権威に訴える論証の解説と例 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ

権威に訴える論証の解説と例 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 774 Biz Tips Collection

「アインシュタインがそう言ったからそうだ」このような、根拠として権威を出してくる詭弁はよく登場する。広告でもよく使われる。健康食品広告の医者や、CMの芸能人などがわかりやすい例だろうか。人はなんとなくの雰囲気で勘違いしがちなので、意外と影響を受けるものである。解説と様々なパターンを見てみよう。

権威論証は、権威を根拠に使う論法

主な権威論証の論理展開は以下の通りだ。
・AさんはBと言っている(or AさんはBを実施している)
・Aさんはすごい
・なのでBは正しい

もちろん、専門家の意見は注目に値する場合もある。しかし、基本的に専門家がそう言っているから正しいとは論理的にならない。また、全く関係ない権威を持ち出して説得しようとする権威論証を使う人もいる。

権威に訴える方法は、狭義では、「情報源が権威であることを根拠に使う」ことだが、
広義では、「さりげなく権威のあるものと関連付けて印象操作する」ことも含まれる。

また、権威と一言でも様々な種類がある。併用されることも多いが、いくつかのパターンの例を紹介する。

 

立場・肩書きへの訴え

これが最も主流なものだ。
権力者、専門家、芸能人、成功者、その他有名人など、様々な権威が悪用される。

「このタスクはこうやって進めた方が成功しやすい。部長がそう言っていた。」みたいな話は職場でもよくあるはずだ。部長はそれでうまくいったのかもしれないが、そうすべき理由になっていない。

権威を持ち出すのは、必ずしも間違いではない。例えば、以下の2文を見比べて頂きたい。
「部長によれば『昨年、女性がテレアポをした場合の成功率は男性の1.5倍だった』らしい。だからお前テレアポ担当な。」
「部長によれば『女性がテレアポした場合の方が結果が出る』らしい。だからお前テレアポ担当な。」
微妙な違いだが、前者はあくまで、検証結果を部長から引用しているので、より説得力がある。後者は結論だけなので、本当の場合もあるかもしれないが、実際どうか判別しようがなく、説得力に欠ける。

一方、CMで専門家に語らせたり、芸能人に商品を使わせるのは、より悪意のある権威論証の利用だろう。明らかに論理的な根拠がない場合が多い。「このシャンプーはすばらしい!なぜなら芸能人Bさんが愛用しているからです!」などは、(嘘だろうが)芸能人が本当に愛用していたからといって、シャンプーがすばらしい理由にはならない。

また、「トランプ大統領だって毎日コーラ飲んでて、70越えても元気なんだから、コーラの飲みすぎは問題ない」のような論法は、おかしい。トランプ大統領は確かにえらい人だが、そもそも健康の専門家ではない。このように、専門分野が無関係な権威が持ち出されることも多い。

また、同様の論理展開に、「自分の方が年長者だから~」「自分の方が経験豊富だから~」というものもある。

 

メディアへの訴え

実際、権威論証は、人が権威を感じるものであれば、なんでもよい。
立場への訴え以外によく会話で見られるのは、メディアへの訴えだ。
ネットの反映で若干下がってきているとはいえ、マスメディアにはまだ権威がある。

「ビットコイン買った方がいい。テレビで言ってた。」
「政治家Bが悪いらしいぞ。新聞で言ってた。」

言うまでもないが、メディアで言っていたからといって、必ずしも正しいとは限らない。

 

格言・ことわざの引用

「まぁ今すぐ手をつける必要はない。急がば回れというだろ?」
So what?である。

ことわざは、なんとなく正しい雰囲気をまとってる一種の権威だが、文脈に該当することわざがあることは、何の理由にもならない。

また、格言の引用と立場の悪用の組み合わせ技もある。有名人の名言を引用するのだ。
「そろそろ手を引かないと更に大損するだって?何を言っているんだ。ナポレオンも言っていただろう。『戦いは最後の五分間にある!』」

 

専門用語の活用

また、ことわざ等と同様に、なんとなく正しい雰囲気をまっているものに、専門用語がある。

以下のような広告はどうだろうか?
「このシャンプーは、オクトニキシン配合!」
なんとなくすごそうだが、本当にすごいかはオクトニキシンが何かによる。他のシャンプー全てに当たり前に含まれてる成分かもしれない。すごそうな専門用語をもちだしたからといって、それだけではそのシャンプーがすばらしいものという根拠にはならない。
ちなみにオクトニキシンは今適当に作った単語で存在しない。

以下の企業コンサルタントの発言はどうだろうか?
A「その件は、フィージビリティスタディを実施すべきでしょう。」
B「なるほど、私のロールのスコープ外なので、責任持って部長にエスカレーションしておきましょう。」
C「イシューの特定がクリティカルですね。」

一見すごそうだが、それぞれ言い換えてみよう。

A’「それいけそうかどうか確認した方がいいですね。」
B’「私じゃ手に負えないから、部長にお願いしておきます。」
C’「課題の特定が重要ですね。」
一気に普通になったのではないだろうか。Cに至っては当たり前のことしか言っていない。

コンサルタントがやたら日本語でもよいカタカナ用語を使ったり、バズワードを使うのは、権威を演出するためなのではないかと、たまに思う。それにより、発言に論理的根拠のない説得力を付与しているのだ。

 

なんとなくの雰囲気に騙されないようにしよう

権威に訴える論証は、主張に、権威者を紐付けて、正しいものにしようとする論証だ。
情報源や雰囲気で鵜呑みにする前に、「理由はなぜなのか」をしっかり自分の頭で考えるくせをつけよう。考えることが人間の尊厳のすべてだからだ。ってパスカルが言ってた。

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
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