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ウィンザー効果とは?実践例は?企業はこのように活用している! | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ
ウィンザー効果とは?実践例は?企業はこのように活用している! | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ 1024 722 Biz Tips Collection

人は情報の中身が同じでも、ちょっとした違いで受ける影響が大きく変わる。情報の入り方もその1つだ。ウィンザー効果も、よく利用される人間の傾向だ。この傾向を把握することで、うまく利用し、また影響を受けすぎないことが可能だ。今回は、ウィンザー効果とその実践方法の例を紹介する。

 

ウィンザー効果とは?

ウィンザー効果は、直接本人に言われるよりも、第三者から伝えられた方が、信頼性が増すという心理効果だ。

イメージしてもらいたい。
上司から「君には期待している!君は絶対に売上を達成できる!がんばってくれ!」と言われるのと、
同僚から「上司Aが、君にむちゃ期待してると言ってたよ。あいつなら絶対今回売上を達成できるとかって」と間接的に言われる。

どちらが、頑張る気になるだろうか。
恐らく、同僚から言われた場合だろう。本人に言われても、本当かよ、皆に言ってるだろ、などと考えてしまうのではないあろうか。
よく考えると、入ってきている情報は同じであるにも関わらず、やはり第三者から聞いた方が信頼できるのが、人の心理だ。

上司の意見を素直に受け取れない理由は、利害関係があるからだ。第三者である同僚には、特に利害関係がないので、事実のような気分で受け取れるのだ。

 

ウィンザー効果の活用例:お客様の声を載せる

ウィンザー効果に基づいて最も多用されているのはこれだろう。
会社の営業や広告が「この商品はすごい」と言うよりも、ユーザーレビュー、口コミなどが「これすごかった」と言っている方が信頼できる。

ハンバーガー屋が「うちおいしいですよ」と言っていても気にとめないが、友達から「あのハンバーガー屋おいしかった」と聞けば、言ってみたくなるだろう。

多くの営業資料で、「お客様の声」を載せているのはこのためだ。
もちろん、直接口コミを聞く方がよりよいが、載せないよりはよい。

この場合、厳密には第三者の声を本人が伝える形になっているので、いかに本当に第三者の声であるか説得力を持たせることが重要だ。
多くの営業資料やウェブサイトで、声に顔写真を添えているのは、このためだ。
また、アマゾンのレビューやツイートなどを引用してくるのも手だ。

 

ウィンザー効果の活用例:SNSなどで発言させる

先ほどの例のように、本人が第三者の意見を伝えるよりも、第三者の意見を第三者から聞く方がもちろんよい。

よく、「このハッシュタグをつけて感想をツイートしたら、抽選でプレゼント!」みたいなキャンペーンを見ないだろうか。商品について発信することに、プレゼントなどの報酬を与えることで促すのだ。バズればなおよしだ。

アフィリエイトプログラムもこのやり方の1つだろう。報酬が金銭というより直接的なものになっただけだ。しかし、これはこれでアフィリエイトの仕組みを理解している人からすると、相手に利害があることがわかってしまうので、信頼性を生まない場合もあるが、なんだかんだ多数の人はひっかかるのだろう。

 

ウィンザー効果の活用例:アンバサダー戦略

上記にもとても似ているが、アンバサダーを作るという手法もよく見る。
アンバサダーとは、直訳すると大使。要は、自発的に周りに商品の大使となって広めてくれるコアファンのことだ。

多くの商品・サービスなどが、まずコアファン作りに力を入れることがある。コアファンには、何かもらえたりイベントに参加できるなど、様々な特典を提供していたりする。これは、いつも買ってくれてる感謝だけで提供しているわけではない。より商品のことを好きになってもらい、最終的にはアンバサダーとなって周囲に広めてくれることを狙っているのだ。

 

ウィンザー効果の活用例:ステルスマーケティング

一時期問題になったが、いわゆる「ステマ」である。
ステルスマーケティングはまさにウィンザー効果を狙ったものだ。

会社や会社の息がかかった人が、それを隠してネットなどで商品を褒める。ユーザーは第三者の意見と勘違いして信頼してしまうのだ。褒められた手法ではないかもしれないが、効果があるのは間違いない。

特に最近多いステルスマーケティングの手法である、芸能人・Youtuber・インスタグラマーなどのインフルエンサーを活用したマーケティングは、権威のある第三者の意見なので、更に効果がある。

今では、自主規制で、スポンサーがいる場合はそう記載するようになっているが、それでもそれなりに効果はあるようだ。

 

ウィンザー効果の活用例:顧客から顧客を紹介してもらう

もちろんウィンザー効果は、B2Cのマス相手だけで効果を発揮するものではない。
多くのB2Bなどもっと狭い範囲でももちろん活用できる。

よくあるのは、顧客に顧客の紹介をお願いすることだ。サービスに満足してくれている顧客であれば、OKしてくれる場合はある。これは単純に営業リストを拡大するだけでなく、第三者を挟んで紹介してもらうことで、信頼性を上げているのだ。

より直接的に顧客紹介に特典を付けている場合も多々ある。B2Cだが、ゲームアプリなどで友達に紹介させるとポイントが入る仕組みもそうだ。

 

ウィンザー効果をうまく活用しよう

このように、ウィンザー効果は、いたるところで活用されている。
この効果を把握することで、うまく活用することができ、またこの効果を狙った企業の施策に影響を受けすぎないようにもなれる。
まとめると以下の通りだ。
・ウィンザー効果は、直接本人に言われるよりも、第三者から伝えられた方が、信頼性が増すという心理効果
・効果の理由の1つは、情報源の利害関係の有無
・いたるところで活用されている:お客様の声、SNS発信促進、アンバサダー、ステルスマーケティング、顧客紹介、など

 

「行動経済学的マーケティング手法シリーズ」では以下も紹介している。
選択肢で行動を操るテクニック4選

【図解】「財務会計」と「管理会計」の相違点|例説!ビジネス用語の違いシリーズ
【図解】「財務会計」と「管理会計」の相違点|例説!ビジネス用語の違いシリーズ 1024 683 Biz Tips Collection

会計は大きく分けると財務会計と管理会計の二つに分けられ、それぞれの作成方法と利用用途はまったく異なったものとなっている。ビジネスパーソンにとって会計は重要な基礎知識であり、その違いを理解していないと上司との会話において検討違いな発言をしてしまう可能性もある。そのような恥ずかしい思いを防ぐために、今回は、「財務会計」と「管理会計」の違いについて解説していくものとする。

