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部下によってリーダーシップを変える!SL理論II(状況対応リーダーシップ)とは?
部下によってリーダーシップを変える!SL理論II(状況対応リーダーシップ)とは? 1024 668 Biz Tips Collection

研究では、管理職の54%が1つのリーダーシップスタイルしか実践できないようだ。(*1)しかしSL理論によれば、唯一の最適なリーダーシップスタイルは存在せず、状況によってスタイルを使い分けることが重要だ。ここでいう状況とは、部下の習熟度のことだ。どんな部下に対してどんなスタイルがよいのか、解説する。
(SL理論は、本来のものと、SLⅡと呼ばれる後に更新さえた理論がある。ここでは最新のSLIIを紹介するが、本来のものもいずれ紹介したい。)

 

リーダーの2つの行動:指示型と支援型

SL理論では、リーダーの部下に行動は以下の2つの行動に大別できるとしている。これらの組み合わせでリーダーシップスタイルが分類できる。
指示型行動
指示型行動とは、その名の通り、明確な業務内容の指示を与えて部下の行動を規定する行動だ。
支援型行動
支援型行動は、部下へのコミュニケーションや承認、傾聴など、主に心理的・人間関係的なサポートを指す。

4パターンのリーダーシップスタイル

上記の図の通り、指示型行動と支援型行動の組み合わせで、4つのリーダーシップスタイルがある。
指示型リーダーシップ(S1)
指示型行動が多く、支援型行動が少ない。
コーチ型リーダーシップ(S2)
指示型行動も支援型行動も多い。
支援型リーダーシップ(S3)
指示型行動が少なく、支援型行動が多い。
委任型リーダーシップ(S4)
指示型行動も支援型行動も少ない。

4パターンの部下の習熟度

部下の習熟度は、スキルとコミットメントの2つで見ることが可能だ。この理論では、以下の4つで考え、基本的にD1からD4に順番に移行していくと考えられている。
D1
スキルは低いが、コミットメントは高い。
例えば、始めたばかりでやる気のある初心者だ。
D2
スキルは低いか少しあるが、コミットメントがない。
例えば、しばらく経って最初のやる気が減ったが、スキルがまだ伸びきっていない部下だ。
D3
スキルはついたが、コミットメントが流動的。
それなりのスキルがあるが、まだ責任を取りたがらない部下などが該当する。
D4
スキルもコミットメントも高い。

リーダーシップスタイルを部下の習熟度に対応させる

図の通り、習熟度に合わせて対応するリーダーシップスタイルは違う。
始めの頃は指示型行動が重要となり、中盤では支援型行動が重要となり、最後には委任する。
またこの理論では、部下の習熟度はタスクごとに意識すべきと考えている。そのため同じ部下でも、するタスクによってリーダーシップスタイルを変えることが望ましい。

4つのスタイルを使いこなせるのは管理職の1%

SL理論は、部下に合わせてリーダーシップスタイルを変える重要性を説いているが、様々なスタイルを使いこなせる人は少ないようだ。研究(*)では、以下の割合になる。
1つのスタイルしかうまくできない管理職:54%
2つのスタイルをうまくできる管理職:25%
3つのスタイルをうまくできる管理職:20%
4つのスタイルをうまくできる管理職:1%
この通り、リーダーシップスタイルの柔軟性は、レアな能力であり、うまく身に付けられれば大きな強みになるだろう。

*出所:https://mercureaace2013.wordpress.com/2013/08/02/leadership-management-situational-leadership/

仕事の進め方は段取り8割!スケジュール/タスク/ToDoの立て方コツ
仕事の進め方は段取り8割!スケジュール/タスク/ToDoの立て方コツ 1024 768 Biz Tips Collection

「段取り」=「作業の設計」
特定の業界や職種ではよく聞く言葉ではあるが、馴染みのない人にとっては違和感のある言葉かもしれない。

ここでは、”目的達成に向けて、自身が行う業務を明らかにし、To-Doやタスクを検討してスケジューリングする、一連の行為”と定義しよう。実はこの作業設計こそが全ての仕事の基本と言っても過言ではない。作業設計の出来不出来が最終アウトプットに大きく影響を与えるのだ。

本稿は主に新人ビジネスマンを想定したものではあるが、ぜひ、中堅以上の皆様も一度目を通してみて、正しい作業設計が日々出来ているか確認してもらいたい。上司と仕事のソリが合わない、仕事が遅いと指摘されているといった方がこれを知って劇的に改善した例がある。

理解を深めるために以下のような状況に置かれたと想定して欲しい。

日々業務に頑張るあなたは上司から次のような言葉を掛けられた。

「翌月曜日朝一の定例会議の場で君に調べてもらっている範囲の検討状況をプレゼンすることとなった。君の最近の頑張りを見ていて、資料にどう落とし込むかも含めプレゼンを一度任せてみたい。もちろん、事前に私の確認を通してね。あ、それと、検討状況の1つの◯◯に関しては他部署の石井さんも別の切り口から進めているから、彼の検討状況もプレゼン内容に含めておいてね。」

