論理の間違いシリーズ

意図的な論点すり替え!「燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
意図的な論点すり替え!「燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 725 Biz Tips Collection

世の中は詭弁に溢れている。中には、それらしい論理ですらなく、うまく話や論点をそらそうとしてくる人もいる。そのためのテクニックが「燻製ニシンの虚偽」(Red Herring)と呼ばれる技だ。詭弁は知ることで対策することができる。今回はこの「燻製ニシンの虚偽」について解説する。

 

「レッドへリング」は、重要な論点から相手の注意をそらす技法

Red Herringの直訳は、赤いニシンだ。ニシンの匂いに気を取られて、本来の獲物を忘れてしまう猟犬の話が、語源になっている。

このニシンのように、本来の重要な論点とは外れているが、相手が食いつきそうな話題などを使って、論点をすりかえるテクニックが「燻製ニシンの虚偽」だ。
うまくいけば、本来の話題を忘れさせることができるし、脱線した話を使って議論に勝ったように周囲に見せることも可能だ。

話をそらせる方法はたくさんある。
実際、これまで紹介した詭弁のいくつかも、定義によっては燻製ニシンの虚偽の1つに分類できるだろう。
そのため全てを網羅することはできないが、いくつかのバリエーションを紹介しよう。

 

①無関係の話を持ち出す

一見関係しそうで、どうでもいい話を始めるのが、最も分かりやすい燻製ニシンの虚偽だ。
いくつか例を見てみよう。

A「Cさんは、仕事を頑張ってくれているし、成果を上げるだろう。リーダーに選出されるにふさわしい」
B「それはどうだろうか。Cさんの女性関係はルーズだからねぇ」

Cさんの女性関係は、仕事の成果を上げるかどうかとは、通常無関係だ。
しかし、女性関係は話題としてバズりやすいので議論をうまく脱線させてしまうかもしれない。

A「遅刻はやめましょう」
B「君だって先月遅刻したじゃないか」
A「いや、あれはこれこれこんな理由があって、、」
いわゆる「お前もな」のような議論も、論点をそらす技の1つだ。Aさんも遅刻したかどうかと、Bさんの遅刻の是非は、論理的に全く関係ない。しかし上の例では、Aさんはそのことをうまく指摘できずに、自分の遅刻の言い訳に話をうまくそらされてしまった。

A「A国が伸びるから、進出すべきだ」
B「みんな、Aさんは上司にゴマすってばかりで自分の意見なんて何もないよ。だから言ってることをまともに受け取る必要はない」
話し手の人格攻撃もこの一種だ。
本人の意見と本人の人間性は本来無関係だが、論点を本人の人間性の話に変えてしまうのは反対派の常套手段だ。

 

②そもそもの議論にすりかえる

A「浮気をするなんて倫理的に間違っている。」
B「でも、そもそも倫理とは何なんだい?」
A「それは皆が従うべき規範だろう。」
B「誰がそんなもの決めたんだ?自然界に倫理なんてあるのかい?」

上記の例では、浮気をしたことに対する是非の話をしていたはずだが、Aは途中でBにひっかかり、倫理とはの話になってしまっている。

意図的にとぼける技もある。
「ちょっと何言ってるかわからない」
「そもそも論点が不明確だ。ちゃんと話をまとめてくれ」
「よくわからないな。その話は今すべきなのか?」
このようなテクニックは、本題の議論をうまく避けて、そもそもの論点をどこにおくべきか、今この話をすべきかどうか、を論点に変えてしまうことができる。また、相手を馬鹿っぽく見せて、議論で負けたように見せることも可能だ。

 

③どうでもいい詳細に食いつく

そもそもの議論にすり返ることの逆パターンで、どうでもいい詳細な話にくいついてしまうテクニックもある。
重箱の隅をつついたり揚げ足をとったりする手法だ。

A「・・・ということで、A事業を推進するべきだと思います」
B「ちょっと待ってくれ、3ページのアンケートは母数が少なすぎないか?統計的にはこのサンプル数では本当にそうと言えるのだろうか。そもそもの属性の偏りも確認しているのか?」
この3ページのアンケートが、全ての議論の土台となるものであったら、このツッコミは正しいかもしれない。しかし、全体の議論に大きく影響しないものであったら、そこの是非ばかり議論することは本筋の妥当性とあまり関係ない。

A「ツールを見直すべきだ。使いづらすぎてみんなの効率性が下がっている。これだったら、全部手書きの方がマシだ。」
B「おいみんな、Aさんは何でも手書きがいいというアナログな人だからな。そんな古い考えの人の意見なんて真に受ける必要はないぞ。」
このように、ちょっとした例え話などに食いつく形もある。

 

まとめ

このように、燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)は、重要な論点から相手の注意をそらす技法だ。まともな議論を避けて相手を倒そうとするずるい戦術だ。