なお、双方を包括した会計については「財務会計と税務って何?どんな違いがあるの?」にて解説しているので参考にして欲しい。

※ビジネス用語は会社や業界によって様々な言い方や意味の違いが存在する。本「例説!ビジネス用語の違い」シリーズでは身近に存在する似ているようで実は微妙に意味が違うビジネス用語を比較し、これらの相違点と違いが生まれてきた背景を例を持って解説していく。ビジネス用語の絶妙な違いを把握して適切なビジネスコミニケーションを見につけてほしい。

 

「財務会計」は他社と比較してもらう用の成績表(外部関係者向け)

財務会計は、会社のステークホルダーである投資家・債権者(銀行)等に向けて作成するものである。

そのため、他社と比較することができるように作成される。その比較可能性を担保するのが、いわゆる「会計基準」というものである。企業は経理部によって作成された帳簿(簿記)をベースにして財務諸表を作成するが、その際に作成基準とされるものが会計基準だ。

この会計基準が担保している「比較可能性」はあまりなじみのない言葉だと思うので、会計基準がなかったらどのような事態になるか、例を用いて考えてみることとする。

例えば、同じ不動産業の上場会社が2社あったとする。両方とも同じぐらいの売上高で、B社の方が利益率が高い。双方ともカジノ施設の建設に名乗りを上げているとの話を聞いているので、不動産業が上手い方に投資したいと考えている。

皆さんだったらどちらの会社に投資を決定するだろうか?
当然、同じ条件でB社の利益率の方が高いので不動産業の経営が上手と考えて、B社を選ぶだろう。

しかし、実際は下記の図のような状況だったらどうだろう。

有価証券、つまり金融商品の運用による売上が90%を占めており、本業の不動産業による売上はA社の10%にも満たなかった。
おそらく、投資家のあなたはカジノ施設の建設業者になることが株価上昇の鍵になると考え、A社へ投資を変更するはずだ。

このように、投資家が投資の意思決定をする際に参考にするものが財務諸表であり、その判断が誤った情報で行われないように相当程度同じ実態を同じ数値で表現できるように会計基準は規制をしているのだ。実際の会計基準でも本例のように本業出ない金融投資における収益の売上への計上は禁止されている。

 

「管理会計」は自社の経営を分析するための成績表(経営者(内部)向け)

一方、管理会計は経営者等の社内関係者向けに作成される資料である。
そのため、財務会計とは異なり画一的な基準はない。基本的にどのような切り口で成績表を作成しようと自由なのだ。

経営者は現場のひとつひとつの数値をもとに分析を重ね、経営状態をより良い状態にしていくことが仕事だ。さまざまな切り口からデータを取り直し、改善すべきポイントを探していく。当然、経営者個々人・会社の状況によって求められる数値の算出方法はちがうので提出すべき資料はそれぞれ異なるのだ。
様々な切り口で数値を作成するといってもイメージが着きにくいと思うので、先ほどと同様に例を用いて解説することとする。

例えば、小売業を営むC社の100店舗の売上を分析する場合、どのような形で資料を作成するのがベストか?
・駅から100m以内の店舗とそうでない店舗に分けて売上の差を見てみる
・店舗の店員構成比率(アルバイトと正社員)によって売上の差を見てみる
・店舗を面積ごとの売上高(売上高/面積)に差がないかみてみる
などなど

いずれも正解だ。経営改善のために必要な施策を見つけ出すための分析用の資料になっていたり、行った施策の効果が出ているかを前年度と比較できるようモニタリング用の資料になっていたり。
様々な状況・用途に合わせて管理会計手法が考案されており、その多くが企業が考案したものとなっている。
以下、管理用途の例を挙げる。
・製品別や各部門別の原価計算
・損益分岐点分析
・キャッシュフロー分析
・安全性や収益性分析
・予算管理
・事業評価指標
・投資案件の適否判断

 

財務会計と管理会計の共通点は簿記をベースにしていること

これまで報告対象と報告目的を起点とした財務会計と管理会計の違いについて解説してきた。最後に共通点を確認することとする。

財務会計と管理会計の共通点は簿記により記録された帳簿を元にしていることが共通点だ。いずれも帳簿に記録されている様々な項目をその目的に応じて取り纏め、必要な報告形式に整形しなおしている。実は税務についても同様の共通点があり、全ての基礎は簿記にあるともいえる。

 

まとめ

さて、財務会計と管理会計の違いをまとめると以下のようになる。

これらをもって、会社の会計についての一層の理解を深めてほしい。

財務諸表とは何か?財務諸表の役割と見方について
財務諸表とは何か?財務諸表の役割と見方について 1024 768 Biz Tips Collection

皆さんは、自分の会社のことをどこまで理解されているだろうか。社歴や商品知識、人事制度など、会社を理解するために必要なことは多いが、定量的な部分は「財務諸表」から捉えることが有意義だ。財務諸表は、読み方が分かっていないと、ただの数字の羅列に見えてしまう。自らの会社をより深く理解するために、財務諸表の読み方のコツをマスターしてほしい。

財務諸表とは何か?

財務諸表(Financial statements、通称F/S)とは、「企業の経営状態を定量的に把握できる資料」と理解してほしい。財務諸表は以下の4つから構成されている。

①.貸借対照表(Balance sheet、通称B/S):企業の一時点の財産の状況(財政状態という)を明らかにする表
②.損益計算書(Profit&Loss Statement、通称P/L):企業の一定期間の利益の状況(経営成績という)を明らかにする表
③.株主資本等変動計算書(Statements of Shareholders’ Equity、通称S/S):B/Sの純資産の部の一定期間の変動を明らかにする表
④.キャッシュ・フロー計算書(Cash flow statement、通称C/F):企業の一定期間の現金の変動を明らかにする表

ここで重要なのは専門的な言葉の定義ではない。理解してほしいのは、企業の経営状態を定量的に把握するときは、①持っている財産(資産という)と債務(負債という)、②稼いだ利益、③純資産(資産から負債を差し引いた差額)の変動、④稼いだお金。という4つ視点から見ていくということ。そして、この4つは互いに繋がっているということだ。

 

財務諸表のそれぞれの繋がり(B/S,P/L,S/S,C/F)

それでは、財務諸表がそれぞれどのように繋がっているかを具体的に見ていこう。ここでは、架空の商店の取引を例に見ていく。皆さんが1人で事業をおこしたと想像して読んでもらいたい。

 

