交渉フレームワーク「ZOPA」の使い方|コレであなたも交渉上手

交渉フレームワーク「ZOPA」の使い方|コレであなたも交渉上手 1024 681 Biz Tips Collection

「ZOPA」とは「合意可能領域」のこと。交渉学やネゴシエーションのスキルを磨こうとしたことがあれば誰でも見たことあるフレームワークだ。概念はシンプルだが、実際の交渉現場では利用しにくいと感じている方も少なくないだろう。それは「ZOPA」を交渉テクニックと勘違いしているに過ぎず、フレームワークとしての使い方を知らないがためにそのような状況に陥っているといえる。本記事では実践での使い方も含めて「ZOPA」について解説する。

価格交渉フレームワーク「ZOPA」とは?

ZOPAとはZone Of Possible Agreementの略語で「売買が成立可能な価格帯」の事を指す言葉として交渉学では広く使われている概念だ。交渉の最小単位である2名の取引において、最終的に決定されるであろう価格の幅を把握するために使われる。通常はBATNAという言葉と一緒に説明される事が多いが今回はシンプルに理解を深めてもらう為にBATNAを使わず解説していきたい。

フリーマーケットで服を買うとき皆さん何を考えるだろうか。
サイズが合うか?ほしい色はあるか?デザインはいけてるか?
色々考えて、欲しい服が見つかったとする。
さて、もちろん重要なのは価格だ。フリーマーケットなので、決まった価格はなく、値切り可能だ。
あなたは、いくらまでなら出せるという価格の条件がある。相手にも同じように条件があることを想定して、考えるのがZOPAだ。

買い手がこの商品なら¥1,300までなら買おうと考えているのと同様に、売り手が¥1,200までなら売ってもいい(これ以上は原価割れするなど)と考えていて、この重なる¥1,200~1,300が「ZOPA」、すなわち「売買が成立可能な価格帯」だ。交渉が成立するとすれば、このZOPAの価格帯の中になる。もし、この重なる価格帯がなければ、そもそも交渉成立不可能で、交渉してもお互いに無駄だとわかる。

実際の現場では、例えば買い手は¥1,100~1,300の間で買いたい、売り手は¥1,200~1,400の間で売りたいというように、すでにお互いにある程度の幅が決まっていることが多い。ここで重要なのは、これの売り手と買い手の価格帯がそれぞれの売買するにおいて最も不利な条件(これ以下だと交渉決裂な条件)とできることなら獲得したい条件(あわよくばのゴール)であることだ。

基本的には相手がどのように考えているかを把握し交渉に臨むことが重要であるという考え方である。交渉術を学ぶ方の動機はどのように値下げするかだったりするので、あまり重要性が把握されず利用されないケースが多い。以降ではこのZOPAをどのようにフレームワークとして活用すべきか解説する。

ビジネスにおいてZOPAは意思決定前倒しのためのフレームワーク

先述したとおり、ZOPAは交渉テクニックではない。ZOPAを把握したところで、商品を買い叩く・商品を高く売るためのロジックが形成されるわけではないからだ。では、ZOPAはどのようなシーンで利用されるのか。結論から言うとZOPAはビジネスにおいて意思決定を前倒しするためのフレームワークとして利用される。簡単な例を用いて説明する。
ビジネスで商品の仕入れを行う場面を想像してみて欲しい。どのようなプロセスで商品の仕入れが行われるだろう。あくまで一例に過ぎないが基本的なプロセスを下記する。

画像の例では商品の仕入担当者として社内の関係者に要件を確認した上で、相手方に交渉に行き、その上でまた社内承認を取りにいき、合意に至っている。実際に仕入担当を経験した方や感のいい方ならわかるであろうが、このプロセスで一番面倒なのは自社内の最終合意から契約書に捺印するまでのプロセスだ。それは先方も同じようなプロセスを経ていることを想定すると理解しやすい。つまり、先方も同様に最終合意を相手方内で獲得し合意を取らなければならないため、どちらか(自社または相手方)が社内の合意形成に失敗するとまた交渉が振り出しに戻ってしまう可能性が多いということだ。実は会社における最終合意形成時は一番意見が変わりやすいポイントである。なぜなら、意思決定をするための要素が万全になり、具体的な金額感も見えてくるため、能力の低い意思決定者でも判断が可能となってくるからだ。筆者もM&Aの交渉現場で何度泣かされたかわからない。

交渉の場は水物である。少しでも、時期がずれたり商環境に変化があったりすると条件は変わり、取引は変化する。実際の交渉現場に立ったことがある方なら十分に理解いただけるであろう。社の代表としての交渉人は最後のプロセスを経ずにその場に判子を持っていって捺印できる状況を切実に願っているはずだ。ここで、出てくるのが意思決定前倒しのためのZOPAである。

自社が仕入れを実行するための最も不利な条件とできることなら獲得したい条件を見える化する。それだけだと現場に出てこない意思決定者は現場の不安定な交渉状況を理解できないので、相手次第だといって意思決定をしてくれない。ここで想定しうる相手方の同様の情報を提示し、ZOPAで「売買が成立可能な価格帯」を握るのだ。前述したプロセスで言うところの「詳細・条件交渉」の場面で一定の範囲でならば契約可能という状況をつくるのだ。

つまりZOPAのフレームワークを使えば、「自社としては、この範囲で売りたいと思います。他社の状況を加味するに、どうやらこの範囲内が合意可能な範囲のようです。」のような説明で、ZOPA内での交渉締結の許可を早めにもらってしまえば、上長確認の回数を減らして意思決定のスピードを上げることが可能なのだ。

組織で金銭のやり取りをする場合は必ずZOPAで意思決定の前倒しを

今回は交渉術のひとつとしてよく紹介されているZOPAを確認した。しかし、ZOPAは交渉術というよりはビジネスにおける交渉準備時に利用するフレームワークであることを説明した。以下でZOPAのフレームワークとして重要なポイントを改めて確認する。

・ZOPA=売買が成立可能な価格帯
・売買するにおいて最も不利な条件とできることなら獲得したい条件を確認
・ZOPAですべきことは意思決定の前倒し

交渉術には様々な概念があり、それらはテクニックとして求められているケースが多い。しかし、交渉学として紹介される概念はフレームワークであることが多く、利用シーンをちゃんと理解しないとテクニックとし実践していくことは難しい。ZOPAに付随する概念であるBATNAも同様のことが入れるので次回、また説明していくこととする。また、機会があれば交渉のテクニックについても事例を用いて解説・紹介していきたい。