対策は、常に今は何の議題なのか意識することだ。そうすれば、本筋から外れていればしっかりそれを指摘して議論を戻すことができる。

ちなみに、共通してよく見られる1つのテクニックは、逆質問だ。論点をずらした逆質問をされた時は、それが本題とずれていることを指摘しよう。

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
浮気は生物学的にOK?「自然主義的誤謬」とは?
合成の誤謬と分割の誤謬とは?
権威に訴える論証の解説と例
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

浮気は生物学的にOK?「自然主義的誤謬」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
浮気は生物学的にOK?「自然主義的誤謬」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 717 Biz Tips Collection

浮気は生物学的に許される?遺伝子改良は不自然だから間違っている?
世はこのような詭弁にあふれている。論理的に間違っていることをしっかり見抜くには、どんな詭弁があるか頭に入れておくのが早道だ。今回は、自然主義的誤謬(自然主義の誤謬)を紹介する。

 

自然主義的誤謬とは、「である」から「であるべき」に飛躍すること

よくある例を見てみよう。以下のような主張を聞いたことはないだろうか。

「オスはできるだけ多くのメスを追いかけて、より多くの子孫を残すように遺伝子レベルでインプットされている。男が浮気をするのは生物学的にしょうがない。浮気を許すべきだ。」

確かに、オスは遺伝的に浮気しやすいようにできているだろうし、また自然界では一夫多妻の動物の方が多かったりするかもしれない。しかし、そう「である」という事実から、そう「であるべき」という規範は、論理的には導きだせない。

このように、「である」こと(物事の自然な状態)を、ゆえに「であるべき」だ(物事のあるべき状態)と、話を飛躍させるのが、自然主義的誤謬だ。
「である」事実としては、自然界の事柄に言及される場合が多い。

 

自然主義的誤謬の例

いくつか例を見てみよう。

「弱肉強食が自然界の摂理だ。弱者を救う制度はいらない。」
自然界がそうだからといって、人間が作り上げた制度が悪いとはならない。

「我々はずっとこの土地で暮らしてきた。なのでこれからもそうすべきだ。」
ずっと暮らしてきたのは事実だが、未来のあるべき論の根拠にはならない。

「女性が子育てをするのは、哺乳類として自然なことだ。女性は家庭を見て仕事は男性に任せるべきだ。」
別に人間がこれまでの哺乳類に合わせる必要はない。

「生命が死ぬのは摂理。死を受け入れるべきだ。」
これまで皆死んできたからといって、不死や長寿化の研究をするべきでないわけではない。

自然主義的誤謬の1つの注意点は、「である」事実から「であるべき」規範が論理的に導きだせないと言っているだけで、必ずしも文が間違っているとは限らないことだ。
例えば以下の文言は、大多数は正しいと同意するだろうが、論理的には正しくない。
「群れで生きる生物はみな協力しあうようにできている。なので、俺達も個人プレーにならずに互いに協力すべきだ。」

 

自然に訴える論証

自然主義的誤謬と非常に近い詭弁に、「自然に訴える論証」がある。
ほぼ同じなので、多くの場合多少混同しても問題ないが、厳密には論理構成に以下の違いがある。(分ける人と同じものとして扱う人がいる。)

自然主義的誤謬:
AはBである
ゆえにAはBであるべきだ

自然への訴え
隠れた前提:自然であるものは正しい/善い、もしくは自然でないものは間違っている/悪い
Aは自然である
ゆえにAは正しい/善い

自然に訴える論証の例:
「大麻は自然界に存在するものだ。悪いもののわけがない。」
この論理では、トリカブトだって摂取してOKになってしまう。

「遺伝子改良された食べ物は自然界に存在しない。ゆえに廃止すべきだ。」
この論理展開もよく見るが、そんなこと言ったらそもそも農業も育種法も自然界に存在しない。

 

事実→規範は論理的に繋がらない

このように、自然主義的誤謬とは、「である」こと(物事の自然な状態)を、ゆえに「であるべき」だ(物事のあるべき状態)と、話を飛躍させることだ。

こういったもっともらしい主張は、男女の役割や、遺伝子改良などの新技術といった、様々な分野で横行しているので、気をつけよう。

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
合成の誤謬と分割の誤謬とは?
権威に訴える論証の解説と例
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

合成の誤謬と分割の誤謬とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
合成の誤謬と分割の誤謬とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 684 Biz Tips Collection

世は詭弁にあふれている。論理的に間違っていることをしっかり見抜くには、どんな詭弁があるか頭に入れておくのが早道だ。今回は表裏一体である2つの詭弁である「合成の誤謬」と「分割の誤謬」を紹介する。

 

合成の誤謬は、部分的な特性を全体の特性とすること

「A高校のBさんは頭がいい。なのでA高校はみな頭がいいはずだ。」

合成の誤謬(fallacy of composition)は、一部分を取り上げて、一部分がこうだから全体もこうだ、と主張する論法だ。

論理展開は以下の通りだ。
・BはXである。
・BはAの一部分である。
・それゆえ、AはXである。

他にも例を見てみよう。

「分子に意識はない。なので、分子で構成された脳が意識の源であるはずがない。」
何かによって構成されたものが、その何かが持たない性質を持つ場合もある。

「サッカー観戦で立ち上がると試合がよく見れる。なので、皆が立ち上がれば皆が試合をよく見れる。」
他の人が座っているからこそ効果があるという条件を忘れて、全員に適用してしまった例だ。このように、一部だからこそ効果のあることを全体がすると効果はなくなる。