財務諸表の作成

あなたは駄菓子屋の開店すべく、以下のことを行った。
①自分の預金口座から1,000円を会社用の口座に移した。
②600円を現金で支払って商品を仕入れた。
③500円分の商品を1,200円で販売した。ただし入金は1か月後とした。

これらを財務諸表に表すと以下のようになる。
簿記の知識が無いと、すべてを正確に理解するのは難しいかもしれないが、結果を見て大体のイメージが持てれば問題ない。念のため、財務諸表の各資料の説明を補足しておく。
・B/S・・・会社の財産となるのは、現金400円(会社資金1,000円ー現金仕入600円)と、将来現金になる売掛金1,200円、将来販売できる商品100円(仕入600円-販売500円)。債務についてはなし。純資産については、株主資本等変動計算書から転記(後述)
・P/L・・・会社の利益となるのは700円(商品売上1,200円ー商品売上原価500円)、利益の結果を株主資本等変動計算書へ転記
・S/S・・・純資産の変動は資本金の流入1,000円と当期純利益の発生700円。結果について、貸借対照表へ転記
・C/F・・・営業活動(販売活動)からは600円の赤字(600円の商品仕入 ※商品売上については未入金)、投資活動はなし。財務活動については資本金の流入1,000円。現金の残高について貸借対照表へ転記。

 

財務諸表の繋がり

上記の例により作成された財務諸表を見て、理解してほしいのは、財務諸表は互いに連携しているということだ。そして、すべての起点になっているのは貸借対照表だ。あなたが、事業をしようと思ったときを想像してほしい。まずに初めに行うことは、借入れだろうが、自己資金(自分のお金)だろうが、会社を運営するための資本の用意だろう。貸借対照表から事業が始まり、事業の成果が貸借対象表へ帰ってくるのだ。

 

財務諸表の読み方まとめ

今回の内容をまとめると以下の通りだ。
①財務諸表とは、企業の経営状態を定量的に把握できる資料
②財務諸表は4つの資料で構成されており、それぞれ以下を明らかにするために作成する
・貸借対照表(B/S)・・・持っている財産(資産という)と債務(負債という)の金額
・損益計算書(P/L)・・・企業が一定期間に稼いだ利益の金額
・株主資本等変動計算書(S/S)・・・純資産(資産から負債を差し引いた差額)の一定期間の変動額
・キャッシュ・フロー計算書(C/F)・・・企業が一定期間に稼いだお金
③財務諸表の起点は貸借対照表で、4つの資料は互いに連携している

上記を理解できていれば、財務諸表を分かると言っても差し支えないだろう。ただし、財務諸表の繋がりを理解しても、その会社にどのような特徴があるか理解するためには、もう一歩突っ込んだ見方が必要だ。財務諸表の分析方法のコツについては、別の機会で紹介したい。

選択肢で行動を操るテクニック4選 | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ
選択肢で行動を操るテクニック4選 | 行動経済学的マーケティング手法シリーズ 1024 768 Biz Tips Collection

自分で決めていると思い込んでいるが、実はさりげない設計によって人は大きな影響を受けていることが多い。逆に言えば、悪用すればそれとなく人々の行動を操ることも可能だ。今回は、用意する選択肢でどのように人が影響を受けるか、テクニックを4つ紹介する。

三択では真ん中を選ぶ。松竹梅の法則

これはなんとなく自分の感覚でもわかるのではないだろうか。「3段階の選択肢があった場合、人は真ん中を選びやすい」という心理のことだ。極端の回避性とも呼ぶ。

例えば、以下の二択だった場合、人は安い方を選ぶ傾向がある。
竹プラン:5,000円
梅プラン:2,000円

しかし、ここに選択肢を1つ追加してみよう。
松プラン:10,000円
竹プラン:5,000円
梅プラン:2,000円

すると、真ん中が選ばれやすくなるのだ。

応用方法は簡単だ。竹の商品を売りたければ、そんな売る気のない松の商品を商品ラインに追加するのだ。
逆に、高級ラインはあまり売れていないからと、取りやめにしてしまうと、全体の売上が下がってしまうかもしれない。

 

追加の選択肢で誘導。妨害効果

タイプの違う選択肢が2つあるとする。どちらかに新たな選択肢を増やすことで、選択を誘導できる。過去に以下のような実験が行われた。

2つの選択肢が与えられた。
①1.50ドルの現金
②2.00ドル相当のボールペン

この2つの選択肢の場合、75%の人が②のボールペンを選択した。合理的な選択ではあるだろう。

一方、以下の選択肢を増やしたパターンを試した。
①1.50ドルの現金
②2.00ドル相当のボールペン
③1.00ドル相当のサインペン2つ(合わせて2.00ドル相当)

すると、50%ほどの人は①の現金を選択したのだ。②と③の方が①より金銭価値が高いにも関わらず、2つの決めづらい選択肢があることによって、①を選択する方が選ぶのが楽だったのだろう。

以下のような同様の研究がある。
ある症状の患者に対して、新しい治療法を推薦するか、専門病院に紹介状を書くか、選ぶ場合、75%が新しい治療法を推薦した。しかし、2つの新しい治療法の推薦と、専門病院への紹介状の3択になった場合、50%が専門病院への紹介状を選択した。

国会議員が、赤字の公立病院を閉じるかどうかの判断を求められた際、66%が閉じる方を推薦した。しかし、これが2つの公立病院のどちらかを閉じるか、閉じないかの判断になった場合、どちらかの病院を閉じる方を推薦したのはたった25%だった。

選択肢が増えた方のジャンルの選択は考えることが増えてしまうので、楽な方を選んでしまう。また、選択肢のデメリットとなる要素を抽出し、同様のデメリットを強調するための他の選択肢を用意し、心理的にデメリットの要素を含む選択肢の選択を妨害するテクニックも可能かもしれない。

 

無意味なおとりの選択肢で誘導。相対性の真相

明らかに選ばないであろう無意味な選択肢を含めることで誘導することも可能だ。有名なケースだが、以下のような研究がある。

2つの選択肢がある。
①Web版の年間購読:59ドル
②Web版+印刷版の年間購読:125ドル

この場合、32%が②のWeb版+印刷版を選択した。

しかし、以下の場合は、結果が違った。
①Web版の年間購読:59ドル
②印刷版の年間購読:125ドル
③Web版+印刷版の年間購読:125ドル

②の印刷版のみの選択は全く無意味だ。同じ金額でWeb版もついてくるので、選ぶ人がいるはずもない。しかし、この意味のない選択肢を加えることで、人々の選択肢が大きく変わった。84%の人が、③のWeb版+印刷版を選択した。

