論点思考

論点とは解決すべき課題 | 論点思考の 基本と2つの考え方
論点とは解決すべき課題 | 論点思考の 基本と2つの考え方 1024 700 Biz Tips Collection

論点をうまく設定できるかは、仕事ができるかどうかの1つの分かれ目だ。この能力は特に立場が上がれば上がる程重要となる。コンサルティングなど一部の業種であれば、常に意識するよう教育される場合もあるが、あまり意識されないことが実際多いのではないだろうか。そもそも論点とは何か、また論点思考とは何か、解説する。

論点とは、答えるべき問い=解決すべき課題のこと

論点とは、「答えるべき問い」のことだ。文字通りの意味であれば、「論じるべき点」だ。
一言で言うと、これを常に意識することが論点思考だ。今話していることは、本当に答えるべき問いなのか。このプロジェクトで次に答えるべき問いは何なのか。そういったことを考えるのが論点思考だ。

ビジネスシーンでは、この「答えるべき問い」にあたるのが「解決すべき課題」だ。課題の解決にいくら時間をかけようが、そもそも課題の設定が間違っていれば、意味がないか、少なくとも非効率になる。この論点設定の精度を上げるのが論点思考だ。

論点思考は、2つの能力に分けられる。
①大論点の設定と、②サブ論点の設定だ。
(実際、大論点も通常何かのサブ論点ではあるので、本質的には変わらないが。)

 

①大論点の設定 – 本当に解決すべき課題を特定する

有名な例なのでどこかで聞いたことがあるかもしれないが、以下を見てもらいたい。

AさんとBさんの前にケーキがある。どう分けたらいいだろうか。

よくある間違った答えは、正確に二等分する方法ばかり考えてしまうことだ。これは、論点を「いかに正確に切るか」に設定してしまっている。だが、本当にそれが本当に解決すべき課題だろうか。要は二人が納得すればいいのである。正確に切ることは納得のための手段でしかない。これに気づければ、論点を「以下に2人が納得できるよう分けるか」に設定して考えることができる。模範解答は「Aが切り分けて、Bが取るほうを選ぶ」だ。始めに論点設定を間違えるとこの答えは中々出ない。

こんなジョークもある。
アメリカのNASAは、100億ドルかけて、無重力空間でも使えるボールペンを開発した。一方、ロシアは鉛筆を使った。
これこそ論点思考のいい例だろう。NASAは、「ボールペンを無重力空間で使えない」という問題を解決しようとした。ロシアは、論点は「無重力空間でいかに筆記できるようにするか」だと理解した。
このとき論点思考をでききていたのはロシアの科学者であり、ロシアは100億ドルを浪費せずに済んだのだ。

この論点設定をする際、事象と原因で分けて考えるのも重要だ。例えば、Cさんが仕事でミスを起こすという問題が発生したとする。ひとまずCさんを叱ったり罰するなりして終わりの場合も多い。だが、本当にこれはCさんが100%悪いのだろうか。Cさんのミスはあくまで事象に過ぎず、同様のミスが他にも起こってないだろうか。こんな時、「ミスが起こる背景は何だろうか」と考えるべきだ。もしかしたら、業務過多になっているのが原因かもしれない。であれば解決すべき課題は、「いかに業務量を減らすか」かもしれない。

この適切な課題設定の能力は、ほとんどどんな仕事でも応用できるだろう。常に、本当に解決すべき課題は何か、意識することが大切だ。上司が課題設定してくれ、言われたことをやってればいい立場もあるが、立場が上がれば上がるほど、これを自身で考えなくてはならなくなる。

 

②サブ論点の設定 – 論点を分解する

さて、先ほどの大元の解決すべき課題を、大論点とする。これを更にサブ論点に分解するのも、重要な能力だ。いわゆる「論点整理」と呼ばれるものでもある。

例えば、ある会社として「○○国に進出すべきか」という大論点があったとしよう。そもそもこれは本当に検討すべきかと考えるのも論点思考だが、会社の状況から考えて正しい大論点だったとしよう。じゃあこの論点がわかったところで、すぐに答えが出せるだろうか。話がざっくりしすぎていて、何から手をつけたらいいかわからないだろう。