また、合成の誤謬は、早まった一般化と似ているが違うものだ。
合成の誤謬は、あるものの一部分の特性が全体に適用されるという前提から主張を展開しているのに対して、早まった一般化は少ないサンプルから主張を展開している。結果同じようなことを言っている場合もあるが、論理展開(論理は間違っているが)が違う。

 

分割の誤謬は、全体の特性を部分の特性とすること

「A高校は進学校だ。なのでA高校のBさんも成績がよいはずだ。」

上記の例文はどうだろうか。正しい場合もあるかもしれないが、必ずしもそうとは言えないだろう。
全体の平均や合計などから、個々の特性を必ずしも正しく当てることはできない。

分割の誤謬(fallacy of division)は、全体がこうだから、一部分もこうだ、と主張する論法だ。合成の誤謬の逆パターンと言える。

論理展開は以下の通りだ。
・AはXである。
・BはAの一部分である。
・それゆえ、BはXである。

他にも例を見てみよう。

「アメリカは世界一の経済大国だ。お隣のアメリカ人Aも金持ちに違いない。」
アメリカ人全員が金持ちとは限らない。

「Aさんは、ラーメンが好きだ。なので、ネギやメンマをそのまま食わせても好きだろう。」
ラーメンが好きだからといって、材料全てが好きとは限らない。

 

まとめ

今回は、表裏一体である合成の誤謬と分割の誤謬を紹介した。
まとめると以下の通りだ。
・合成の誤謬は、部分の特性を全体の特性とすること
・分割の誤謬は、全体の特性を部分の特性とすること

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
権威に訴える論証の解説と例
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

権威に訴える論証の解説と例 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
権威に訴える論証の解説と例 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 774 Biz Tips Collection

「アインシュタインがそう言ったからそうだ」このような、根拠として権威を出してくる詭弁はよく登場する。広告でもよく使われる。健康食品広告の医者や、CMの芸能人などがわかりやすい例だろうか。人はなんとなくの雰囲気で勘違いしがちなので、意外と影響を受けるものである。解説と様々なパターンを見てみよう。

権威論証は、権威を根拠に使う論法

主な権威論証の論理展開は以下の通りだ。
・AさんはBと言っている(or AさんはBを実施している)
・Aさんはすごい
・なのでBは正しい

もちろん、専門家の意見は注目に値する場合もある。しかし、基本的に専門家がそう言っているから正しいとは論理的にならない。また、全く関係ない権威を持ち出して説得しようとする権威論証を使う人もいる。

権威に訴える方法は、狭義では、「情報源が権威であることを根拠に使う」ことだが、
広義では、「さりげなく権威のあるものと関連付けて印象操作する」ことも含まれる。

また、権威と一言でも様々な種類がある。併用されることも多いが、いくつかのパターンの例を紹介する。

 

立場・肩書きへの訴え

これが最も主流なものだ。
権力者、専門家、芸能人、成功者、その他有名人など、様々な権威が悪用される。

「このタスクはこうやって進めた方が成功しやすい。部長がそう言っていた。」みたいな話は職場でもよくあるはずだ。部長はそれでうまくいったのかもしれないが、そうすべき理由になっていない。

権威を持ち出すのは、必ずしも間違いではない。例えば、以下の2文を見比べて頂きたい。
「部長によれば『昨年、女性がテレアポをした場合の成功率は男性の1.5倍だった』らしい。だからお前テレアポ担当な。」
「部長によれば『女性がテレアポした場合の方が結果が出る』らしい。だからお前テレアポ担当な。」
微妙な違いだが、前者はあくまで、検証結果を部長から引用しているので、より説得力がある。後者は結論だけなので、本当の場合もあるかもしれないが、実際どうか判別しようがなく、説得力に欠ける。

一方、CMで専門家に語らせたり、芸能人に商品を使わせるのは、より悪意のある権威論証の利用だろう。明らかに論理的な根拠がない場合が多い。「このシャンプーはすばらしい!なぜなら芸能人Bさんが愛用しているからです!」などは、(嘘だろうが)芸能人が本当に愛用していたからといって、シャンプーがすばらしい理由にはならない。

また、「トランプ大統領だって毎日コーラ飲んでて、70越えても元気なんだから、コーラの飲みすぎは問題ない」のような論法は、おかしい。トランプ大統領は確かにえらい人だが、そもそも健康の専門家ではない。このように、専門分野が無関係な権威が持ち出されることも多い。

また、同様の論理展開に、「自分の方が年長者だから~」「自分の方が経験豊富だから~」というものもある。

 