これは、似ているが明らかに劣っている選択肢(②)を加えることで、もう1つの選択肢(③)の魅力度が高く感じてしまう心理が影響していると言われる。2つの選択肢の時よりも、よりお得に感じたのだ。ちなみに先ほどの3択は、実際にエコノミスト誌が提示していたことのあるオプションだ。

同様の研究に以下のようなものがある。
様々なサービス込みのパリ旅行とローマ旅行では、選択が分かれる。しかし、朝食なしのローマ旅行を入れて3つの選択肢にすると、様々なサービス込みのローマ旅行の方が選択されるようになった。

 

選択肢が多すぎると選べない。決定回避の法則

逆に気をつけなければならないのは、この法則だ。「選択肢が多すぎると、人は何も買わない」という傾向がある。先ほどの妨害効果でも同様の効果が見られた。
自分の経験でも、迷った挙句何も買わなかったという経験はないだろうか。人は「決める」という行為に意外とエネルギーを使う。選択肢が多すぎると、色々比較して考えるのが面倒になり、逆に迷って決められなくなってしまうのだ。人は実はできれば決断をしたくない。じゃあ、今度決めよう、となってしまう。

応用方法は簡単で、選択肢を絞る、ということだ。先ほど3択で誘導するというテクニックもあったが、商品ラインナップを6つも7つも選択肢を増やしてしまうと、真ん中を選んでくれるどころか何も選んでくれない可能性が増える。「おすすめ商品」や「売上ランキング」を表示する際も、わざと少なめに表示する方が購入率が上がる場合もあるだろう。

 

選択肢の設計は実は効果がある

選択肢をうまく設計すれば、人の行動をある程度誘導することが可能だ。今回、それに役立つテクニックを4つ紹介した。まとめると以下の通りだ。
・3段階の選択では、人は真ん中を選ぶ
・AかBの2タイプの選択がある時、Bと同じレベルの選択Cを加えると、Aが選ばれやすくなる。
・AかBの2タイプの選択がある時、Bの劣化版の選択Cを加えると、Bが選ばれやすくなる。
・選択肢が多すぎると、人は選択しなくなる。

 

「行動経済学的マーケティング手法シリーズ」では以下も紹介している。
ウィンザー効果とは?実践例は?企業はこのように活用している!

ビジネススキルの分類 | カッツの理論でスキルの種類を体系的に知る
ビジネススキルの分類 | カッツの理論でスキルの種類を体系的に知る 1024 685 Biz Tips Collection

ビジネススキルを伸ばしたい、と多くのビジネスマンが思うことだろう。また、部下のビジネススキルを評価して比較したい場合もある。しかし、ビジネススキルとは定義が曖昧で広い言葉だ。これをわかりやすく分類したのが、ロバート・カッツの理論だ。発表されてから長い時間がたったが、今でも成り立つ内容だ。ビジネススキルを整理することで、自分に何が足りていないか、何を鍛えるべきか、など見えてくるだろう。

 

カッツの理論は、ビジネススキルを大きく3種類に分類

カッツの理論は、当初管理職に必要なスキルを整理するために提唱されたが、その分類方法は管理職でなくても当てはまる。この理論では、ビジネススキルを、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3つに分類している。

すぐれたマネージャーやビジネスマンは、これらの3つを全てある程度兼ね備えている。また、自身の立場によってどのスキルがより重要かなどが変わってくる。

まず、それぞれを解説しよう。

 

テクニカルスキルは、業務遂行能力

テクニカルスキルは、実務の実行のための能力だ。業務遂行のために必要な、専門技術や知識を含む。

例えば、PC操作やパワーポイント、エクセルを使いこなす能力。または、扱う自社商品の知識もそうだ。SEであれば、プログラミングスキル。会計担当者であれば経理・財務の知識も入るだろう。このように、必要となるテクニカルスキルは、会社や業務内容によって大きく異なる。

テクニカルスキルは、スタッフ(作業実行者)である以上は不可欠なスキルである。かといってマネージャーなら全く不要ではないというわけではなく、ある程度の業務知識は必要だ。また、技術職であれば最も重要な能力だ。

 

ヒューマンスキルは、対人能力

多くのビジネスの現場では、決まった業務の遂行だけで全てが回るわけではない。対人コミュニケーションが発生する。ヒューマンスキルは、対人コミュニケーションの能力だ。

しっかり報連相(報告・連絡・相談)していくことや、チームワークも含まれる。リーダーシップを持って仲間を動かしていくことや、営業の現場での交渉力、または社内での調整力もヒューマンスキルだ。相手の懐に入り、人間関係を築くのもそうだ。

誰でもある程度必要となる能力だが、特に営業や管理職であればより重要となるだろう。

 

コンセプチュアルスキルは、概念化能力

最後の一見分かりづらいが非常に重要なのが、いわゆる「概念化能力」と呼ばれるコンセプチュアルスキルだ。事象や状況を構造化して捉えたり、抽象的に考えるスキルのことだ。物事を抽象的に捉えることで、大量の情報や複雑な事柄を整理し、問題の本質的な原因を捉えれたり、将来を予測したり、ビジョンを描くことが可能となる。いわゆるロジカルシンキングといった思考法や、発想力などもコンセプチュアルスキルの重要な要素となる。

また、コンセプチュアルスキルは、他のスキルも強化する。例えば、議事録作成というテクニカルスキルを考えてみよう。概念化が苦手は人は、とりあえずフォーマットにある必要な全ての項目を暗記するだろう。コンセプチュアルスキルが高い人は、要は「どの会議だったか(日時、人など)」、「決定事項」、「ネクストステップ」がわかればいいのだろう、と抽象化してポイントを捕らえることができる。これが優れている人は、いわゆる「仕事の飲み込みの早い人」だ。また、話の内容をうまく構造化できるので、わかりやすい説明も得意で、ヒューマンスキルも向上する。

 

立場によって重要なスキルが変わる

立場が上がると、必要なスキルの比重が変わってくる。

実務担当者であれば、主に比重を置かれるのはテクニカルスキルだろう。1チームのリーダーであれば、ヒューマンスキルが重要になってくるが、まだ自身でも業務遂行できる能力が必要だ。ミドルマネージメント、経営者などトップマネージメントと階層が上がっていくにつれ、テクニカルスキルの重要性は下がっていき、まずヒューマンスキルが重要となり、次にコンセプチュアルスキルの重要度が上がっていく。

