頼できるのが、人の心理だ。

上司の意見を素直に受け取れない理由は、利害関係があるからだ。第三者である同僚には、特に利害関係がないので、事実のような気分で受け取れるのだ。

 

ウィンザー効果の活用例:お客様の声を載せる

ウィンザー効果に基づいて最も多用されているのはこれだろう。
会社の営業や広告が「この商品はすごい」と言うよりも、ユーザーレビュー、口コミなどが「これすごかった」と言っている方が信頼できる。

ハンバーガー屋が「うちおいしいですよ」と言っていても気にとめないが、友達から「あのハンバーガー屋おいしかった」と聞けば、言ってみたくなるだろう。

多くの営業資料で、「お客様の声」を載せているのはこのためだ。
もちろん、直接口コミを聞く方がよりよいが、載せないよりはよい。

この場合、厳密には第三者の声を本人が伝える形になっているので、いかに本当に第三者の声であるか説得力を持たせることが重要だ。
多くの営業資料やウェブサイトで、声に顔写真を添えているのは、このためだ。
また、アマゾンのレビューやツイートなどを引用してくるのも手だ。

 

ウィンザー効果の活用例:SNSなどで発言させる

先ほどの例のように、本人が第三者の意見を伝えるよりも、第三者の意見を第三者から聞く方がもちろんよい。

よく、「このハッシュタグをつけて感想をツイートしたら、抽選でプレゼント!」みたいなキャンペーンを見ないだろうか。商品について発信することに、プレゼントなどの報酬を与えることで促すのだ。バズればなおよしだ。

アフィリエイトプログラムもこのやり方の1つだろう。報酬が金銭というより直接的なものになっただけだ。しかし、これはこれでアフィリエイトの仕組みを理解している人からすると、相手に利害があることがわかってしまうので、信頼性を生まない場合もあるが、なんだかんだ多数の人はひっかかるのだろう。

 

ウィンザー効果の活用例:アンバサダー戦略

上記にもとても似ているが、アンバサダーを作るという手法もよく見る。
アンバサダーとは、直訳すると大使。要は、自発的に周りに商品の大使となって広めてくれるコアファンのことだ。

多くの商品・サービスなどが、まずコアファン作りに力を入れることがある。コアファンには、何かもらえたりイベントに参加できるなど、様々な特典を提供していたりする。これは、いつも買ってくれてる感謝だけで提供しているわけではない。より商品のことを好きになってもらい、最終的にはアンバサダーとなって周囲に広めてくれることを狙っているのだ。

 

ウィンザー効果の活用例:ステルスマーケティング

一時期問題になったが、いわゆる「ステマ」である。
ステルスマーケティングはまさにウィンザー効果を狙ったものだ。

会社や会社の息がかかった人が、それを隠してネットなどで商品を褒める。ユーザーは第三者の意見と勘違いして信頼してしまうのだ。褒められた手法ではないかもしれないが、効果があるのは間違いない。

特に最近多いステルスマーケティングの手法である、芸能人・Youtuber・インスタグラマーなどのインフルエンサーを活用したマーケティングは、権威のある第三者の意見なので、更に効果がある。

今では、自主規制で、スポンサーがいる場合はそう記載するようになっているが、それでもそれなりに効果はあるようだ。

 

ウィンザー効果の活用例:顧客から顧客を紹介してもらう

もちろんウィンザー効果は、B2Cのマス相手だけで効果を発揮するものではない。
多くのB2Bなどもっと狭い範囲でももちろん活用できる。

よくあるのは、顧客に顧客の紹介をお願いすることだ。サービスに満足してくれている顧客であれば、OKしてくれる場合はある。これは単純に営業リストを拡大するだけでなく、第三者を挟んで紹介してもらうことで、信頼性を上げているのだ。

より直接的に顧客紹介に特典を付けている場合も多々ある。B2Cだが、ゲームアプリなどで友達に紹介させるとポイントが入る仕組みもそうだ。

 

ウィンザー効果をうまく活用しよう

このように、ウィンザー効果は、いたるところで活用されている。
この効果を把握することで、うまく活用することができ、またこの効果を狙った企業の施策に影響を受けすぎないようにもなれる。
まとめると以下の通りだ。
・ウィンザー効果は、直接本人に言われるよりも、第三者から伝えられた方が、信頼性が増すという心理効果
・効果の理由の1つは、情報源の利害関係の有無
・いたるところで活用されている:お客様の声、SNS発信促進、アンバサダー、ステルスマーケティング、顧客紹介、など

 

「行動経済学的マーケティング手法シリーズ」では以下も紹介している。
選択肢で行動を操るテクニック4選

選択肢で行動を操るテクニック4選 | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ
選択肢で行動を操るテクニック4選 | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ 1024 768 Biz Tips Collection

自分で決めていると思い込んでいるが、実はさりげない設計によって人は大きな影響を受けていることが多い。逆に言えば、悪用すればそれとなく人々の行動を操ることも可能だ。今回は、用意する選択肢でどのように人が影響を受けるか、テクニックを4つ紹介する。

