財務会計と税務会計の相違点【図解】|例説!ビジネス用語の違い
財務会計と税務会計の相違点【図解】|例説!ビジネス用語の違い https://biz-tips-collection.com/wp/wp-content/uploads/2018/05/accounting_eyecatch-1024x683.jpg 1024 683 Biz Tips Collection https://biz-tips-collection.com/wp/wp-content/uploads/2018/05/accounting_eyecatch-1024x683.jpgビジネスパーソンなら必ず仕事上業務中にぶつかる、会計や、税務という単語。自分の旅費・宿泊費の精算や交際費使用の際に耳にすることが多いのではないか。「なぜ?」「どういう意味?」と感じても、会社のルール上で決まっています、などと経理の人間には、お役所対応されてしまうこともある。今回は、会計と税務はどのような違いがあるのかを理解してもらいたい。
会計とはなにか?
まずは、会計から確認する。会計は、報告する相手に応じて「財務会計」と「管理会計」に分かれるが、その差は別の機会に明らかにするとして、今回は一般論(特に税務との差)を解説していく。
会計の目的
会計の目的は、端的に言うと、「企業の経営成績を定量的に報告する」ことだ。報告する相手は、財務会計なのか、管理会計なのかで変わってくるが、共通しているのは、企業活動を収益と費用に区分して、差し引いて計算した利益を報告することだ。経営成績=利益と考えるとイメージしやすいだろう。
例えば、400円で仕入れたものを、1,200円で販売し、そのために交際費(運搬費など)を100円支出した場合は、収益1,200円、費用400円+100円=500円として記録される。この場合、差し引き利益は700円と計算される。以上が、会計の報告内容だ。また、報告形式は、様々な企業や部門がある中で、比較しやすいように財務諸表(損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)などの総称)という画一的なフォーマットにより「報告」される。会計基準という一定のルールにより同一の取引には同一の報告が規定されているので、他社同士でも比較しやすくなる。このルールが会計を世界に広く発展させた特徴の一つだろう。
税務とはなにか
税務は特に企業活動で関連する税法律があり、それにより報告内容が規定される。基本的には法人税法と消費税法だ。今回は会計と同様にまずは税務の目的から確認する。
税務の目的
税務の目的は、「企業の必要納税額を報告する」ことだ。報告する相手は税務署(国)となる。報告内容は、納税額の計算結果だ。納税額は、課税所得から計算される。この課税所得は、会計における利益とは違い、益金から損金(会計では利益=収益-費用であったため違う)を差し引くことで求められる。
例えば、400円(消費税)で仕入れたものを、1,200円で販売し、そのために交際費(運搬費など)を100円支出した場合は、益金1,200円、損金400円+50円=450円として記録される。課税所得が750円のため、750円に対して法人税などの税率を乗じることで必要な納税額が計算されることになる。そして、報告形式は税法上規定された税務申告書だ。画一的なフォーマットにより税務署に対して納税額を報告している。
鋭い方はコレまでの説明で気づいただろう。会計と税務の違いでキーとなるのは、収益と費用と、益金と損金の名称が異なる点だ。名称の差があることに違和感を感じることだろう。名称の差があることと同様に例であげた費用と損金に金額の差があり、それにより経営成績(収益)と納税額(課税所得)といった報告内容が異なってきている。会計と税務は報告する目的が異なり、報告形式を規定するルールが違うので報告内容に差が出てくるのだ。
会計と税務、それぞれにおける報告作成者の気持ち(思惑)
みなさんは自分の年収を少し多め(よく見られたい)に言ったり、一方で税金が高いと思ったことがあるはずである。企業における報告作成者も実は同じ気持ちを持っており、報告を作成する際にその思惑が変わってくる。ここではその思惑について述べたいと思う。
会計の思惑とチェック体制
会計の作成者は企業またはその企業の財務部門となる。作成者は「報告」をする一方で、報告相手から評価されることになる。例えば、部門の場合は、社内人事評価や、賞与月数決定の材料として使用されるだろう。そして、評価対象となる以上、作成者には利害関係が生まれる。すなわち、会計には報告内容を「良く」見せたいという思惑があるのだ。この思惑に対して、外部の目から信頼性を担保しているのが、監査法人の会計監査だ。
税務の思惑とチェック体制
税務の作成主体は企業となる。作成主体は、必要な納税額を税務署に報告し納税額を納める。自分の報告した内容により自身の支払う税金の大小が決まる。税務には報告内容を「悪く」見せたいという思惑があるのだ。この思惑に対して、外部の目から信頼性を担保しているのが、国税局(または国税庁)による税務調査だ。報告作成者(企業)が嘘の報告をしている可能性をがあるので、税務署はこの納税額が本当に正しいのかを評価することになる。
会計と税務の共通点と違い
さて、会計と税務の報告と、その思惑やチェック体制をまとめると以下のようになる。
ここで、理解をしていただきたいのが、会計と税務は利益、課税所得を計算するという意味では、かなり近いことをしているが、その思惑は全くの逆ということ。そして、チェックする外部の目も別の組織が行っているということだ。
会計と税務の違いって?
これまで解説してきたとおり、チェック体制が異なっている関係で会計と税務のルール作りは別の組織体で行っている。会計であれば会計基準というルールを、公益団体法人である財務会計基準機構が作成しており、税務であれば、国税庁により各種税法が作成している。ここで重要なのは、設定主体の思惑もそれぞれということだ。例えば、会計のルールであれば、企業は「良く」見せたいと考えているので、費用が過少に計算されないようにルール作りがされている。一方で、税務のルールであれば、企業は「悪く」見せたいと考えているので、損金が過大に計算されないようにルール作りがされている。会計と税務の差は報告ルールとそれにより発生する思惑にある。
会計と税務は二重帳簿なの?
では、会計と税務が全く別ものかというとそうではない。企業が会計と税務で全く別の計算をしていたとしたら、記録や報告にかかる事務手続きは2倍になってしまう。企業内の会計・税務の報告書作成ルールは、通常は会計、税務の双方の規定を踏まえて、どちらの規定にも抵触しないように定められている。例えば、税務上の規定の方が厳しい部分(交際費や寄附金などが該当する)には、税務よりの会社規定を設定するといった具合だ。読者たちが、経理部門からあるときは会計、またあるときは税務という単語によって説明を聞くことがあるのはそのためだ。
会計と税務は思惑が違う
最後に会計と税務の違いをおさらいすると以下の通りだ。
①会計は「良く」見せたい、税務は「悪く」見せたい
②会計は収益-費用=利益、税務は益金-損金=課税所得
③会計は監査法人による会計監査によりチェックされ、税務は国税局による税務調査でチェックされる。
④それぞれのルールに抵触しないよう、会社独自のルールを設定している
これらをもって、会社についての一層の理解を深めてほしい。