メディアへの訴え

実際、権威論証は、人が権威を感じるものであれば、なんでもよい。
立場への訴え以外によく会話で見られるのは、メディアへの訴えだ。
ネットの反映で若干下がってきているとはいえ、マスメディアにはまだ権威がある。

「ビットコイン買った方がいい。テレビで言ってた。」
「政治家Bが悪いらしいぞ。新聞で言ってた。」

言うまでもないが、メディアで言っていたからといって、必ずしも正しいとは限らない。

 

格言・ことわざの引用

「まぁ今すぐ手をつける必要はない。急がば回れというだろ?」
So what?である。

ことわざは、なんとなく正しい雰囲気をまとってる一種の権威だが、文脈に該当することわざがあることは、何の理由にもならない。

また、格言の引用と立場の悪用の組み合わせ技もある。有名人の名言を引用するのだ。
「そろそろ手を引かないと更に大損するだって?何を言っているんだ。ナポレオンも言っていただろう。『戦いは最後の五分間にある!』」

 

専門用語の活用

また、ことわざ等と同様に、なんとなく正しい雰囲気をまっているものに、専門用語がある。

以下のような広告はどうだろうか?
「このシャンプーは、オクトニキシン配合!」
なんとなくすごそうだが、本当にすごいかはオクトニキシンが何かによる。他のシャンプー全てに当たり前に含まれてる成分かもしれない。すごそうな専門用語をもちだしたからといって、それだけではそのシャンプーがすばらしいものという根拠にはならない。
ちなみにオクトニキシンは今適当に作った単語で存在しない。

以下の企業コンサルタントの発言はどうだろうか?
A「その件は、フィージビリティスタディを実施すべきでしょう。」
B「なるほど、私のロールのスコープ外なので、責任持って部長にエスカレーションしておきましょう。」
C「イシューの特定がクリティカルですね。」

一見すごそうだが、それぞれ言い換えてみよう。

A’「それいけそうかどうか確認した方がいいですね。」
B’「私じゃ手に負えないから、部長にお願いしておきます。」
C’「課題の特定が重要ですね。」
一気に普通になったのではないだろうか。Cに至っては当たり前のことしか言っていない。

コンサルタントがやたら日本語でもよいカタカナ用語を使ったり、バズワードを使うのは、権威を演出するためなのではないかと、たまに思う。それにより、発言に論理的根拠のない説得力を付与しているのだ。

 

なんとなくの雰囲気に騙されないようにしよう

権威に訴える論証は、主張に、権威者を紐付けて、正しいものにしようとする論証だ。
情報源や雰囲気で鵜呑みにする前に、「理由はなぜなのか」をしっかり自分の頭で考えるくせをつけよう。考えることが人間の尊厳のすべてだからだ。ってパスカルが言ってた。

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
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わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 576 Biz Tips Collection

わら人形論法とは、ストローマン、ダミー論証とも呼ばれる詭弁の1つ。相手の意見を歪曲して、その歪曲した意見に基づいて論破する、というテクニックだ。Twitterなどでの言い争いでもよく見られる。実際にどんなものか、種類とそれぞれの例を見ていこう。

わら人形論法は、相手の主張を歪めて、それを攻撃する手法

わら人形では、相手の意見を歪曲、誇張、言い換えなどをし、本人の本来の意見でなく、都合よく歪曲した意見を叩く。あたかも本人でなく、自分で作り出したわら人形を攻撃するかのようにだ。これにより、相手を論破したことにしようとするテクニックだ。これは一種の論点のすり替えでもある。

相手の意見の歪め方には、複数のパターンや特徴がある。多くのわら人形論法は、以下のパターンを複合的に使っている。いくつか見ていこう。

 

パターン① 極端な逆のことを主張していることにする

以下の例を見てみよう。

Aさんの主張:「子供を道路で遊ばせるのは危ない。」
わら人形論法:「Aさんは、子供を家に閉じ込めておけと言っている。果たしてそんな教育が正しいのでしょうか。子供が外で遊ぶのはいいことだ。」

明らかにAさんは、子供を家に閉じ込めておけなどとは言っていない。もっと言うと、外で遊ぶのがいけないとも言っていない。主張しているのは、道路で遊ぶのが危ないということだけだ。
ここでは、まず道路で遊ぶのが危ないという意見を、外で遊ぶのがよくないと言っているとことにしている。「道路で遊ぶ」はあくまで「外で遊ぶ」の中の1ジャンルだ。その上で、つまり子供は家に閉じ込めておくべきだと主張したことにしている。

他にも以下のような例がある。
Aさんの主張:「世界中の民主主義国家で、ポピュリズムが台頭している。なんとかしなくてはならない。」
わら人形論法:「独裁国家を肯定するというのか!」

Aさんの主張:「軍事予算を減らすべきだ。」
わら人形論法:「Aさんは国を守らなくてもよいと言っている。」

 

