「アドバンテージマトリクス」と4つの事業タイプとは?| 事業環境分析フレームワーク

「アドバンテージマトリクス」と4つの事業タイプとは?| 事業環境分析フレームワーク 1024 768 Biz Tips Collection

事業の戦略を考える上で、まず事業環境の分析が必要だ。そのための手法は様々あるが、その1つであるアドバンテージマトリクスについて解説する。

 

アドバンテージマトリクスは業界の競争環境を分析するフレームワーク

事業の戦略を決めるため、業界の競争環境を分析するフレームワークの1つとして、アドバンテージマトリクスがある。後述するが、規模の経済と差別化という観点から分析するフレームワークとなっている。

アドバンテージマトリクスでは、2つの軸で、事業を4つのタイプに分類する。
2つの軸は、「競争優位性の規模」と「競争優位性獲得のためのアプローチ数」だ。

  1. 特化型事業
  2. 分散型事業
  3. 規模型事業
  4. 手詰まり型事業

これらの4つに分類する。

 

「競争優位性の規模」とは?

「競争優位性の規模」とは、確保した競争優位性をどれほど規模化できるかだ。簡単に言うと、規模の経済が働く事業かどうかだ。(よく日本語では「優位性構築の可能性」と訳されているが、元々英語では「Size of Advantage」であり、規模の経済への言及である。)

「競争優位性獲得のためのアプローチ数」とは?

「競争優位性獲得のためのアプローチ数」は、その名の通り、競争優位性を獲得するための手段がどれくらいあるかだ。少なければ勝敗は単純に決まる。よく競争上の戦略変数とも訳される。言い換えると、どれほど差別化方法があるかだ。
例えばある業界ではコストだけが決め手かもしれないが、加えて商品特性、立地、ターゲットなど様々な差別化方法がある業界もあるだろう。

このように、2つの主流な経営戦略であった「規模の経済」と「差別化」の両方の可能性について、1つのグラフで分析したのが、アドバンテージマトリクスだ。

それでは、このマトリクスで分類された4つの事業をそれぞれ見ていこう。

 

規模型事業とその具体例

規模の経済が効き、競争優位性構築へのアプローチ方法が限られている(差別化要因が少ない)事業は、そのまま規模型事業と呼ばれる。言い換えると、競争要因がほとんど規模しかないと言える。明確な業界リーダーとしての大企業がいる業界となる。

例えば鉄鋼や自動車などが該当する。これらでは、製品での差別化が比較的難しいため、規模を追求する形になる。M&Aなども規模を追求するためのよくある選択肢の1つだ。

この事業タイプでは、シェア拡大が最も重要なゴールとなる。

 

分散型事業とその具体例

差別化要因が多くあり、規模の経済が効かない事業は、分散型事業と分類される。シェアが伸びてもROIやコストに大きな影響がないため、規模を大きくしにくい業界だ。「多数乱戦業界」とも呼ばれるように、大企業がほとんどなく、小さなプレーヤーがたくさんある状態だ。新規参入も多くなりがちだ。

例えば、飲食店や美容室、士業などは、多様なプレーヤーが様々な差別化をしながら、明確なリーダー企業はなく戦っている。

もちろん規模拡大がしにくい業界だからといって、全くできないわけではない。飲食店チェーンなどはその一例だ。しかし、基本的には無理に規模化せずほどほどの収益性を保つのが基本戦略となる。

 

特化型事業とその具体例

特化型事業は、差別化の可能性と規模化の可能性がある事業タイプだ。このような事業タイプでは、独自のポジショニングに特化することで収益を上げている企業が多数存在できる。それぞれの特化領域でそれぞれの規模で収益を上げているため、市場シェアと収益性は相関しない。

わかりやすい例が雑誌だ。雑誌はジャンル毎にその中で強いプレーヤーが存在できる上、それぞれが規模化することが可能だ。(ニッチすぎるジャンルでない限り。)専用機器メーカーも、各専用の用途毎にプレーヤーが生存できている。

この事業タイプでは、特化できる領域を見つけることが基本戦略となるだろう。

 

手詰まり型事業とその具体例

手詰まり型事業は、規模の追求も差別化も難しく、どのプレーヤーも収益性を上げにくい状態にある事業だ。このような業界では、中小企業は淘汰され残った大企業も苦しんでいるという状態になりやすい。

肥料などは1つの例だ。多くのコモディティ化した素材業界も、大規模化の限界を向かえ、手詰まり型事業となっている。

基本的には、参入しない方がいい。

 

まとめ

  • アドバンテージマトリクスでは、2つの軸で、事業を4つのタイプに分類する
  • 2つの軸は、「競争優位性の規模」と「競争優位性獲得のためのアプローチ数」
  • 「規模型事業」=競争要因がほとんど規模しかないため、明確な業界リーダーがいる業界となる
  • 「分散型事業」=差別化要因が多くあり、規模の経済が効かないため、中小企業で寡占している
  • 「特化型事業」=差別化の可能性と規模化の可能性があるため、独自のポジショニングに特化することで収益を上げている企業が多数存在できる
  • 「手詰まり型事業」=規模の追求も差別化も難しく、どのプレーヤーも収益性を上げにくい状態になっている