初めてのお客様へのプレゼンのチャンス。ここで頑張りと能力を伝えてこの先につなげたいと意気込むあなた。さあ、どうやって進めていこうか。順を追って解説していきたい。

ゴールまでの道筋を描こう

① 関係者(ステークホルダー)を把握する

業務に関わる関係者(または社)を洗い出そう。

一概に正解と言える指標はないが、初期の段階(全体像を把握する段階)ではあまりに細かすぎる粒度は避けたほうがよい。意思決定または作業の代表者程度にとどめておくのが望ましいだろう。
本件の場合だと上司、石井さん、自分となるだろうか。

②ゴールの確認とマイルストーン(中間地点)の設定

簡単に言えば、「いつまでに何をしなければいけないかを把握して、ゴールから逆算してやらなければならないことを洗い出していく」作業だ。
小学生でもできると思っただろうか。もちろんだ。難しいことはやっていない。
本件の状況において、自分ならどうするだろうか、少し読み進むのを止めて考えていただきたい。
ただし、1つだけ留意してもらいたいポイントがある。それは、可能な限り具体的に日時を検討することだ。誤っていても構わない。「所与の条件を考えればそれくらいはいるよね」を繰り返して、お尻から頭までのスケジュールをひいていってもらいたい。

改めて本件について、ゴールを確認した上で逆算していくと、、

ゴール-1:上司への説明
⇒ダメ出しを受けて修正を行う可能性がある。上司は木曜の朝一と金曜の午後しか空いていない、、、となると、遅くとも木曜日の朝9時には説明に行かなければいけない

ゴール-2:資料完成
⇒上記に則り、水曜日中には資料を作っておかなければ。

ゴール-3:資料素材収集
⇒資料を作るために必要な素材はどうなっているんだっけ。石井さん以外のパートは私の方で集まりそうだ。となると、石井さんから水曜日中にはヒアリングする必要があるぞ。石井さんの予定は、、火曜日の午前しか空いていない!もう月曜日の夕方だ!今すぐに石井さんに明日の打合せの依頼をしなければ!

いかがだっただろうか。

まずはじめに、初めてのチャンスに意気揚々として、資料の構成をどうするか、見せ方をどうするか考えた人も少なくないのではないだろうか。
そう、少なくとも本件の場合においては、調査内容の検討や資料構成の検討などより、まず第一に石井さんにアポを取らなければ上司がオーダーした内容を満たすことすらできない可能性が高かったわけだ。

③成果物と主要な検討項目の洗い出し

石井さんにアポを取ったら次は、それぞれのマイルストーン間での成果物を洗い出す。
ここまでくれば全体像の把握まで後一歩だ。マイルストーンを実現するためには、何が必要なのか(何ができている必要があるのか)を洗い出そう。併せて、成果物作成にあたって主要な検討項目も洗い出そう。
ここまでの一連の取り組みにプレゼン当日までの流れも含めて図示してみると以下のようになる。
もちろん、こんなに大仰なものを毎回毎回作る必要はないが、作業にのめりこみ全体像を忘れないためにも頭の中に絵を描いておくか、ノートに記しておくと便利だ。
さあ、これでゴールまでの道筋が明確になった!あとは一直線に走るだけ!
※別稿で触れるが、プロジェクトマネージメントの基本も上記の通りだ。より複数のステークホルダーが存在し、複雑化したプロジェクトであればあるほど、全体像を一枚でまとめた図は非常に重要になる。図を基にWBSを作成する、プロジェクト全員の合意をとる、運用する、などなどは別の機会でお話したい。

作業設計は百利あって一害なし!絶対やろう

作業を設計することで、重要なポイントを逃さずに余裕をもって業務を進められることをおわかりいただけただろうか。
それだけではなく、進捗状況を上司や周囲へ正しくわかりやすく伝えることも容易になるし、結果、信頼を獲得することもできる。
最初のうちは一々面倒くさいと思うかもしれないが、結果、最も効率的かつ効果的に業務を進めて評価を獲得することができるのだ。
ここまでお付き合いいただいたが、いかがだったろうか?
何も特別なことはなく、何なら我々が日常でやっているプロセスを明確化して肉付けしただけに過ぎない。
にもかかわらず、ことビジネスの現場になると、これが途端にできなくなるケースが散見される。自分が興味のある分野から取り掛かったり、簡単そうな箇所から取り掛かったり。
あなたが得意かどうか、好きかどうか、これらは二の次なのだ。あくまでも、やらなければならないことをやらなければならない期日までにやることこそが求められていることなのだ。
こう書くと冷たい言い方に聞こえるが、一方で気が楽にならないだろうか。人間性や趣味嗜好は関係ない、ある種のゲームのようなものだと思ってもらうといいかもしれない。ビジネスというゲームにおいて、本サイトで有利になる攻略法を身に着けながら、ぜひとも大海へと漕ぎ出して行って欲しい。進めば進むほど、ゲームは面白くなる。
健闘を祈る。
「アドバンテージマトリクス」と4つの事業タイプとは?| 事業環境分析フレームワーク
「アドバンテージマトリクス」と4つの事業タイプとは?| 事業環境分析フレームワーク 1024 768 Biz Tips Collection