パターン② 拡大解釈する

Aさんの主張:「警察は容疑者のメール履歴を見る権限を持つべきだ。」
わら人形論法:「疑わしいというだけで、国家が人のメールを見れるだなんて、とんでもない制度だ。これは明らかに市民のプライバシーの侵害だ。Aさんは監視国家を作ろうとしている。これを止めなければ日本は人権のない国になってしまう。」

Aさんは、そこまで言っていない。この論法は、論点を監視国家の是非や人権の話に摩り替えている。
このように、Aということは、Bも言っている、ということはCも言っている、とどんどん拡大解釈していき、最後のCを叩くのがわら人形論法の1つのやり方だ。

以下のような例も拡大解釈の一種だ。
Aさんの主張:「刑務所に年間5000億円かかっている。制度改革が必要だ。」
わら人形論法:「刑務所は必要だ。犯罪者を社会に出しておくことは、どう考えても容認できない。」

 

パターン③ 間違った例を持ち出す

Aさんの主張:「アンケートの結果、70%がXXに反対でした。アンケートでは、各年代からランダムで選択肢、合計800サンプルに聞きました。」
わら人形論法:「たった一部の人たちに聞いただけでそれを皆の意識というなんておかしい。だったら次の選挙もほんの数百人の一握りで決めればいい。そんなの民主主義と呼べるか。そんなアンケート無効だ。」

確かに選挙は、一握りの人たちだけに聞いたら、民主主義として終わっている。だが、アンケートで一部のサンプルに聞くことの是非と、選挙で一部のサンプルに聞くことの是非は、別の話だ。このように間違った例に当てはめて、相手の主張を否定するのも、1つのわら人形論法だ。

以下の会話も同じような手法が使われている。
「火の扱いは気をつけなさい。怪我するかもしれないでしょう。」
「それを言ったら、サッカーをしてても怪我するかもしれない。そんなこと気にしてたら何もできないよ。」

 

パターン④ 発言の一部を取り出す

Aさんの主張:「資本主義が競争を促して結果格差ができることは悪いことではない。重要なのは、結果の格差でなく、機会の格差を減らすことだ。皆が平等な機会を持った上で、努力の結果格差ができるのは悪いことではない。もちろん程度もあるが。」
わら人形論法:「Aさんは、格差社会を良いことだと言っている。」

発言の一部を取り出して、それが本人の主張であるかのように話すのも、一種のわら人形だ。意見を故意に単純化しているという見方もできる。

ただの例え話に噛み付くのもその1つのやり方だ。たとえその例があまりよい例じゃなかったとしても、主張自体が間違っていることにはならない。

 

パターン⑤ 関連する別のものを主張していることにする

Aさんの主張:「トランプの施策には、実際悪くないものもある。」
わら人形論法:「Aさんは、人種差別を肯定している!」

Aさんはトランプの一部を肯定しただけだ。この論法では、トランプの別の要素も肯定していることにしている。

有名な例では、かつてニクソン大統領も、このようなわら人形を使って批判を退けた。簡単に要約すると、以下のような話だ。
批判:「ニクソンがふところに納めた選挙資金$18,000は違法で返却すべきだ。」
回答:「確かに私は支持者から犬を譲り受けた。とてもかわいい犬で、子供も気に入っている。誰がどう批判しようと、私はこの犬はキープする。」
誰も、譲り受けた犬のことは批判していない。批判しているのは着服した金だ。しかし、こんなロジックでもうまく世間の目を批判からそらすことに成功したらしい。しかも犬と子供を持ち出して感情に訴えるのは、さすが政治家といったところだろうか。

 

わら人形論法では、冷静に相手の間違いを指摘しよう

わら人形論法を使われたら、一番の対策は、相手の論理展開の間違いを指摘してやることだ。例えば最初の道路で遊ぶ例であれば、「家に引きこもっていろとは一言も言っていません。外で遊ぶことも否定していません。道路で遊ぶのが危ないと言っただけです。」といった形だ。自分がいない場で使われるのが一番たちが悪いのだが。
わら人形論法(ストローマン)は、相手の主張を歪めて、それを攻撃する手法だ。勢いで押し切れる場合もあるだろうが、論理的に間違っていることは認識しよう。

 

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

循環論法とは?具体例と悪用方法| 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
循環論法とは?具体例と悪用方法| 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 683 Biz Tips Collection

循環論法は、論理展開が完全に破綻している詭弁テクニックだ。しかし、なぜか人に行動を促す効果も持つ場合もある。自分の身を守るためにも理解しておくことが重要だろう。

 

以下の文章の何がおかしいかわかりますか?(循環論法の例)

まず、以下の文章を見て欲しい。おかしいことに気づくだろう。(内容の是非でなく、論理展開を見て頂きたい。)

「薬物法は必要だ。違法薬物を利用する人を取り締まらなければならないからな。」
「女性には子供を生むかどうか選択する自由がある。なので中絶は合法であるべきだ。」

もっとわかりやすい例も見てみよう。

「エイリアンは存在しない。なぜならエイリアンが存在する証拠はこれまで1つもないからだ。確かにエイリアンやUFOを目撃したというケースはちまたにたくさんある。しかしあれらは全てでっちあげだ。どっかのエイリアン愛好家が嘘をついているか、自分の都合のよい解釈をしたに決まっているだろう。だってエイリアンなんて存在しないんだから。」

