
自由競争のメリット?弊害?ウィンブルドン現象とは | 実例と解説
自由競争のメリット?弊害?ウィンブルドン現象とは | 実例と解説 https://biz-tips-collection.com/wp/wp-content/uploads/2018/09/wimbledon-effect_eyecatch-1024x682.jpg 1024 682 Biz Tips Collection Biz Tips Collection https://biz-tips-collection.com/wp/wp-content/uploads/2018/09/wimbledon-effect_eyecatch-1024x682.jpgグローバル化の流れに伴い、多くの国や産業で、市場の自由化・規制緩和が議論されてきている。自由化・規制緩和には当然いいこともあれば悪いこともある。ウィンブルドン現象(または、ウィンブルドン効果という)は、自由化・規制緩和によって発生する現象を呼んだ言葉だ。
ウィンブルドン現象とは
ウィンブルドン現象の語源は、テニスの世界的な大会であるウィンブルドン選手権から来ている。
今では「最も格式の高い大会」とまで言われるが、元々はイギリスのローカルな小さな大会だった。しかし、参加ルールを規制緩和し、外国人選手の参加を受け入れるようにしたことで、世界中から競合が集まる世界的な大会となり大成功した。それが今のウィンブルドン選手権の起源だ。大坂なおみ選手が活躍されていて、日本のテニス熱も再燃しつつあるので聞いたことがある方も多いだろう。
一見ハッピーエンドだが、実は弊害もあった。イギリスの大会なのに、イギリスの選手が全く活躍しなくなってしまったことだ。男子シングルスでは、実に77年間もイギリス選手の優勝はなかったのだ。
この件になぞらえて、市場の門戸を開き自由競争を促進した結果、市場自体は活性化するものの、地元企業が海外勢に淘汰されたり買収されたりしてしまう現象を、ウィンブルドン現象と呼ぶ。
ウィンブルドン現象の例
最も有名な例は、これもイギリスの、金融市場だろう。
サッチャー政権時代に、ビックバンと呼ばれる金融市場の大規模な規制緩和が行われた。これによって、停滞していたロンドンの金融市場は再び世界の金融ハブとしての地位に復活したのだが、代わりに伝統的な金融機関のほとんどが外資系企業に買収された。
また、1970年代には、主に日本のメーカーが家電や自動車を米国に輸出強化した結果、GMなど多くの現地企業が破綻したのも1つの例だろう。
程度の違いはあれ、市場自由化により海外プレーヤーだらけになってしまったケースは、世界中にある。
また、語源通りスポーツの世界での減少にもこの言葉が使われることはまだある。例えば、日本の相撲業界でウィンブルドン現象が見られる。特に一時期は、日本人選手の横綱が不在で海外出身選手だらけだった。プロゴルフや格闘技も同様だ。ちなみに、日本の観客はウィンブルドン現象があまり好きでないらしく、外国人選手が増えると視聴率が下がるという話もある。
ウィンブルドン現象はいいことか悪いことか
ウィンブルドン現象には、ポジティブの見方とネガティブな見方がある。
ネガティブな見方はもちろん、国内のプレーヤーが淘汰されるということだ。
ポジティブな見方は、国内のプレーヤーや競争が少なくても、競争を促進して経済を活性化させることだ。地元企業の淘汰よりも市場として発展させる方が経済効果が大きいという見方だ。(多くの場合、とはいえ地元企業の活躍の場は残りはすると考える。)自由主義の経済的合理性を正当化する際に使われることもある。
イギリスの金融市場の件は、よかったことだと見る考えも多い。地元プレーヤーの力が足りなくても、海外資本の注入や活性化される競争によって、結果市場が好況にできた。
話の元になっているウィンブルドン選手権も、結果世界的な大会となり大成功した。また海外の強豪との競争にさらされることで現地選手のレベルも上がったのではないだろうか。(優勝を取り返すまで77年かかったが。)
実際のところは、ネガティブな意味で使われることの方が多い。特に規制緩和に反対し市場を守るための議論の文脈で使われる。日本のみならず、韓国の銀行やインドのBPOなどの議論でも持ち出されたようだ。
まとめ
ウィンブルドン効果:市場の門戸を開き自由競争を促進した結果、市場自体は活性化するものの、地元企業が海外勢に淘汰されたり買収されたりしてしまう現象
- 自由競争にさらされて地元企業が淘汰・買収されてしまうネガティブな現象としての見方
- 海外勢による競争促進による市場発展というポジティブな現象としてとらえる見方
がある。