こんな時は、大論点を更にサブの論点に分解することが大切だ。「○○国に進出すべきか」という問いに答えを出すためには、どんな問いの答えがわかればいいか考えるのだ。

例えばの例は、「市場の成長が見込めるか」、「競合に勝つ見込みがあるか」、「自社に進出できるリソースがあるか」だ。これら3つのサブ論点に答えが出せれば、「○○国に進出すべきか」の答えが出せるだろう。このサブ論点を更にサブサブ論点に分けていってもよい。

この論点整理する能力が弱いと、せっかく大元の課題の設定が合っていても、適切に答えが出せないだろう。「○○国に進出すべきか」という例でいうと、「○○国は日本語ができる人がいるか」などとサブ論点を設定しても(商品によるが)全く意味はないし、逆に「競合に勝つ見込みがあるか」の視点がもれていると、進出した後に間違いだったことが判明するかもしれない。適切なサブ論点を設定するには、ロジカルシンキングで論理的に考える能力も重要だ。

 

論点思考で真に解決すべき課題を特定しよう!

論点思考ができれば、本当に大切な問題に意識を集中して結果を出すことができる。先ほどのCさんのミスの例で見ても、その原因を特定して解決しようという意識がなければ、永遠に同じようなミスをもぐら叩きする状態になってしまう。また、論点思考は問題解決の効率化にもなる。無限のリソースがあれば、全ての手を打つことができるが、そんなことはないので、優先順位が必要だ。適切な課題設定、適切なサブ論点を設定することで、優先的に手を打つべきことだけにリソースを集中できるのだ。

また、論点思考以外にもロジカルシンキングなど、様々な思考法がある。これらはごっちゃにされることが多い。論点思考と他の思考法の違いは、以下を確認して頂きたい。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違いは?思考法の整理

コンサルが使うリサーチテクニック!論点と仮説に基づく調査【応用編】
コンサルが使うリサーチテクニック!論点と仮説に基づく調査【応用編】 1024 575 Biz Tips Collection

経営コンサルタントは、調査業務を実施することが多い。そこで彼らが気をつけているのは、リサーチの設計だ。
何も考えずになんとなくインターネットで検索を始めてしまうことはないだろうか。スピードと成果が求められるコンサルタントは、まず最初にリサーチの設計をする事こそ重要だと意識している。今回は、そんなコンサルタントのリサーチテクニックを紹介する。

より基礎的なリサーチのコツに興味がある方は、以下も参照されたい。

<無駄に時間がかかりがちなリサーチの効率を上げる3つのコツ【基礎編】>

 

ストーリー(結論)を作ってから、調査する

調査をするからには、何か出したい結論があるはずだ。例えば、「自社の事業として、グルジアに進出すべきか」など。ここで、いきなり「グルジア 進出」「グルジア GDP」などと、いい情報がないか思いついたものから検索し始めるのは、よくある間違いだ。
今回の手法は、一言で言えば調査の結果を始めに作ってしまう方法だ。
役に立つのは、いわゆる論点思考と仮説思考だ。

①論点を整理する

論点とは、そのまま論じるべき点のこと。この場合、「何がわかれば、結論が出せるか」と考えればよい。
調査を始める前に、何が言えれば結論が出せるか(=何を調べるべきか)を整理するプロセスを実施すると効率が一気に上がる。
「自社の事業として、グルジアに進出すべきか」の例で言えば、何がわかれば結論を出せるだろうか。単純な例だが、「市場が魅力的」で「自社が勝てる」のであれば、進出すべきと結論できるのではないだろうか。「市場が魅力的か」と「自社が勝てるか」がこの例における調査すべき論点となる。

これら二つを大論点とした場合、更にこれらを小さな論点に整理することが可能だ。大論点「市場が魅力的か」に対しては、「商材の市場が存在」し、「市場の拡大見込み」があり、「国として安定」していれば、魅力的だと言えるのではないだろうか。これらが小論点となる。
まとめると、以下の通りだ。

このように、結論を出すべき内容を、調査しやすい単位まで分解していくのが、いわゆる論点整理だ。「グルジアに進出すべきか」で調査し始めるよりも、「商材の市場が存在するか」の方が何を調査すべきか明確で調べやすいのではないだろうか。
この例は単純な例だが、実際は、大論点⇒中論点⇒小論点、などのようにより深く分解していくことも多い。

