もっともらしいが間違った比較7種 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ

もっともらしいが間違った比較7種 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 684 Biz Tips Collection

比較を使った論理展開はもっともらしい説得力を持つ。しかし、その比較対象は、論理的に正しいのだろうか。比較は一見正しいので悪用しやすい。間違った論理展開を見抜いたり、正しく自分の考えをまとめるには、よくある論理の間違いを知ることが早道だ。

比較を使った論理のごまかし① 類似性の悪用

二つの対象を比較する際、一部の類似性だけから、同一のように扱うのは、論理的に間違っている。これは、アナロジーの悪用(abusive analogy)と呼ばれたりもする、論理のごまかしを使った説得テクニックだ。

①-1:一部の類似性から、同一性を主張する

例を見てみよう。
「Aさんが昇格するのであれば、私を昇格させないのはおかしい。Aさんも私も、同じ売上目標を達成している。」

一見もっともらしいが、売上目標達成という1つの類似性だけで、Aさんも自身も同じく昇格資格があるものとして扱っている。しかし、売上目標を達成した人が他にもたくさんいる状況だったら、Aさんと自身を同じように扱うだけの類似性があるとは言えない。また、もし自身の勤務態度が非常に悪い状態でこの発言をしていたらどうだろうか。1つの類似点を取り上げて、Aさんと自身の間にある大きな違いを故意に無視している状態になる。

これは、こんな論理構成になっている。
前提:Xは、要素a、b、cを持つ。Yは、要素a、d、eを持つ。
1:Xは、Zである。
2:YもXのように、要素aがある。
3:なので、YもZであるはずだ。
一部の類似性しか扱っておらず、また他の要素の違いを無視しているのが明確だろう。

①-2:一部の類似性から、片方の要素をもう片方も持っていると主張する

①-1の派生版だが、このような使われ方も多い。また、例を見てみよう。
「A課長は、B部長と同じようなしゃべり方をする。Bさんみたく部下の手柄を取るやつだろう。」
A課長とB部長のしゃべり方は類似しているかもしれない。だからといって、A課長の他の性格がB部長と同じとは限らない。
「会社Aは会社Bと同じ価格でサービスを提供している。同じくらいの仕事をしてくれるだろう。」
これはどうだろうか?結果正しい場合もあるかもしれないが、価格だけで仕事内容が同じと仮定するのは危ないかもしれない。

この論理構成は、以下の通りだ。
前提:Xは、要素a、b、cを持つ。Yは、要素a、d、eを持つ。
1:YもXのように、要素aがある。
2:なので、Yも要素bを持っているだろう。

一部でも似ていることを目立たせて持ち出すと、人はそれらを同じもののように錯覚しやすいので、気をつけよう。

比較を使った論理のごまかし② 無関係な対比

②-1:関係ないもの同士を対比する

「不公平です。昔はタクシー代くらい、自由に経費を使っても何も言われなかったのに。」
これは、昔の会社の状況と今の会社の状況を比較している。昔が20年前だったらどうだろうか。会社の状況も変わるし、社長も変わって方針やルールもすでに変わっているかもしれない。20年前のものと現在のものを比較することは、無意味だ。
もう1つ例をあげよう。
「原発は開発できるのに、なんで少子化を解決できないんだ。」
原発開発の技術と、少子化解決は比較対象として正しくないだろう。この文は、原発を開発できるのなら、同じく少子化は解決できるはず、という間違った暗黙の前提がある。ついでにこの文は、原発開発なんかに資金を使っているから少子化が解決できないんだ、という主張を含んでいる。この主張の是非は置いておいて、少なくとも根拠としてこの文章を使うのは論理的には間違っている。

②ー2:関係ない要素で対比する

「A事業部がB事業部に勝てるわけがない。人数が全然違うのだから。」
A事業とB事業の商品特性が全く違ったら、この主張は間違っている可能性が高い。例えば、A事業はEC事業で、B事業は店舗事業だったらどうだろうか。B事業に人数がたくさんいるのは当たり前だ。この場合A事業とB事業の勝敗は人数で決まるものではないので、対比している要素は関係ない。
以下の例がよりわかりやすいだろう。
「C営業所がD営業所に勝てるわけがない。D営業所の方がオフィスが広いのだから。」
オフィスの広さが、営業所の売上に影響する最も重要な要素であることは普通ないだろう。

比較を使った論理のごまかし③ 間違った対比

③-1:逆のもの同士は、逆の要素があると単純化する

「男は仕事ができるのなら、女は仕事できないだろう。」
そうとは限らないことは明確だろう。
この文の論理展開は、以下の通りだ。
1:Xはaである。
2:YはXの反対だ。
3:なので、Yはaの反対である。

何かの反対のものは、それの反対の要素を持っているという論理展開だ。Xとaが結びついていたら、aはXでないとありえない、という間違った前提を置いている。

③-2:一部の要素の対比から、別のものとして扱う

これは、「一部の類似性から、同一のものと扱う」の逆パターンだ。
「あいつは人員増に反対している。やっぱりあいつはこのプロジェクトを失敗させようとしているんだ。」
人員増という一要素に反対しているからといって、プロジェクト全体に反対しているとは限らない。
論理展開は以下の通りだ。
1:Xであれば、要素aがあるはずだ。(プロジェクトに賛成であれば、人員増に賛成する。)
2:Vは、要素aがない。(Aさんは、人員増に賛成していない。)
3:Vは、Xではない。(Aさんは、プロジェクトに賛成していない。)
(1:)の主張がそもそも間違っている場合、結論は間違っている。先ほどの例では、要素aがなくてもXは成り立つ。

もう1つ例を見てみよう。
「あいつは、パワーポイントが使えない。あいつは、できるサラリーマンではない。(だから、あいつを昇格させるべきではない。)」
パワーポイントを使えることは、「できるサラリーマン」の一要素でしかない。パワーポイントが使えないからと言って、必ずしもできるサラリーマンではない、とは言い切れないだろう。

比較を使った論理のごまかし④ 統計マジック

最後に、いわゆる統計マジックも、比較を使ったごまかしの一つだ。
「私がこの部の部長になってから、売上は10倍になった。」
元々の売上が小さかったり、始まったばかりに事業だったらどうだろうか。10倍になったのはいいことだろうが、誤解を招く言い方だ。

同様に、一番悪いところと一番いいところを故意に選んで比較して、一見すごそうな統計を出すのは、世の中でよく使われる手だ。

すぐ鵜呑みにせず、比較しているものが正しいかをチェックしよう

今回解説した比較を使った論理のごまかしは、以下の7つだ。
・一部の類似性から、同一性を主張する
・一部の類似性から、片方の要素をもう片方も持っていると主張する
・関係ないもの同士を対比する
・関係ない要素で対比する
・逆のもの同士は、逆の要素があると単純化する
・一部の要素の対比から、別のものとして扱う
・統計を悪用する

比較を使った論理展開は、もっともらしい説得力を持ちやすいので、気をつけよう。

 

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
軽率な一般化とは?例と気をつけ方