「神は存在する。なぜなら聖書にそう書かれているからだ。聖書に書いてあることは正しい。なぜなら聖書は神の言葉そのものだからだ。」

「自殺は悪いことだ。なぜならそれが一般常識だからだ。」
「なんでそれが一般常識なの?」
「そりゃお前、自殺が悪だからに決まってるだろう。」

「コピーを先にとらせてもらえませんか?コピーをとらなきゃいけないので。」

 

循環論法とは結論を根拠に使うこと

先ほどの例の共通点は、結論を出すための根拠として、結論が使われていることだ。
論理展開が一周してしまうため、循環論法(英語でCircular logic)と呼ばれる。

例えば、エイリアンの例の論理展開を見てみよう。

エイリアンは存在しない。
なぜなら、エイリアン存在の証拠はこれまで1つもない。
なぜなら、これまでの目撃情報は全てでっちあげだからだ。
なぜなら、エイリアンは存在しないから。

上記の通り、エイリアンは存在しない、という主張の根拠として、なぜかエイリアンが存在しないことが挙げられてしまっている。(存在の証拠がないから存在しない、というところも論理的にはおかしいが、今回はおいておこう。)

論理展開だけ取り出すと、以下の通りだ。
A←なぜならB←なぜならC←なぜならD←なぜならA

始めの2つの例も、一見もっともらしい主張だが、論理展開はむちゃくちゃだ。結論と理由を、実際同じことを言い換えているだけだからである。しかも、一般的に同意を得られそうな言い方に言い換えているところもずるい。

薬物法は必要。
なぜなら違法薬物を利用する人を取り締まらなくてはならない。
↑同じことを言っている。そもそも薬物を違法か決定するのが薬物法。

中絶は合法であるべき。
なぜなら女性には子供を生むかどうか選択する自由がある。
↑同じことを言っている。合法にすべきか非合法にすべきかは、選択の自由があるべきかどうかの議論。

論理展開は以下のようになっている。
A←なぜならA

 

循環論法は悪用できる

どうやら循環論法は、人を動かす時に悪用できるようだ。以下のような心理学の研究がある。

順番待ちのコピー機での割り込みを、3パターンの言い方で試した。
①「先にコピーをとらせてもらえませんか?」(要求のみを伝える。)
②「急いでいるので、先にコピーをとらせてもらえませんか?」(本当の理由を伝える。)
③「コピーをとらなければいけないので、先にコピーをとらせてもらえませんか?」(もっともらしい理由を伝える。循環論法になっている。)

結果、①の承諾率は60%、②の承諾率は94%だった。しかし、③の承諾率も93%であった。
枚数があまりに多い場合は、効果はなかった結果もあるが、少なくともちょっとしたお願いでは、理由になっていない理由でもよいので、理由を付けると承諾されやすい。
心理学ではこれを、「カチッサー効果」と呼ぶ。

また、上記のような「A←なぜならA」というシンプルなものでさえ効果がある中、論理展開が非常に長くなると循環論法を見破るのが難しくなる。
例えば、共産主義国家で聖書のように扱われるマルクスの資本論。詳細は省くが、その中の主要な主張である労働価値説も、循環論法であることが指摘され、一時強かった支持を失ったこともある。

 

循環論法に気をつけよう

今回、代表的な詭弁の1つである循環論法についてみてきた。
循環論法は、結論の根拠や前提として結論を使うことだ。アカデミズムの世界でも忌み嫌われているようだが、実際アカデミズムの外でも人を説得するために悪用されている。あからさまな循環論法でも、理由を付けないよりは、人を動かす効果があるので要注意だ。

 

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
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軽率な一般化とは?例と気をつけ方

もっともらしいが間違った比較7種 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
もっともらしいが間違った比較7種 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 684 Biz Tips Collection

比較を使った論理展開はもっともらしい説得力を持つ。しかし、その比較対象は、論理的に正しいのだろうか。比較は一見正しいので悪用しやすい。間違った論理展開を見抜いたり、正しく自分の考えをまとめるには、よくある論理の間違いを知ることが早道だ。

比較を使った論理のごまかし① 類似性の悪用

二つの対象を比較する際、一部の類似性だけから、同一のように扱うのは、論理的に間違っている。これは、アナロジーの悪用(abusive analogy)と呼ばれたりもする、論理のごまかしを使った説得テクニックだ。

①-1:一部の類似性から、同一性を主張する

例を見てみよう。
「Aさんが昇格するのであれば、私を昇格させないのはおかしい。Aさんも私も、同じ売上目標を達成している。」

一見もっともらしいが、売上目標達成という1つの類似性だけで、Aさんも自身も同じく昇格資格があるものとして扱っている。しかし、売上目標を達成した人が他にもたくさんいる状況だったら、Aさんと自身を同じように扱うだけの類似性があるとは言えない。また、もし自身の勤務態度が非常に悪い状態でこの発言をしていたらどうだろうか。1つの類似点を取り上げて、Aさんと自身の間にある大きな違いを故意に無視している状態になる。