事業の戦略を考える上で、まず事業環境の分析が必要だ。そのための手法は様々あるが、その1つであるアドバンテージマトリクスについて解説する。

 

アドバンテージマトリクスは業界の競争環境を分析するフレームワーク

事業の戦略を決めるため、業界の競争環境を分析するフレームワークの1つとして、アドバンテージマトリクスがある。後述するが、規模の経済と差別化という観点から分析するフレームワークとなっている。

アドバンテージマトリクスでは、2つの軸で、事業を4つのタイプに分類する。
2つの軸は、「競争優位性の規模」と「競争優位性獲得のためのアプローチ数」だ。

  1. 特化型事業
  2. 分散型事業
  3. 規模型事業
  4. 手詰まり型事業

これらの4つに分類する。

 

「競争優位性の規模」とは?

「競争優位性の規模」とは、確保した競争優位性をどれほど規模化できるかだ。簡単に言うと、規模の経済が働く事業かどうかだ。(よく日本語では「優位性構築の可能性」と訳されているが、元々英語では「Size of Advantage」であり、規模の経済への言及である。)

「競争優位性獲得のためのアプローチ数」とは?

「競争優位性獲得のためのアプローチ数」は、その名の通り、競争優位性を獲得するための手段がどれくらいあるかだ。少なければ勝敗は単純に決まる。よく競争上の戦略変数とも訳される。言い換えると、どれほど差別化方法があるかだ。
例えばある業界ではコストだけが決め手かもしれないが、加えて商品特性、立地、ターゲットなど様々な差別化方法がある業界もあるだろう。

このように、2つの主流な経営戦略であった「規模の経済」と「差別化」の両方の可能性について、1つのグラフで分析したのが、アドバンテージマトリクスだ。

それでは、このマトリクスで分類された4つの事業をそれぞれ見ていこう。

 

規模型事業とその具体例

規模の経済が効き、競争優位性構築へのアプローチ方法が限られている(差別化要因が少ない)事業は、そのまま規模型事業と呼ばれる。言い換えると、競争要因がほとんど規模しかないと言える。明確な業界リーダーとしての大企業がいる業界となる。

例えば鉄鋼や自動車などが該当する。これらでは、製品での差別化が比較的難しいため、規模を追求する形になる。M&Aなども規模を追求するためのよくある選択肢の1つだ。

この事業タイプでは、シェア拡大が最も重要なゴールとなる。

 

分散型事業とその具体例

差別化要因が多くあり、規模の経済が効かない事業は、分散型事業と分類される。シェアが伸びてもROIやコストに大きな影響がないため、規模を大きくしにくい業界だ。「多数乱戦業界」とも呼ばれるように、大企業がほとんどなく、小さなプレーヤーがたくさんある状態だ。新規参入も多くなりがちだ。

例えば、飲食店や美容室、士業などは、多様なプレーヤーが様々な差別化をしながら、明確なリーダー企業はなく戦っている。

もちろん規模拡大がしにくい業界だからといって、全くできないわけではない。飲食店チェーンなどはその一例だ。しかし、基本的には無理に規模化せずほどほどの収益性を保つのが基本戦略となる。

 

特化型事業とその具体例

特化型事業は、差別化の可能性と規模化の可能性がある事業タイプだ。このような事業タイプでは、独自のポジショニングに特化することで収益を上げている企業が多数存在できる。それぞれの特化領域でそれぞれの規模で収益を上げているため、市場シェアと収益性は相関しない。

わかりやすい例が雑誌だ。雑誌はジャンル毎にその中で強いプレーヤーが存在できる上、それぞれが規模化することが可能だ。(ニッチすぎるジャンルでない限り。)専用機器メーカーも、各専用の用途毎にプレーヤーが生存できている。

この事業タイプでは、特化できる領域を見つけることが基本戦略となるだろう。

 

手詰まり型事業とその具体例

手詰まり型事業は、規模の追求も差別化も難しく、どのプレーヤーも収益性を上げにくい状態にある事業だ。このような業界では、中小企業は淘汰され残った大企業も苦しんでいるという状態になりやすい。

肥料などは1つの例だ。多くのコモディティ化した素材業界も、大規模化の限界を向かえ、手詰まり型事業となっている。

基本的には、参入しない方がいい。

 