そんなスキルの重要度の変容をイメージで表したのが、以下の図だ。

自身にとって重要なスキルを見極めて強化しよう

ビジネススキルの3分類を整理すると以下の通りだ。
・テクニカルスキル=業務遂行能力
・ヒューマンスキル=対人能力
・コンセプチュアルスキル=概念化能力
また、立場によって、各スキルの重要度は変わってくる。

また、本ブログの分類も、テクニカルスキル=「実務スキル」もしくは「専門スキル・知識」、ヒューマンスキル=「対人スキル」、コンセプチュアルスキル=「思考スキル」と言い換えて、それにそった形になっているので、ぜひチェック頂きたい。

株式とはなに?資金調達方法のフレームワーク
株式とはなに?資金調達方法のフレームワーク 1024 683 Biz Tips Collection

皆さんが勤めているであろう株式会社。株式会社の発展に伴って、経済成長が進んだと言っても過言ではない。この株式会社の発展に寄与したのが株式制度だ。さて、みなさんは株式についてどこまで理解しているだろうか。株式を理解するためには、貸借対照表(B/S)の科目である資本と合わせて理解することが重要だ。また、資本にまつわる環境変化として仮想通貨なども関係してくる。これらの理解により、資本、ひいては企業を取り巻く資金調達の環境について理解を深めてほしい。

株式とはなにか?

株式とは「投資のリスクを分散する仕組み」である。いきなり、このような定義を持ち出しても難しいと思うので、株式会社の成り立ちから見ていこう。

株式会社の成り立ち

株式会社の生まれは、17世紀のオランダで設立された東インド会社と言われている。世界史を学んだ方なら記憶の片隅にあるだろう。東インド会社の事業は、インドや東南アジアから、船で香辛料などの特産品をヨーロッパに持ち帰ることだった。しかし、航海は危険が多い。(当時は現在ほど航海技術が発達していなかったし、海賊による襲撃や、疫病の伝染など、無事に特産物を持って帰れる可能性が低かった。)さらに、船による航海は長期間に及びお金もかかる。東インド会社は航海のたび、船を出航するための出資者を探した(船の出港には、船の維持費や乗組員を雇う費用等が必要になる。)。出資者は、航海の準備に必要な全ての費用を、事前に負担する代わりに、持ち帰った特産物を乗組員への給料等を差し引いた上で、全て受け取ることができる。航海に成功した場合は出資した金額以上のリターンを得られる訳だ。さて、ここでみなさんが出資者になると想像してみてほしい。無事に帰ってこれるか分からない航海の費用の全額を負担できるだろうか。自分の資産にかなりの余裕がなければ、なかなか決断できないだろう。出資はそれぐらいのバクチだった訳だ。そこで、東インド会社は1隻当たりの出資者を複数募った。これにより、東インド会社は出資者を集めやすくなり、多数の船を航海に出すことができるようになった。さらに、今までは資産が足りず出資できなかった者も、出資者の一員に加わることができるようになる。これが、株式会社の成り立ちと特性だ。投資リスクの分散、大規模化、数の増加について、理解頂けただろうか。

株式市場の発達の経緯

先ほどの例の通り、出資者は事前の出資(リスク)をする代わりに、会社の成果(リターン)を得る。そして、出資者はその証として、権利証を受け取る。これが株式の原型だ。さて、ここでまた、みなさんが出資者(=株主)だと想像してほしい。あなたは権利証を受け取ったが、その権利がお金に代わるのは何ヶ月あるいは何年も先だ。一方で、急に大金が必要になったとしよう。あなたは、その権利を誰かに譲ろうと考えるのではないか。この権利の売買が、株式売買である。株式は紙媒体のため受け渡しも容易だ。そして、株式の売買が増加するに従って、売買の仲介人が生まれた。株式を売りたい人と買いたい人を繋げる人だ。さらにこれらが発展したものが「証券取引所」だ。このように、特産品を受け取る権利が紙に置き換わったことで、格段に流通性が増し、株式の「市場」が形成された。補足すると、2009年より上場企業は株式が電子化されており、流通性が一層増している。驚くべきことは、つい最近まで株式を購入すると紙の株券を受領することとなっていたことだ。

以上のように株式会社の所有権は株式を有することで、どれくらい保有しているかは株式の保有割合により決定する。つまり、会社の持ち主は、社長でも、従業員でもなく、株主なのだ(法的には)。

資本とはなにか?

さて、話は変わるが、冒頭に説明した資本とはなにかを確認しよう。資本とは「商売や事業に必要な資金」をいう。いわゆる、元手というやつだ。

返済が必要な資本

みなさんの中で会計に明るい方は、資本=資本金、つまり、返済不要の資金と理解しているかもしれないが、ここでいう資本はそうではない。先ほどの例を会社側から見ると、船の航海が失敗した場合でも、株式会社は出資を受けた金額を返済する必要はない。しかし、仮に船を造るにあたって、銀行からお金を借りていたらどうだろうか。航海の成否に関わらず、借りたお金は返さなければならない。借りたお金であっても、商売や事業に必要な資金であるので「資本」となる。そして、株式のように返済不要の資本を「自己資本」、借入れのように返済が必要な資本を「他人資本」と呼ぶ。そして、出資者側からみると、自己資本の場合は、事業の成果(これを配当という)から、他人資本の場合は、元本と利子によってリターンを得るのだ。

自己資本と他人資本の関係

今までの話をまとめると図のようになる。

ご理解頂けただろうが、ここで重要なことは、株式とは資本に含まれる一つの分類ということだ。そして、会社所有権や返済義務などのフレームワークでみたとき、自己資本と他人資本は大きく異なる。株式会社は状況に応じて、どちらの資本によって事業に必要な資金を調達するか、その都度選択する。この意思決定プロセスについては、別の機会で紹介したい。

新しい形の自己資本

株式市場の発達については、すでに説明した通りだが、昨今の企業の資金調達の方法はますます多様化している。例えば、仮想通貨のニュースが新聞誌面等を賑わせているが、仮想通貨を利用する資金調達方法がイニシャル・コイン・オファリング(以下、ICO)だ。

