意図的な論点すり替え!「燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
意図的な論点すり替え!「燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ https://biz-tips-collection.com/wp/wp-content/uploads/2018/11/herring-1024x725.jpg 1024 725 Biz Tips Collection https://biz-tips-collection.com/wp/wp-content/uploads/2018/11/herring-1024x725.jpg世の中は詭弁に溢れている。中には、それらしい論理ですらなく、うまく話や論点をそらそうとしてくる人もいる。そのためのテクニックが「燻製ニシンの虚偽」(Red Herring)と呼ばれる技だ。詭弁は知ることで対策することができる。今回はこの「燻製ニシンの虚偽」について解説する。
「レッドへリング」は、重要な論点から相手の注意をそらす技法
Red Herringの直訳は、赤いニシンだ。ニシンの匂いに気を取られて、本来の獲物を忘れてしまう猟犬の話が、語源になっている。
このニシンのように、本来の重要な論点とは外れているが、相手が食いつきそうな話題などを使って、論点をすりかえるテクニックが「燻製ニシンの虚偽」だ。
うまくいけば、本来の話題を忘れさせることができるし、脱線した話を使って議論に勝ったように周囲に見せることも可能だ。
話をそらせる方法はたくさんある。
実際、これまで紹介した詭弁のいくつかも、定義によっては燻製ニシンの虚偽の1つに分類できるだろう。
そのため全てを網羅することはできないが、いくつかのバリエーションを紹介しよう。
①無関係の話を持ち出す
一見関係しそうで、どうでもいい話を始めるのが、最も分かりやすい燻製ニシンの虚偽だ。
いくつか例を見てみよう。
A「Cさんは、仕事を頑張ってくれているし、成果を上げるだろう。リーダーに選出されるにふさわしい」
B「それはどうだろうか。Cさんの女性関係はルーズだからねぇ」
Cさんの女性関係は、仕事の成果を上げるかどうかとは、通常無関係だ。
しかし、女性関係は話題としてバズりやすいので議論をうまく脱線させてしまうかもしれない。
A「遅刻はやめましょう」
B「君だって先月遅刻したじゃないか」
A「いや、あれはこれこれこんな理由があって、、」
いわゆる「お前もな」のような議論も、論点をそらす技の1つだ。Aさんも遅刻したかどうかと、Bさんの遅刻の是非は、論理的に全く関係ない。しかし上の例では、Aさんはそのことをうまく指摘できずに、自分の遅刻の言い訳に話をうまくそらされてしまった。
A「A国が伸びるから、進出すべきだ」
B「みんな、Aさんは上司にゴマすってばかりで自分の意見なんて何もないよ。だから言ってることをまともに受け取る必要はない」
話し手の人格攻撃もこの一種だ。
本人の意見と本人の人間性は本来無関係だが、論点を本人の人間性の話に変えてしまうのは反対派の常套手段だ。
②そもそもの議論にすりかえる
A「浮気をするなんて倫理的に間違っている。」
B「でも、そもそも倫理とは何なんだい?」
A「それは皆が従うべき規範だろう。」
B「誰がそんなもの決めたんだ?自然界に倫理なんてあるのかい?」
上記の例では、浮気をしたことに対する是非の話をしていたはずだが、Aは途中でBにひっかかり、倫理とはの話になってしまっている。
意図的にとぼける技もある。
「ちょっと何言ってるかわからない」
「そもそも論点が不明確だ。ちゃんと話をまとめてくれ」
「よくわからないな。その話は今すべきなのか?」
このようなテクニックは、本題の議論をうまく避けて、そもそもの論点をどこにおくべきか、今この話をすべきかどうか、を論点に変えてしまうことができる。また、相手を馬鹿っぽく見せて、議論で負けたように見せることも可能だ。
③どうでもいい詳細に食いつく
そもそもの議論にすり返ることの逆パターンで、どうでもいい詳細な話にくいついてしまうテクニックもある。
重箱の隅をつついたり揚げ足をとったりする手法だ。
A「・・・ということで、A事業を推進するべきだと思います」
B「ちょっと待ってくれ、3ページのアンケートは母数が少なすぎないか?統計的にはこのサンプル数では本当にそうと言えるのだろうか。そもそもの属性の偏りも確認しているのか?」
この3ページのアンケートが、全ての議論の土台となるものであったら、このツッコミは正しいかもしれない。しかし、全体の議論に大きく影響しないものであったら、そこの是非ばかり議論することは本筋の妥当性とあまり関係ない。
A「ツールを見直すべきだ。使いづらすぎてみんなの効率性が下がっている。これだったら、全部手書きの方がマシだ。」
B「おいみんな、Aさんは何でも手書きがいいというアナログな人だからな。そんな古い考えの人の意見なんて真に受ける必要はないぞ。」
このように、ちょっとした例え話などに食いつく形もある。
まとめ
このように、燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)は、重要な論点から相手の注意をそらす技法だ。まともな議論を避けて相手を倒そうとするずるい戦術だ。
対策は、常に今は何の議題なのか意識することだ。そうすれば、本筋から外れていればしっかりそれを指摘して議論を戻すことができる。
ちなみに、共通してよく見られる1つのテクニックは、逆質問だ。論点をずらした逆質問をされた時は、それが本題とずれていることを指摘しよう。
「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
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