三択では真ん中を選ぶ。松竹梅の法則

これはなんとなく自分の感覚でもわかるのではないだろうか。「3段階の選択肢があった場合、人は真ん中を選びやすい」という心理のことだ。極端の回避性とも呼ぶ。

例えば、以下の二択だった場合、人は安い方を選ぶ傾向がある。
竹プラン:5,000円
梅プラン:2,000円

しかし、ここに選択肢を1つ追加してみよう。
松プラン:10,000円
竹プラン:5,000円
梅プラン:2,000円

すると、真ん中が選ばれやすくなるのだ。

応用方法は簡単だ。竹の商品を売りたければ、そんな売る気のない松の商品を商品ラインに追加するのだ。
逆に、高級ラインはあまり売れていないからと、取りやめにしてしまうと、全体の売上が下がってしまうかもしれない。

 

追加の選択肢で誘導。妨害効果

タイプの違う選択肢が2つあるとする。どちらかに新たな選択肢を増やすことで、選択を誘導できる。過去に以下のような実験が行われた。

2つの選択肢が与えられた。
①1.50ドルの現金
②2.00ドル相当のボールペン

この2つの選択肢の場合、75%の人が②のボールペンを選択した。合理的な選択ではあるだろう。

一方、以下の選択肢を増やしたパターンを試した。
①1.50ドルの現金
②2.00ドル相当のボールペン
③1.00ドル相当のサインペン2つ(合わせて2.00ドル相当)

すると、50%ほどの人は①の現金を選択したのだ。②と③の方が①より金銭価値が高いにも関わらず、2つの決めづらい選択肢があることによって、①を選択する方が選ぶのが楽だったのだろう。

以下のような同様の研究がある。
ある症状の患者に対して、新しい治療法を推薦するか、専門病院に紹介状を書くか、選ぶ場合、75%が新しい治療法を推薦した。しかし、2つの新しい治療法の推薦と、専門病院への紹介状の3択になった場合、50%が専門病院への紹介状を選択した。

国会議員が、赤字の公立病院を閉じるかどうかの判断を求められた際、66%が閉じる方を推薦した。しかし、これが2つの公立病院のどちらかを閉じるか、閉じないかの判断になった場合、どちらかの病院を閉じる方を推薦したのはたった25%だった。

選択肢が増えた方のジャンルの選択は考えることが増えてしまうので、楽な方を選んでしまう。また、選択肢のデメリットとなる要素を抽出し、同様のデメリットを強調するための他の選択肢を用意し、心理的にデメリットの要素を含む選択肢の選択を妨害するテクニックも可能かもしれない。

 

無意味なおとりの選択肢で誘導。相対性の真相

明らかに選ばないであろう無意味な選択肢を含めることで誘導することも可能だ。有名なケースだが、以下のような研究がある。

2つの選択肢がある。
①Web版の年間購読:59ドル
②Web版+印刷版の年間購読:125ドル

この場合、32%が②のWeb版+印刷版を選択した。

しかし、以下の場合は、結果が違った。
①Web版の年間購読:59ドル
②印刷版の年間購読:125ドル
③Web版+印刷版の年間購読:125ドル

②の印刷版のみの選択は全く無意味だ。同じ金額でWeb版もついてくるので、選ぶ人がいるはずもない。しかし、この意味のない選択肢を加えることで、人々の選択肢が大きく変わった。84%の人が、③のWeb版+印刷版を選択した。

これは、似ているが明らかに劣っている選択肢(②)を加えることで、もう1つの選択肢(③)の魅力度が高く感じてしまう心理が影響していると言われる。2つの選択肢の時よりも、よりお得に感じたのだ。ちなみに先ほどの3択は、実際にエコノミスト誌が提示していたことのあるオプションだ。

同様の研究に以下のようなものがある。
様々なサービス込みのパリ旅行とローマ旅行では、選択が分かれる。しかし、朝食なしのローマ旅行を入れて3つの選択肢にすると、様々なサービス込みのローマ旅行の方が選択されるようになった。

 

選択肢が多すぎると選べない。決定回避の法則

逆に気をつけなければならないのは、この法則だ。「選択肢が多すぎると、人は何も買わない」という傾向がある。先ほどの妨害効果でも同様の効果が見られた。
自分の経験でも、迷った挙句何も買わなかったという経験はないだろうか。人は「決める」という行為に意外とエネルギーを使う。選択肢が多すぎると、色々比較して考えるのが面倒になり、逆に迷って決められなくなってしまうのだ。人は実はできれば決断をしたくない。じゃあ、今度決めよう、となってしまう。

応用方法は簡単で、選択肢を絞る、ということだ。先ほど3択で誘導するというテクニックもあったが、商品ラインナップを6つも7つも選択肢を増やしてしまうと、真ん中を選んでくれるどころか何も選んでくれない可能性が増える。「おすすめ商品」や「売上ランキング」を表示する際も、わざと少なめに表示する方が購入率が上がる場合もあるだろう。

 

選択肢の設計は実は効果がある

選択肢をうまく設計すれば、人の行動をある程度誘導することが可能だ。今回、それに役立つテクニックを4つ紹介した。まとめると以下の通りだ。
・3段階の選択では、人は真ん中を選ぶ
・AかBの2タイプの選択がある時、Bと同じレベルの選択Cを加えると、Aが選ばれやすくなる。
・AかBの2タイプの選択がある時、Bの劣化版の選択Cを加えると、Bが選ばれやすくなる。
・選択肢が多すぎると、人は選択しなくなる。

 

「行動経済学的マーケティング手法シリーズ」では以下も紹介している。
ウィンザー効果とは?実践例は?企業はこのように活用している!