まとめ

  • アドバンテージマトリクスでは、2つの軸で、事業を4つのタイプに分類する
  • 2つの軸は、「競争優位性の規模」と「競争優位性獲得のためのアプローチ数」
  • 「規模型事業」=競争要因がほとんど規模しかないため、明確な業界リーダーがいる業界となる
  • 「分散型事業」=差別化要因が多くあり、規模の経済が効かないため、中小企業で寡占している
  • 「特化型事業」=差別化の可能性と規模化の可能性があるため、独自のポジショニングに特化することで収益を上げている企業が多数存在できる
  • 「手詰まり型事業」=規模の追求も差別化も難しく、どのプレーヤーも収益性を上げにくい状態になっている
業務改善や振り返りのためのフレームワーク「KPT」とは?
業務改善や振り返りのためのフレームワーク「KPT」とは? 1024 682 Biz Tips Collection

よく振り返りをするべきと言われるが、実際に振り返っても意味があったのか実感できないことが多くないだろうか。振り返りはぼんやり行っても意味はない。チームとしての場合も、個人としての場合も、振り返りを行う際はその指針として、簡単なフレームワークが1つあれば、考えるべきポイントが明確になる。

今回はそのための基本的なフレームワークを1つ紹介する。

 

KPTとは、Keep,Problem,Try

KPTは、もともとはシステム開発のプロジェクトなどで使われていた、振り返りのためのフレームワークだ。

KPTは以下の略となる。振り返る時はこのK→P→Tの順序でするとよい。
K= Keep(続けること)
P= Problem(問題があること)
T= Try(新しく取り組むこと)

たったこの3つの基本的なフレームワークだが、振り返るべきところが明確になり効率的だ。

逆に明確な指針なしの振り返りは、ただの感想になってしまいがちだ。

KPTは、プロジェクトの業務改善の一環でチームとして振り返る場合も、個人的に振り返る場合も有効だ。

もともとはチームで実施されることが多いフレームワークで、その場合はホワイトボードなどに以下のような枠を作って実施することが多い。

振り返るそれぞれの項目について見てみよう。

 

Keep (続けること)

Kでは、良かった/うまくいったので継続することをリストアップしていく。
チームで振り返る場合でも、個人的にうまくいったことをシェアしてもよい。

ポイントは、ただ良かった結果だけを挙げるのではなく、その結果に結びついた行動を挙げることだ。
(もちろん、結果を挙げてはいけないわけではない。まず結果を挙げて、どの行動がよかったのか考える順序でもよい。)

 

Problem(問題があること)

Pでは、問題があることを書き出していく。
以下のようなものが含まれるだろう。

  • 実際に問題が発生したこと
  • 不安なこと、リスクを感じること
  • よりよくできそうなこと、工夫できそうなこと

気をつけることは、個人の責任を追及するような会議にしないことだ。

犯人の吊るし上げでなく、あくまでチームとしてどんな課題があるかを考えよう。

 

Try(新しく取り組むこと)

Tでは、次に新しく試すことを書き出す。
Problemで上がった問題点の改善策などでもよいし、やったらいい気がしていることでもよい。
たくさん上げていき、最後にいくつかに絞って実行するのがよいだろう。

また、KPTを使った振り返りを複数回実施する場合は、挙げられたTryを次回のKeepやProblemで見直すとよいだろう。

 

まとめ

  • KPTは、振り返りを有意義にするためのフレームワーク
  • K→P→Tの順序で振り返りを実施
  • KはKeep(良かったので、このまま続けること)
  • PはProblem(問題のあること、改善すべきこと)
  • TはTry(新しく取り組むこと)
意図的な論点すり替え!「燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
意図的な論点すり替え!「燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 725 Biz Tips Collection

世の中は詭弁に溢れている。中には、それらしい論理ですらなく、うまく話や論点をそらそうとしてくる人もいる。そのためのテクニックが「燻製ニシンの虚偽」(Red Herring)と呼ばれる技だ。詭弁は知ることで対策することができる。今回はこの「燻製ニシンの虚偽」について解説する。

 

「レッドへリング」は、重要な論点から相手の注意をそらす技法

Red Herringの直訳は、赤いニシンだ。ニシンの匂いに気を取られて、本来の獲物を忘れてしまう猟犬の話が、語源になっている。

このニシンのように、本来の重要な論点とは外れているが、相手が食いつきそうな話題などを使って、論点をすりかえるテクニックが「燻製ニシンの虚偽」だ。
うまくいけば、本来の話題を忘れさせることができるし、脱線した話を使って議論に勝ったように周囲に見せることも可能だ。

話をそらせる方法はたくさんある。
実際、これまで紹介した詭弁のいくつかも、定義によっては燻製ニシンの虚偽の1つに分類できるだろう。
そのため全てを網羅することはできないが、いくつかのバリエーションを紹介しよう。

 