ICOの特性

ICOは、返済不要な資金調達方法のため、「自己資本」に大別されると考えられる。しかし、内容は自己資本と他人資本の折衷のような位置付けだ。ICOでは、出資者に対して、デジタル権利証(トークンと呼ばれる)が発行される。その権利証には、会社の所有権もなければ、配当や利子の受け取る権利もない。出資者は事業の成功に伴う、トークンの値上がり後、対応する仮想通貨の取引所でトークンを売買することでリターンを得る。場合によっては、商品の購買権利やクーポン等が発行される場合もある。まとめると以下の通りだ。

ICOを代表とした新しい資金調達方法は、今後一層増えていくだろう。どのような資金調達方法であっても、会社が返済義務を負うか否かで他人資本か自己資本に分類することができる(少なくとも会計的には)。

資本の調達方法の整理

今回の内容をまとめると以下の通りだ。
①株式(自己資本)は投資のリスクを分散する仕組み
②株式(自己資本)は資本の中の1つの分類
③資本には、返済が必要な他人資本もある
④資本の調達方法は、ICOなど一層多様化している
⑤そのような調達方法であっても、フレームワークで整理することが可能
これらをもって、会社についての理解を深める一助となってほしい。

ECRS(イクルス)とは?解説と例|業務改善・効率化のフレームワーク
ECRS(イクルス)とは?解説と例|業務改善・効率化のフレームワーク 1024 683 Biz Tips Collection

「業務量が多い」、「人員が足りない」などの時に役立つ、簡単に覚えられるフレームワークがECRS(イクルス)の原則だ。プロセスの改善でも、個人的な日々の業務の効率化でも、この原則を頭に入れておくと、思いつきで実行するよりも効果的だ。

ECRSは、Elimate(排除)、Combine(統合)、Rearrange(再編成)、Simplify(シンプル化)

ECRSは、業務効率化の4つの視点を、以下の順番で検討する考えだ。4つの視点の頭文字を取って、ECRSと呼ばれている。元々は生産工程を効率化するために使われることが多かったが、日々の業務でも活用可能だ。

Elimate(排除) ⇒ Combine(統合) ⇒ Rearrange(再編成・入替) ⇒ Simplify(シンプル化)

1つずつ見ていこう。

Eliminate(排除):業務をなくせないか?

始めに検討するのは、業務をそもそも排除できないかだ。生産における不要な工程や、オフィスにおける無駄な会議がなくなれば、業務は効率化する。とりあえずやめてみる、というのも手だ。
この会議は必要か?この研修は必要か?この資料は必要か?などと、まず排除の可能性を問うのが、ECRSのスタートだ。
ポイントは、Why(何のためにやっているか)と、What(何をしているのか≒目的に合ったことをしているのか)を意識することだ。

Combine(統合):業務をまとめられないか?

なくせない業務について次に検討するのは、他の業務とまとめられないかだ。業務はまとめてしまえば、準備や連絡などの関連するやりとりが減り、効率化できる。
・メンバーごとに別々に実施していた会議を1つにまとめる
・別々に実施してた、新人研修とPCセットアップを同じ時間に実施する
・複数あった報告資料を1つのフォーマットにまとめる
・似てる機能の部署を、1つの部署にまとめる
・商品をまとめて配送する

Rearrange(再編成・入替):業務の順序や場所などを入れ替えられないか?

消したりまとめたりできないのであれば、順序などを入れ替えることで効率化できないか考えよう。ECRSのRは、作業の順番の入れ替えだけと思われていることも多いが、ここでいう再編成は、業務の順序、リソース、場所、担当者、などの入れ替えも含む。
・営業を近いエリアの顧客を担当するように入れ替えて、移動時間を減らす
・会議の後に、同じメンバーの別会議を設定することで、人の移動や席の準備などの手間を減らす
・報告業務を2日前倒しにすることで、上長が次のステップにすぐに進めるようにする
・資料作成は、会議の後にする

CombineとRearrangeで意識するのは、When(いつやるのか)、Where(どこでやるのか)、Who(誰がやるのか)だ。

Simplify(シンプル化):業務自体を簡素化できないか?

最後に検討するのが、業務自体をよりシンプルにできないかだ。
・会議のアジェンダを減らす
・報告書の項目を減らす
・かかわる人を減らす
Simplifyは見方によっては、ある業務を更に細分化して、それぞれに対してまたEに戻って検討する、とも言えるかもしれない。
意識するのは、How(業務がどのように実施されているか、どれくらい実施されているか)だ。

ECRSで重要なのは、検討する順番

ECRSは、業務効率化における4つの視点を教えてくれるが、最も重要なのがその順番だ。ECRSの順番は、効果が大きいもの順になっている。業務の排除(E)がもちろん最も効果が大きい。次に業務をまとめるのが効果が大きい(C)、といったようにだ。

ECRSを意識しないと、Sの視点ばかりで業務改善を実施してしまう恐れもある。どんなにSの視点で業務を効率化しても、そもそもその業務が排除可能だったら、その努力は効果的でない。

また、Eで排除可能と結論が出れば、CRSは検討する必要がない。一方、C以降は、例えばCで統合可能と結論が出ても、その後RやSを検討してもOKだ。

ECRSを意識して業務を効率化

ECRSは簡単に覚えられるので、業務を効率化する時は、念頭にいれておくといい。
まとめると、ECRSは以下の4つの視点をこの順番で検討する。
Eliminate(排除):業務をなくせないか?

Combine(統合):業務をまとめられないか?

Rearrange(再編成・入替):業務の順序や場所などを入れ替えられないか?

Simplify(シンプル化):業務自体を簡素化できないか?

財務会計と税務会計の相違点【図解】|例説!ビジネス用語の違い
財務会計と税務会計の相違点【図解】|例説!ビジネス用語の違い 1024 683 Biz Tips Collection

ビジネスパーソンなら必ず仕事上業務中にぶつかる、会計や、税務という単語。自分の旅費・宿泊費の精算や交際費使用の際に耳にすることが多いのではないか。「なぜ?」「どういう意味?」と感じても、会社のルール上で決まっています、などと経理の人間には、お役所対応されてしまうこともある。今回は、会計と税務はどのような違いがあるのかを理解してもらいたい。

会計とはなにか?