これは、こんな論理構成になっている。
前提:Xは、要素a、b、cを持つ。Yは、要素a、d、eを持つ。
1:Xは、Zである。
2:YもXのように、要素aがある。
3:なので、YもZであるはずだ。
一部の類似性しか扱っておらず、また他の要素の違いを無視しているのが明確だろう。

①-2:一部の類似性から、片方の要素をもう片方も持っていると主張する

①-1の派生版だが、このような使われ方も多い。また、例を見てみよう。
「A課長は、B部長と同じようなしゃべり方をする。Bさんみたく部下の手柄を取るやつだろう。」
A課長とB部長のしゃべり方は類似しているかもしれない。だからといって、A課長の他の性格がB部長と同じとは限らない。
「会社Aは会社Bと同じ価格でサービスを提供している。同じくらいの仕事をしてくれるだろう。」
これはどうだろうか?結果正しい場合もあるかもしれないが、価格だけで仕事内容が同じと仮定するのは危ないかもしれない。

この論理構成は、以下の通りだ。
前提:Xは、要素a、b、cを持つ。Yは、要素a、d、eを持つ。
1:YもXのように、要素aがある。
2:なので、Yも要素bを持っているだろう。

一部でも似ていることを目立たせて持ち出すと、人はそれらを同じもののように錯覚しやすいので、気をつけよう。

比較を使った論理のごまかし② 無関係な対比

②-1:関係ないもの同士を対比する

「不公平です。昔はタクシー代くらい、自由に経費を使っても何も言われなかったのに。」
これは、昔の会社の状況と今の会社の状況を比較している。昔が20年前だったらどうだろうか。会社の状況も変わるし、社長も変わって方針やルールもすでに変わっているかもしれない。20年前のものと現在のものを比較することは、無意味だ。
もう1つ例をあげよう。
「原発は開発できるのに、なんで少子化を解決できないんだ。」
原発開発の技術と、少子化解決は比較対象として正しくないだろう。この文は、原発を開発できるのなら、同じく少子化は解決できるはず、という間違った暗黙の前提がある。ついでにこの文は、原発開発なんかに資金を使っているから少子化が解決できないんだ、という主張を含んでいる。この主張の是非は置いておいて、少なくとも根拠としてこの文章を使うのは論理的には間違っている。

②ー2:関係ない要素で対比する

「A事業部がB事業部に勝てるわけがない。人数が全然違うのだから。」
A事業とB事業の商品特性が全く違ったら、この主張は間違っている可能性が高い。例えば、A事業はEC事業で、B事業は店舗事業だったらどうだろうか。B事業に人数がたくさんいるのは当たり前だ。この場合A事業とB事業の勝敗は人数で決まるものではないので、対比している要素は関係ない。
以下の例がよりわかりやすいだろう。
「C営業所がD営業所に勝てるわけがない。D営業所の方がオフィスが広いのだから。」
オフィスの広さが、営業所の売上に影響する最も重要な要素であることは普通ないだろう。

比較を使った論理のごまかし③ 間違った対比

③-1:逆のもの同士は、逆の要素があると単純化する

「男は仕事ができるのなら、女は仕事できないだろう。」
そうとは限らないことは明確だろう。
この文の論理展開は、以下の通りだ。
1:Xはaである。
2:YはXの反対だ。
3:なので、Yはaの反対である。

何かの反対のものは、それの反対の要素を持っているという論理展開だ。Xとaが結びついていたら、aはXでないとありえない、という間違った前提を置いている。

③-2:一部の要素の対比から、別のものとして扱う

これは、「一部の類似性から、同一のものと扱う」の逆パターンだ。
「あいつは人員増に反対している。やっぱりあいつはこのプロジェクトを失敗させようとしているんだ。」
人員増という一要素に反対しているからといって、プロジェクト全体に反対しているとは限らない。
論理展開は以下の通りだ。
1:Xであれば、要素aがあるはずだ。(プロジェクトに賛成であれば、人員増に賛成する。)
2:Vは、要素aがない。(Aさんは、人員増に賛成していない。)
3:Vは、Xではない。(Aさんは、プロジェクトに賛成していない。)
(1:)の主張がそもそも間違っている場合、結論は間違っている。先ほどの例では、要素aがなくてもXは成り立つ。

もう1つ例を見てみよう。
「あいつは、パワーポイントが使えない。あいつは、できるサラリーマンではない。(だから、あいつを昇格させるべきではない。)」
パワーポイントを使えることは、「できるサラリーマン」の一要素でしかない。パワーポイントが使えないからと言って、必ずしもできるサラリーマンではない、とは言い切れないだろう。