①無関係の話を持ち出す

一見関係しそうで、どうでもいい話を始めるのが、最も分かりやすい燻製ニシンの虚偽だ。
いくつか例を見てみよう。

A「Cさんは、仕事を頑張ってくれているし、成果を上げるだろう。リーダーに選出されるにふさわしい」
B「それはどうだろうか。Cさんの女性関係はルーズだからねぇ」

Cさんの女性関係は、仕事の成果を上げるかどうかとは、通常無関係だ。
しかし、女性関係は話題としてバズりやすいので議論をうまく脱線させてしまうかもしれない。

A「遅刻はやめましょう」
B「君だって先月遅刻したじゃないか」
A「いや、あれはこれこれこんな理由があって、、」
いわゆる「お前もな」のような議論も、論点をそらす技の1つだ。Aさんも遅刻したかどうかと、Bさんの遅刻の是非は、論理的に全く関係ない。しかし上の例では、Aさんはそのことをうまく指摘できずに、自分の遅刻の言い訳に話をうまくそらされてしまった。

A「A国が伸びるから、進出すべきだ」
B「みんな、Aさんは上司にゴマすってばかりで自分の意見なんて何もないよ。だから言ってることをまともに受け取る必要はない」
話し手の人格攻撃もこの一種だ。
本人の意見と本人の人間性は本来無関係だが、論点を本人の人間性の話に変えてしまうのは反対派の常套手段だ。

 

②そもそもの議論にすりかえる

A「浮気をするなんて倫理的に間違っている。」
B「でも、そもそも倫理とは何なんだい?」
A「それは皆が従うべき規範だろう。」
B「誰がそんなもの決めたんだ?自然界に倫理なんてあるのかい?」

上記の例では、浮気をしたことに対する是非の話をしていたはずだが、Aは途中でBにひっかかり、倫理とはの話になってしまっている。

意図的にとぼける技もある。
「ちょっと何言ってるかわからない」
「そもそも論点が不明確だ。ちゃんと話をまとめてくれ」
「よくわからないな。その話は今すべきなのか?」
このようなテクニックは、本題の議論をうまく避けて、そもそもの論点をどこにおくべきか、今この話をすべきかどうか、を論点に変えてしまうことができる。また、相手を馬鹿っぽく見せて、議論で負けたように見せることも可能だ。

 

③どうでもいい詳細に食いつく

そもそもの議論にすり返ることの逆パターンで、どうでもいい詳細な話にくいついてしまうテクニックもある。
重箱の隅をつついたり揚げ足をとったりする手法だ。

A「・・・ということで、A事業を推進するべきだと思います」
B「ちょっと待ってくれ、3ページのアンケートは母数が少なすぎないか?統計的にはこのサンプル数では本当にそうと言えるのだろうか。そもそもの属性の偏りも確認しているのか?」
この3ページのアンケートが、全ての議論の土台となるものであったら、このツッコミは正しいかもしれない。しかし、全体の議論に大きく影響しないものであったら、そこの是非ばかり議論することは本筋の妥当性とあまり関係ない。

A「ツールを見直すべきだ。使いづらすぎてみんなの効率性が下がっている。これだったら、全部手書きの方がマシだ。」
B「おいみんな、Aさんは何でも手書きがいいというアナログな人だからな。そんな古い考えの人の意見なんて真に受ける必要はないぞ。」
このように、ちょっとした例え話などに食いつく形もある。

 

まとめ

このように、燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)は、重要な論点から相手の注意をそらす技法だ。まともな議論を避けて相手を倒そうとするずるい戦術だ。

対策は、常に今は何の議題なのか意識することだ。そうすれば、本筋から外れていればしっかりそれを指摘して議論を戻すことができる。

ちなみに、共通してよく見られる1つのテクニックは、逆質問だ。論点をずらした逆質問をされた時は、それが本題とずれていることを指摘しよう。

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
浮気は生物学的にOK?「自然主義的誤謬」とは?
合成の誤謬と分割の誤謬とは?
権威に訴える論証の解説と例
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

B2B営業の受注見込み度を測る!BANT条件とは?
B2B営業の受注見込み度を測る!BANT条件とは? 1024 1024 Biz Tips Collection

営業案件の獲得確度は、営業担当としても、部署としても、把握すべき重要な内容だ。それ次第で、案件の優先順位や着地見込み、営業計画などが変わってくる。
しかし、営業の現場では、営業担当に獲得確度を聞いても感覚値しか返ってこない、むしろ営業担当者もどれぐらいの可能性で案件獲得の見込みとなるかよくわかっていないということがよくある。
そんな時に使えるフレームワークがBANT条件だ。

BANT条件は、Budget、Authority、Needs、Timeframe

BANTは、営業担当が受注見込み度を測るためのB2Bセールスにおけるヒアリングテクニックだ。

BANTは以下の頭文字の略となる。
Budget(予算)
Authority(決裁権)
Needs(必要性)
Timeframe(導入時期)