まずは、会計から確認する。会計は、報告する相手に応じて「財務会計」と「管理会計」に分かれるが、その差は別の機会に明らかにするとして、今回は一般論(特に税務との差)を解説していく。

会計の目的

会計の目的は、端的に言うと、「企業の経営成績を定量的に報告する」ことだ。報告する相手は、財務会計なのか、管理会計なのかで変わってくるが、共通しているのは、企業活動を収益と費用に区分して、差し引いて計算した利益を報告することだ。経営成績=利益と考えるとイメージしやすいだろう。

例えば、400円で仕入れたものを、1,200円で販売し、そのために交際費(運搬費など)を100円支出した場合は、収益1,200円、費用400円+100円=500円として記録される。この場合、差し引き利益は700円と計算される。以上が、会計の報告内容だ。また、報告形式は、様々な企業や部門がある中で、比較しやすいように財務諸表(損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)などの総称)という画一的なフォーマットにより「報告」される。会計基準という一定のルールにより同一の取引には同一の報告が規定されているので、他社同士でも比較しやすくなる。このルールが会計を世界に広く発展させた特徴の一つだろう。

 

税務とはなにか

税務は特に企業活動で関連する税法律があり、それにより報告内容が規定される。基本的には法人税法と消費税法だ。今回は会計と同様にまずは税務の目的から確認する。

税務の目的

税務の目的は、「企業の必要納税額を報告する」ことだ。報告する相手は税務署(国)となる。報告内容は、納税額の計算結果だ。納税額は、課税所得から計算される。この課税所得は、会計における利益とは違い、益金から損金(会計では利益=収益-費用であったため違う)を差し引くことで求められる。

例えば、400円(消費税)で仕入れたものを、1,200円で販売し、そのために交際費(運搬費など)を100円支出した場合は、益金1,200円、損金400円+50円=450円として記録される。課税所得が750円のため、750円に対して法人税などの税率を乗じることで必要な納税額が計算されることになる。そして、報告形式は税法上規定された税務申告書だ。画一的なフォーマットにより税務署に対して納税額を報告している。

鋭い方はコレまでの説明で気づいただろう。会計と税務の違いでキーとなるのは、収益と費用と、益金と損金の名称が異なる点だ。名称の差があることに違和感を感じることだろう。名称の差があることと同様に例であげた費用と損金に金額の差があり、それにより経営成績(収益)と納税額(課税所得)といった報告内容が異なってきている。会計と税務は報告する目的が異なり、報告形式を規定するルールが違うので報告内容に差が出てくるのだ。

会計と税務、それぞれにおける報告作成者の気持ち(思惑)

みなさんは自分の年収を少し多め(よく見られたい)に言ったり、一方で税金が高いと思ったことがあるはずである。企業における報告作成者も実は同じ気持ちを持っており、報告を作成する際にその思惑が変わってくる。ここではその思惑について述べたいと思う。

会計の思惑とチェック体制

会計の作成者は企業またはその企業の財務部門となる。作成者は「報告」をする一方で、報告相手から評価されることになる。例えば、部門の場合は、社内人事評価や、賞与月数決定の材料として使用されるだろう。そして、評価対象となる以上、作成者には利害関係が生まれる。すなわち、会計には報告内容を「良く」見せたいという思惑があるのだ。この思惑に対して、外部の目から信頼性を担保しているのが、監査法人の会計監査だ。

税務の思惑とチェック体制

税務の作成主体は企業となる。作成主体は、必要な納税額を税務署に報告し納税額を納める。自分の報告した内容により自身の支払う税金の大小が決まる。税務には報告内容を「悪く」見せたいという思惑があるのだ。この思惑に対して、外部の目から信頼性を担保しているのが、国税局(または国税庁)による税務調査だ。報告作成者(企業)が嘘の報告をしている可能性をがあるので、税務署はこの納税額が本当に正しいのかを評価することになる。

会計と税務の共通点と違い

さて、会計と税務の報告と、その思惑やチェック体制をまとめると以下のようになる。

ここで、理解をしていただきたいのが、会計と税務は利益、課税所得を計算するという意味では、かなり近いことをしているが、その思惑は全くの逆ということ。そして、チェックする外部の目も別の組織が行っているということだ。

会計と税務の違いって?

これまで解説してきたとおり、チェック体制が異なっている関係で会計と税務のルール作りは別の組織体で行っている。会計であれば会計基準というルールを、公益団体法人である財務会計基準機構が作成しており、税務であれば、国税庁により各種税法が作成している。ここで重要なのは、設定主体の思惑もそれぞれということだ。例えば、会計のルールであれば、企業は「良く」見せたいと考えているので、費用が過少に計算されないようにルール作りがされている。一方で、税務のルールであれば、企業は「悪く」見せたいと考えているので、損金が過大に計算されないようにルール作りがされている。会計と税務の差は報告ルールとそれにより発生する思惑にある。

会計と税務は二重帳簿なの?

では、会計と税務が全く別ものかというとそうではない。企業が会計と税務で全く別の計算をしていたとしたら、記録や報告にかかる事務手続きは2倍になってしまう。企業内の会計・税務の報告書作成ルールは、通常は会計、税務の双方の規定を踏まえて、どちらの規定にも抵触しないように定められている。例えば、税務上の規定の方が厳しい部分(交際費や寄附金などが該当する)には、税務よりの会社規定を設定するといった具合だ。読者たちが、経理部門からあるときは会計、またあるときは税務という単語によって説明を聞くことがあるのはそのためだ。

会計と税務は思惑が違う

最後に会計と税務の違いをおさらいすると以下の通りだ。
①会計は「良く」見せたい、税務は「悪く」見せたい
②会計は収益-費用=利益、税務は益金-損金=課税所得
③会計は監査法人による会計監査によりチェックされ、税務は国税局による税務調査でチェックされる。
④それぞれのルールに抵触しないよう、会社独自のルールを設定している
これらをもって、会社についての一層の理解を深めてほしい。

問題解決の幅が広がる!RACIの4つだけでないRACI図の発展版
問題解決の幅が広がる!RACIの4つだけでないRACI図の発展版 1024 646 Biz Tips Collection

プロジェクトの責任分担管理表であるRACI。Responsible、Accountable、Consulted、Informedの4つの役割が基本だが、実はこれに役割を追加した発展版もいくつかある。必ず必要な役割ではないだろうが、発展版も把握しておくことで、プロジェクトの状況に応じて提示できる解決策の幅が広がるだろう。まだ、RACIの基本を学習していない方はこちらを先に参照してほしい。(→RACIチャートの意味とは?プロジェクトの責任分担を見える化する!