比較を使った論理のごまかし④ 統計マジック

最後に、いわゆる統計マジックも、比較を使ったごまかしの一つだ。
「私がこの部の部長になってから、売上は10倍になった。」
元々の売上が小さかったり、始まったばかりに事業だったらどうだろうか。10倍になったのはいいことだろうが、誤解を招く言い方だ。

同様に、一番悪いところと一番いいところを故意に選んで比較して、一見すごそうな統計を出すのは、世の中でよく使われる手だ。

すぐ鵜呑みにせず、比較しているものが正しいかをチェックしよう

今回解説した比較を使った論理のごまかしは、以下の7つだ。
・一部の類似性から、同一性を主張する
・一部の類似性から、片方の要素をもう片方も持っていると主張する
・関係ないもの同士を対比する
・関係ない要素で対比する
・逆のもの同士は、逆の要素があると単純化する
・一部の要素の対比から、別のものとして扱う
・統計を悪用する

比較を使った論理展開は、もっともらしい説得力を持ちやすいので、気をつけよう。

 

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

【3分でわかる】軽率な一般化とは?例と気をつけ方| 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
【3分でわかる】軽率な一般化とは?例と気をつけ方| 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 536 Biz Tips Collection

「軽率な一般化」は、別名「早まった一般化」とも呼ばれる、典型的な詭弁の1つ。しかし、意識してみると、世の中でしょっちゅう登場する論理的な間違いだ。間違った論理展開を見抜いたり、正しく自分の考えをまとめるには、よくある論理の間違いを知ることが早道だ。

軽率な一般化は、少ないサンプルから間違った結論を出すこと

まず例を見てみよう。

「周りにいるA型はしっかりしている。⇒A型はみんなしっかり者だ。」
「政治家Aがセクハラをした。この党はろくな奴がいない」

これは、どちらも軽率な一般化だ。
自分の周りにいるA型がしっかりしているからといって、世界のA型みんながそうかとは言い切れない。このように、たまたま自分の身の回りにある状況や、たまたま見聞きした情報から結論を出してしまうと、間違った結論になりやすい。問題はサンプル数が少なかったり、偏っていたりすることだ。二つ目の例に至っては、サンプルは1人だ。

もっと分かりやすい例だと、以下のようなものだ。
・しいたけは食べられる
・マツタケは食べられる
・エリンギは食べられる
⇒キノコは食べられる

これは間違いだとすぐ気づくだろう。世の中には、毒キノコが存在する。

以下の例はどうだろうか。
・Facebookは、PV数が収益性に大きなインパクトがある
・Googleは、PV数が収益性に大きなインパクトがある
・Youtubeは、PV数が収益性に大きなインパクトがある
⇒ITビジネスは、PV数が収益性に大きなインパクトがある

何が間違いか気づくだろうか。確かに例にあがっている会社はIT企業だが、全てのIT企業にとってPV数が重要というわけではない。もし「広告収入がメインの収入源であるWebメディアにとって、PV数が収益性に大きなインパクトがある」という結論であれば、正しかったかもしれない。しかし、ITビジネスという広い概念に一般化してしまったのが、上記の論理展開の間違いだ。

「日本人は大人しい」「欧米人は酒に強い」といった、いわゆるステレオタイプも、軽率な一般化の1つとも言える。

 

 気をつけるのは、サンプル数、サンプルの偏り、そして反証の有無

人の脳は、少ない情報から類推するよう発達してきたらしく、気をつけないとこの間違いをすぐしてしまうくせがあるようなので気をつけよう。

それでは、どのように気をつけるべきか。それは以下の3つだ。

①サンプル数に注目する
何人(何個)の事象から、結論を出しているのか、注意しよう。これは、もっともらしいアンケート結果でも、よくサンプル数を見てみると、数が少なかったりする。

②サンプルの偏りに注目する
サンプルが、特定の属性に偏っていないだろうか。その場合、先ほどのIT企業の例のように、その属性の中では正しい結果かもしれないが、全体に対して一般化するのは間違いだろう。

③反証がないか考える
そうでないケースが思い浮かぶか、考えてみよう。そうでないケースが容易に浮かぶようでは、その論理展開はどこか間違っているはずだ。

 

軽率な一般化をしてしまっていないか、自分でも気をつけよう

このように、論理の間違いに気をつける・見抜くことは、いわゆるクリティカルシンキングの1要素だ。その早道は、どんな論理展開の間違いがあるのか、頭に入れておくことだ。ただ知っているだけで、気づきやすくなる。

本記事では、「軽率な一般化」について紹介したので、簡単にまとめる。
・軽率な一般化は、少ないサンプルから全体について間違った結論を出すこと
・間違っていないか見極める点は、①サンプル数に着目する、②サンプルの偏りに着目する、③反証がないか考える、の3点だ

軽率な一般化は、いわゆる帰納法という論理展開においてチェックすべきポイントだ。
言われると当たり前の間違いだが、意識すると想像以上に横行しているので、気をつけるといいだろう。

 

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種