この4つのどれかが欠けると、少なくともすぐにの受注確度はかなり低くなる。
これが「条件」と呼ばれる理由だろう。
1つずつ見てみよう。

 

Budget(予算)

自社製品を購入するための予算があるのかを確認する。
全く予算がない、予算があっても自社製品の金額感と合わない、などの顧客では当然受注見込みが低い。
予算がこのために組まれていなくても、いつどんなプロセスで予算確保されるのか、予算確保される可能性はあるのか、把握することが重要だ。

Authority(決裁権)

営業では当然、決裁権限を持つ人物へのアプローチが最も近道だ。
逆に決裁権がない人物への営業ばかりしていては、どうしても効率が悪くなる。
「誰が実際に決裁権を持つか」、「その人物にアプローチできるか」、「目の前の人物が決裁権を持っていなくても持っている人にどう間接的にアプローチできるか」を聞き出すことは営業を効率的に実行するために重要だ。
見込み顧客の意思決定フロー・どんな稟議を通るのかをうまく聞きだせるとよいだろう。

 

Needs(必要性)

当然すぎることだが、相手に本当にニーズがあるかは確認すべきだ。
自社製品と先方のニーズのギャップがないか、よく確認しよう。

また、この時、目前の担当者個人だけの要望なのか、組織全体としてのニーズであるのかは意識しよう。
目前の担当者の個人的な要望に過ぎない場合、うまく予算が確保されないなどの可能性もある。
誰のニーズなのか(個人・会社として・部署として等)は、把握できるに越したことはない。

加えて、ニーズが具体的なのかぼんやりとしているのかも1つの確認ポイントだ。

Timeframe(導入時期)

製品の導入時期について決まっているかも確認すべきだ。
会社としてニーズはあり、いつかは導入すべきだが、今は他の優先順位が高いことに予算もリソースもかかりきりという状況もありうる。逆に、二ヵ月後にはこのような商品を導入したいと予定が決まっていれば、受注確度は高い。
一方で、他の優先順位が明確にあるわけでなく、なんとなく時期が決まっていないだけの場合は、営業担当が能動的にスケジュールを提案していってもよい。

 

BANT条件の活用方法

案件の受注見込み度を知ることで、優先順位の高い顧客を中心に営業を掛けて行く作戦を立てることができる。
これにより、営業活動全体をより効率的にしていくことが可能だ。
そのために必要な情報として、BANTの4つがあり、各法人営業担当がこれらを確認することを意識すれば、各案件の受注見込み度をしっかり把握できるようになる。

各営業員が自身の案件をしっかり把握できるようになることに加えて、営業部署として以下の2点のメリットがある。

1つは、案件受注確度の共通認識化だ。
よくこんな会話を聞かないだろうか。

「この案件確度どうなの?」

「多分行けそうなんですけどねー」

上司はよく案件の確度を気にしているが、それに対する答えはいつも営業担当の感覚になってしまう。
人によっては大げさに伝えておいたりする。そのため、あまり当てにならない場合が多い。
一方、BANT条件のようなフレームワークが部署としての共通認識になっていれば、より正確な受注見込み度を伝えることが可能だ。例えば、「決裁者にアプローチできていてニーズはあるようなのですが、予算化して導入するのは来期になるようです。なのでそれまで薄く繋がっておこうと思います。」と答えた方が、より正確な受注見込み度が伝わるだろう。

2つ目は、これらの情報をまとめて、部署として案件をセグメント化・整理が可能になることだ。
そうすれば、経営層や営業部署リーダーは、ひと目でどれくらいの案件がどれくらい受注見込みなのかがひと目でわかる。
そしてそれに応じて案件の優先順位を決めたり、来期の営業計画を立てることが可能だ。

 

BANT条件の注意点

BANT条件は、あくまで営業のヒアリング項目だ。
よくある間違いだが、マーケティング部門の道具ではない。
例えば営業がしっかり各案件のBANT条件をデータベースに入力していて、そのデータをマーケティング部門が活用するなら問題はないだろう。

しかし、マーケティング部門が率先的にBANT条件のデータを取りに行くのは基本的にうまくいかない。BANTは直接聞かないととれないデータだからだ。
マーケティング部門が、セミナーや展示会の参加者にアンケートでBANTの情報を聞き出そうとしても、正確な答えは通常返って来ないだろう。

また、BANT条件は見込み度を測り比較できる数値ではあるが、BANT条件が満たされないから見込み度が全くゼロというわけではない。あくまですぐには受注しなさそうだということなので、すぐに案件を捨てるべきとは限らない。

 

営業する時は、BANTをうまく聞き出そう

BANTは、受注見込み度を測るための、B2B営業におけるヒアリングテクニックで、以下の4つを聞き出すものだ。
Budget(予算)
Authority(決裁権)
Needs(必要性)
Timeframe(導入時期)
これらをしっかり聞き出すことで、案件の見込み度がわかり、部署としても管理可能となる。