Responsibleを分解したRASCI

通常のRACI図では、実行責任者であるResponsibleは複数人いても問題ない。しかし、あまりに多いと、タスクの実行・完了の最終責任が誰にあるのか不明確になるという弊害もある。そんな時に、あくまで実行責任者を一人に特定し、その他の実行者をSupportとして明確に区別したのが、RASCIだ。従来のResponsibleを2分割したものとも言える。

Responsible(実行責任者):タスクの実行・完了に責任を負う者。
Support(サポート):Responsible配下に当てられた者。Responsibleと共に実際にタスクを実行する。(実際にタスクを実行するため、Consultedとは違う。)

担当者だけでなく無関係者も明確化したCAIRO(RACIO)

通常のRACI図に、Oを追加したものだ。

Omitted、もしくはOut of Loop(部外者):タスクに関係ない者。

通常のRACIでは、タスクに関与しないリソースを特に役割がなく基本的には部外者であると明確化することも有効な場合もある。(Oの人間は、特定の会議に呼ばないという規則を作って、リソースの効率化するなど)

検証者と承認者を追加したRACI-VS

RACIに新たな二つの役割を追加したものだ。

Verifies(検証者):成果物が当初の基準を満たしているか検証する者。
Signs off(承認者):Verifiesの検証結果を承認する者。承認し、次の工程への受け渡しに責任を持つ。

Verifiesは、Accountableが設定した基準などを、Responsibleが達成しているかを検証する役割だ。第三者的に検証する場合もある。
Signs offは、Accountableと同じ人物であることもあるが、クライアントなどAccountableとは別になることもある。Signs offが多すぎると、プロジェクトのスピードが落ちる。

いずれも成果物の結果に責任を持つ者(Accountable)と、その結果の判断をする者を明確に分けたい時に有効だろう。

バリエーションを知ることで、引き出しが増える。

RACI図さえ知っていれば、基本的な対応は可能だ。しかし、RACI一つしか知らないと、それが絶対だと思ってしまいフレームワークに囚われた状態になってしまう。派生系を知っていれば、プロジェクトの状況に合わせて柔軟に活用することもできる。また、フレームワークは本来作るものだ。状況に応じては、その状況にあったオリジナルな役割を追加するという柔軟性があってもよいだろう。

 

RACIチャートの意味とは?プロジェクトの責任分担を見える化する!
RACIチャートの意味とは?プロジェクトの責任分担を見える化する! 1024 683 Biz Tips Collection

RACI(レイシー)チャートとは、プロジェクトにおいて、プロジェクトメンバーの役割を明確にするためのフレームワークだ。コンサルタントがプロジェクトマネージメントでよく使用したりする。ステークホルダー(関係者や組織)が多い時に特に有効なツールとして利用できる。そんなRACIチャートがどんなフレームワークで、どのような場面で利用されるのか、解説する。

RACIチャートとは、役割や責任を定義するフレームワーク

「この件は誰がボールをもっているんだ?」
「渡辺さんが進めてたんじゃなかったの?」
それぞれの役割が明確でないと、このように、誰も進めていないタスクが発生したり、ボールの押し付け合いが発生したりする。
このような事態が発生しないようにプロジェクト、特にステークホルダーが多いプロジェクトでは、役割の明確化が重要だ。
RACIチャートは、そんな時のために使用されるフレームワークの一つだ。

RACIチャートは一言で言えば責任分担表だ。
RACIチャートでは参加者を以下の4つに分類する。
参加者は、人の場合もあれば、複数の組織が関わる場合は、組織単位の場合もある。

Responsible(実行責任者):タスクを実際に実行することに責任を持つ人。複数いることもある。
Accountable(説明責任者):タスクの結果に最終責任を持つ人。成果物やタスクの遂行に対して上層部などへ説明責任を持つ。タスクの承認者ともいえる。1人にすべきである。
Consulted(協業先):タスクに対して相談を受ける人。実行や成果に明確な責任は持たないが、必要な専門知識などをもっており必要に応じてサポートする。
Informed(報告先):タスクの進捗・完了や成果物について、報告を受ける人。

Consulted(協業先)とInformed(報告先)は、必ずしも必要でないが、Responsible(実行責任者)とAccountable(説明責任者)は必須となる。

RACIチャートを作る際、しっかりこの4つの定義を理解している必要がある。いざ作り始めて、作りづらさを感じる時は、ここの定義がしっかりわかっていないもしくは明確に決定されていない場合が多い。以下がよくごっちゃにされてしまう役割の違いだ。

あいまいにされやすいResponsibleとAccountableの違い

上司と部下で例えるとわかりやすい。部下はタスクを実際に実行するが、その結果を更に上の部長に報告するのはその部下の上司だ。部下がやらかしたら、上司が責任をとらされる。だから、上司は部下のタスク内容を管理や承認する。この場合の部下がResponsibleで上司がAccountableだ。

実際の現場でタスクの最終責任者が実際に実行する場合、つまりResponsibleとAccountableが同じ人物の場合も当然ある。

わかりにくいConsultedとInformedの違い

ConsultedとInformedもまた、区別がつかず混同されることが多い二つだ。
わかりやすい違いは2点。
・Consultedではコミュニケーションが双方向だが、Informedは一方通行の報告。
・Consultedでは主に動く前にコミュニケーション(相談)する。Informedでは主に動いた後にコミュニケーション(報告)する。
Consultedはどう進めるか困ったときに聞く人、Informedは進捗があった後に伝えておく人だ。

 RACIチャートの例

上記のRACIの各役割の定義を踏まえ、実際のRACI表(チャート)は例えば以下の通りになる。

縦軸に人(もしくは組織)、横軸にタスク、そして各マスに役割が記載されている。
見ての通り、ResponsibleとAccountableは同じ場合もあれば、ConsultedとInformedはない場合が多い。

多数のステークホルダーで責任分担の認識をしっかり共有することが重要

RACIチャートが最も効果を発揮するのは、多数の参加者(ステークホルダー)がいる複雑なプロジェクトの場合だ。逆に、少人数のプロジェクトでは、わざわざRACIチャートを作らなくとも、各タスクの担当者を決めているレベルで十分回るケースが多い。複雑なプロジェクトでは、ボールがどこになるのか不明確にならないよう、RACI図を整理して公開しておくとよい。

逆にうまく行っていないプロジェクトで、現在のRACIチャートを書いて、役割が不明確なところを特定するという、問題解決的な使い方も可能だ。役割の不明確さだけでなく、AccountableとResponsibleの担当部署が遠すぎて、うまく連携できていない、という課題を特定できたケースも過去にあった。
ステークホルダーが多く、複雑なプロジェクトでは、RACIチャートを整理するのも手だ。

問題解決の幅が広がる!RACIの4つだけでないRACI図の発展版