②仮説でストーリーを作る

次に重要なのは、調査の前に先に仮説で最終的なストーリーを作ってしまうことだ。
先ほど整理した論点に合わせて仮説は作成する。

例えば、「自社が勝てるか」の小論点である「チャネルを確立できるか」については、「現地企業との提携で可能」という仮説が立てられる。
ここで立てる仮説は、調べて違ったら直せばいいので、できるだけ具体的でよい。仮説として、「チャネルを確立できる」よりも、「現地企業との提携で可能」の方が、調査はしやすい。もしより具体的なイメージがあれば、「業界中下位の企業であれば提携の見込みあり」などでもよい。

この論点整理と仮説作りは、実際同時並行で行うことも多い。しかし、初めての場合は、順番にやった方がやりやすいだろう。

全ての論点を仮説で埋めると、1つのストーリーになる。
これを埋めてみると、以下の通りだ。最終メッセージも仮説としての言い方に変更した。

このストーリーが、調査する前に作った、仮の調査結果だ。
これによりゴールが明確になるので、結論が正しくても間違っていても、調査はしやすくなる。

 

③調査票の作成

最後に、ここまで作った論点と仮説の表を、調査票にする。
よくやるのは、調査方法の列と、調査結果の列を追加することだ。実際はエクセルなどで管理するとよいだろう。

これで今回の調査でしなければならないことが明確になった。調査は簡単な穴埋め作業になる。

④調査をしながらストーリーを更新

実際の調査では、クリティカルな仮説(これが間違っていれば、全体のストーリーが変わる)ものから順番に調査してくのがいいだろう。
今の例で言えば、「現地企業との提供で可能」の仮説が間違っていても、チャネル開拓には他の方法があるかもしれないので、全体のストーリーに大きな影響がない。しかし「商材の市場規模が大きい」が間違っており、グルジアでは全くその商材の市場が存在しなかったら、そもそもの全体ストーリーが大きく変わる。

仮説が間違っていた場合は、また全体のストーリーを組みなおす。これを繰り返していく方が、当てもなく調査するよりも何倍も効率よく結論を出すことができる。

 

論点と仮説に基づく調査の利点

この手法は、調査が効率的になる以外にも利点がある。
まず、最終的な成果物が明確になる。
ここで作ったものは、そのまま最後に提出するパワーポイントの目次にすることが可能だ。
次にチーム全員にゴールを見える化できる点だ。
調査のタスクをチームで分けることができ、チームの目指すゴールを明確化できる。調査すべき内容を分解したことにより、業務を小さなタスク単位で割り振ることが可能になるのだ。

ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違いは?思考法の整理
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違いは?思考法の整理 1024 681 Biz Tips Collection

ビジネスでは様々な思考法が出てくるが、その違いは曖昧で意外と把握されていない場合も多い。手法を使いこなすには、まずはその定義をしっかり把握することが重要だ。論理思考、仮説思考、論点思考、クリティカルシンキングなど、いわゆるコンセプチュアルスキル(物事の考え方のスキル)の違いについて、整理する。

ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違いだけ知りたい方は、記事の後半にスクロールしてもらえればと思う。

定義が曖昧にされがちな思考スキルの整理


結論から話すと、上記の画像が、主要な思考スキル(コンセプチュアルスキル)の整理となる。これらは、全て組み合わせて使うことが重要だ。順を追って説明していこう。

基本的に、物事の主張・考えというものは、ピラミッドストラクチャーであらわすことができる。
簡単に説明すると、思考や主張を構造的にまとめる技術だ。キーメッセージ→サブメッセージ→根拠といったように構造的に整理する。上記の四角はそれぞれが、論点やメッセージに当たる。

上記の画像では、ピラミッドストラクチャーに対する位置で、各思考スキルを表現している。これに沿って、各思考スキルを説明していこう。

論点思考は、「解くべき課題」を見つけ出す思考法

論点とは、そのまま「論じるべき点」のこと。ビジネスシーンでは、基本的に「論じるべき点→解くべき課題」と捉えて置けばいいだろう。
ビジネスでも、そうでなくても、課題の解決にいくら時間をかけようが、そもそも課題の設定が間違っていれば、意味がないか、少なくとも非効率になる。課題設定の際に設定する課題の精度を高めてくれる思考法が論点思考だ。
例えば主要な論点として、「○○国に進出すべきか」が上がったとする。これが論点として適切かは、会社や事業の状況による。
では、「○○国に進出すべきか」という論点に答えるためには、どんな「サブ論点」に答える必要があるかをうまく設定できるかも、論点思考のスキルである。先ほどの画像で例えると、以下の通りだ。