内容よしでも損する!プレゼンの話し方や見せ方のポイント7つ
内容よしでも損する!プレゼンの話し方や見せ方のポイント7つ 1024 674 Biz Tips Collection

「内容をせっかくしっかり作ったのに、あまり受けがよくなかった、、」
「中身がたいしたことないのに、しゃべり方だけで評判がいい奴がいる、、」
そんなことはないだろうか。多数の人はプレゼンやスピーチの中身をじっくり考えながら聞いてくれるわけではない。まずは興味を引く必要もあるし、中には見え方だけで判断する人もいる。

本質的ではないが、見え方がしっかりしていると中身の説得力も増す。どんなにロジックがしっかりしていても、自信なさそうな小さい声の人がしゃべっていては、残念ながら中々説得されないものだ。プレゼンの目的は、ロジカルなストーリーを作ることではなく、人を説得することだ。また、後日に印象に残っているプレゼンは、話した内容よりもあなたがどんな話し方だったかだ。

そんな見え方で損しないように、ここを抑えるだけで劇的によくなるチェックポイントを伝える。
いきなり全てを気をつけながらプレゼンするのはきついので、上の方から少しずつ気をつけていくとよいだろう。

 

まずはここから気をつけよう:プレゼンやスピーチの話し方・見せ方

チェックポイント① 声を大きくする

声は少し大きすぎる方がよい。

声が大きいと聞き取りやすいだけでなく、自信があるように感じられる。逆に声が小さいと、聞き取りにくいだけでなく、自信がなさそうに思われる。大半の人は、話の内容のロジックをしっかり精査しながら聞いているのではなく、本人が自信ありそうかどうかで信用できるか判断していると考えよう。

元々声が大きい人以外は、思ったより小さい声になっていたりするので、気をつけるべきだ。
また、特に第一声は更に大きめにするとよい。その方が人の注目を得られるのと、自分としてもそのまま大きな声で話しやすいからだ。

チェックポイント② 姿勢を正す

姿勢もまた、本人の見え方に、大きく影響する。
姿勢がしっかりしていれば、これもまた自信がありそうに見えるし、プロフェッショナルでしっかりした人間だと写る。
猫背にならず、背筋を伸ばすように心がけよう。

チェックポイント③ 早口にならないようにする

人は話したいことに集中すると、早口になってしまいがちだ。早口すぎると、これもまた聞き取りづらかったり、観客が話についていけなかったりする。まずは、ゆっくり目に話す方が得策だ。ところどころ、数秒黙ってから次の話に行くのも全然ありだ。

チェックポイント④ えー、あー、でー、などを入れない

えーや、あーなど、つい言ってしまうことは誰でもあるだろう。これが同じものが何度も繰り返されると、観客は気になってきてしまう。また、あまりプロフェッショナルな感じがしない。どうしても思い出しながら、考えながら話しているように見られ、内容を熟知していないのではないか、と不安な印象を与えてしまう。

実際、思い出しながら、考えながら話すのはしょうがない。よっぽど事前に練習しなければそうなるのは当たり前だ。これを直す簡単なコツは、あーやえーなどと言う代わりに、黙ってしまうことだ。その方がよっぽど見え感がよい。余計なあーなどを入れるよりは間を入れた方が、観客も気にならない。

 

次にここを気をつけよう:プレゼンやスピーチの話し方・見せ方

チェックポイント⑤ 身振り手振りを使う

じっと立って動きがないよりも、手など動きがあった方が人は注目する。
そんな大したジェスチャーをする必要はない。3点あるなら指で3を見せる。スライドの注目して欲しい部分があるならそこを指す。特に意味もなく両手を広げてみる。そんなものでよい。
また、その際は、できるだけ、小さくまとまらず、大きく動くとよいだろう。

チェックポイント⑥ 視線に気を使う

ずっと右上だったり、パソコンばっかりを見ながらのプレゼンを見たことは、皆あるだろう。あまりいい印象は持たなかったはずだ。できるだけ目線は相手を見るようにしよう。
なんとなく全体を見る状態と、一人一人目を合わせていく方法などがある。相手を見れば、相手も無意識に自分に話しているという印象を受けてしっかり話を聞いてもらいやすい。また、目を合わせることで、観客は信頼や自信を感じ取るという。
また、キョロキョロしすぎもいい印象を与えないので、目線はゆっくり動かすのが理想的だ。

チェックポイント⑦ 声に抑揚を付ける

淡々と単調にしゃべっていると、人は眠くなるし、話が頭に入ってこない。
大事なところは強調するなどして、声に抑揚があるようにしよう。
大事なところで声を大きくしたり、ゆっくりしゃべったり、間をおくなどのやり方が可能だ。

 