ここで論点思考のスキルが低いと、競合の視点が欠けてしまったり、あまりに細かく重要でない点を設定してしまう。
説明を簡潔にするために省いたが、サブサブ論点まで設定してもよい。

詳しく知りたい方は、以下の記事も参照頂きたい。
論点とは解決すべき課題 | 論点思考の 基本と2つの考え方

 

仮説思考は、各論点に対して、精度の高い「仮の答え」を設定する思考法

仮説思考は、名前の通り、仮説を立てる能力だ。ビジネスでは、課題の設定も重要だが、その課題に対して、仮説(仮の答え)を持つことも同じくらい重要だ。仮説は、課題解決を効率化する。仮説次第では、そもそもある論点を論じる必要がないという判断もできるので、無駄に議論をする必要がなくなる。ただし、間違った仮説のまま、実行してしまうと、ビジネスでは大きな痛手を負うこともあるのである程度の仮説の検証は必須だ。

先ほどの例えでいうと、主要な論点である「○○国に進出すべきか」という論点に対しては、それが論点として上がる時点で、恐らく「○○国に進出すべき」だろうという仮説があるのだろう。また、それを検証するためにも、サブ論点以降もそれぞれに対して、仮説でメッセージを埋めることができる。例えば以下の通りだ。

論点思考も仮説思考も、課題解決の質とスピードを上げるための思考スキルだ。

 

ロジカルシンキングで、主張ー根拠を論理的に構造化

ロジカルシンキング(論理思考)は、論理的に考え、整理する思考法のことだ。
論点ーサブ論点、メッセージー根拠が、論理的に繋がっていなければ、説得力はない。
先ほどの画像でいうと、上下の項目がしっかり論理的に展開しているかだ。

上から下には、「なぜそう言えるか」、下から上には「だから何か」が、論理的に繋がっていることである。
的確な論点設定の裏には、もちろんこの論理思考がある。また、どんなに仮説が正しかろうが、そもそも論理的に関係ないことであれば、全く意味はない。

 

クリティカルシンキングは、本当にそうなのか「疑う」思考法

クリティカルシンキングは、日本語では「批判的思考」と訳される。本当にそうなのか、批判的に考える思考法のことだ。

その論点設定で正しいのか。そのサブ論点の枠組みで正しいのか。仮説は精度が高いか。論理的になっているか。こういったことをチェックする機能とも言えるだろう。
それには、よくある間違いを把握するも重要だ。知っているだけで気づきやすくなるからだ。
例えば、「軽率な一般化」というよくある論理展開の間違いを知っていたとする。たまたま見聞きした情報などから、みんながそうだと勘違いする論理展開のことなのだが、「○○国に進出すべきである。なぜなら××社が進出してうまく言ったからだ。」といった論理にちょっと待てと言えるようになるだろう。

クリティカルシンキングができれば、人の話も鵜呑みしなくてすむ。へりくつを通そうとされても、どこが例えば論理的に間違っているか、すぐに指摘できる。

クリティカルシンキングを使いこなすには、ここまで説明した基本的な思考法(論点思考、仮説思考、論理思考)を把握している必要がある。

ここまで、読まれた読者はすでに理解されているかと思うが、クリティカルシンキングを扱った著書の多くは、同時にロジカルシンキングの概念を語っていることが多い。クリティカルシンキングの前提にロジカルシンキングがあるため、ロジカルシンキングの説明なしにはコンセプトを伝えきることはできないのた。ここに多くの方が混乱する原因があったといえよう。

 

使いこなすには、各思考法をどんなものか正確に把握することが重要!

まとめると、論点思考は、課題設定のスキル。仮説思考は、課題への答えの仮説を設定するスキル。ロジカルシンキングは、それらを論理的にまとめるスキル。クリティカルシンキングは、その一連の思考法が本当にそうかチェックするスキル。と言えるだろう。

定義を把握できていないものは、うまく使えているかを自分で把握できない。使いこなすには、曖昧にされがちな思考スキルがそれぞれどんなものなのか、しっかり理解することが重要だ。
これら思考スキルの基本がわかってれば、それだけで周りからぬきんでることも可能だろう。