チェックポイントの意味

これらの声・ジェスチャーなどを実施する意味は、まとめると主には以下のようになる。
ただチェックポイントを実践するよりは、こういったその目的を意識するとよりよいだろう。
・自信ありそうに見せる(声の大きさや姿勢など)
・注目を浴びる(動きをつけたり、声を大きくするなど)
・飽きさせない(動きや抑揚を単調にしない)
・聞き取りやすくする(早口にならないなど)

 

まとめ

以下のチェックポイントを抑えれば、最低限見え方で損することはほとんどなくなるだろう。
いきなり全てをクセにするのは難しいので、少しずつ取り入れていくのがよい。

チェックポイント① 声を大きくする
チェックポイント② 姿勢を正す
チェックポイント③ 早口にならないようにする
チェックポイント④ えー、あー、でー、などを入れない
チェックポイント⑤ 身振り手振りを使う
チェックポイント⑥ 視線に気を使う
チェックポイント⑦ 声に抑揚を付ける

浮気は生物学的にOK?「自然主義的誤謬」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
浮気は生物学的にOK?「自然主義的誤謬」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 717 Biz Tips Collection

浮気は生物学的に許される?遺伝子改良は不自然だから間違っている?
世はこのような詭弁にあふれている。論理的に間違っていることをしっかり見抜くには、どんな詭弁があるか頭に入れておくのが早道だ。今回は、自然主義的誤謬(自然主義の誤謬)を紹介する。

 

自然主義的誤謬とは、「である」から「であるべき」に飛躍すること

よくある例を見てみよう。以下のような主張を聞いたことはないだろうか。

「オスはできるだけ多くのメスを追いかけて、より多くの子孫を残すように遺伝子レベルでインプットされている。男が浮気をするのは生物学的にしょうがない。浮気を許すべきだ。」

確かに、オスは遺伝的に浮気しやすいようにできているだろうし、また自然界では一夫多妻の動物の方が多かったりするかもしれない。しかし、そう「である」という事実から、そう「であるべき」という規範は、論理的には導きだせない。

このように、「である」こと(物事の自然な状態)を、ゆえに「であるべき」だ(物事のあるべき状態)と、話を飛躍させるのが、自然主義的誤謬だ。
「である」事実としては、自然界の事柄に言及される場合が多い。

 

自然主義的誤謬の例

いくつか例を見てみよう。

「弱肉強食が自然界の摂理だ。弱者を救う制度はいらない。」
自然界がそうだからといって、人間が作り上げた制度が悪いとはならない。

「我々はずっとこの土地で暮らしてきた。なのでこれからもそうすべきだ。」
ずっと暮らしてきたのは事実だが、未来のあるべき論の根拠にはならない。

「女性が子育てをするのは、哺乳類として自然なことだ。女性は家庭を見て仕事は男性に任せるべきだ。」
別に人間がこれまでの哺乳類に合わせる必要はない。

「生命が死ぬのは摂理。死を受け入れるべきだ。」
これまで皆死んできたからといって、不死や長寿化の研究をするべきでないわけではない。

自然主義的誤謬の1つの注意点は、「である」事実から「であるべき」規範が論理的に導きだせないと言っているだけで、必ずしも文が間違っているとは限らないことだ。
例えば以下の文言は、大多数は正しいと同意するだろうが、論理的には正しくない。
「群れで生きる生物はみな協力しあうようにできている。なので、俺達も個人プレーにならずに互いに協力すべきだ。」

 

自然に訴える論証

自然主義的誤謬と非常に近い詭弁に、「自然に訴える論証」がある。
ほぼ同じなので、多くの場合多少混同しても問題ないが、厳密には論理構成に以下の違いがある。(分ける人と同じものとして扱う人がいる。)

自然主義的誤謬:
AはBである
ゆえにAはBであるべきだ

自然への訴え
隠れた前提:自然であるものは正しい/善い、もしくは自然でないものは間違っている/悪い
Aは自然である
ゆえにAは正しい/善い

自然に訴える論証の例:
「大麻は自然界に存在するものだ。悪いもののわけがない。」
この論理では、トリカブトだって摂取してOKになってしまう。

「遺伝子改良された食べ物は自然界に存在しない。ゆえに廃止すべきだ。」
この論理展開もよく見るが、そんなこと言ったらそもそも農業も育種法も自然界に存在しない。

 

事実→規範は論理的に繋がらない

このように、自然主義的誤謬とは、「である」こと(物事の自然な状態)を、ゆえに「であるべき」だ(物事のあるべき状態)と、話を飛躍させることだ。

こういったもっともらしい主張は、男女の役割や、遺伝子改良などの新技術といった、様々な分野で横行しているので、気をつけよう。

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
合成の誤謬と分割の誤謬とは?
権威に訴える論証の解説と例
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

【3分】2つの論理展開-演繹法・帰納法を使いこなそう!解説と例
【3分】2つの論理展開-演繹法・帰納法を使いこなそう!解説と例 1024 682 Biz Tips Collection

ロジカルシンキングができるようになるには、基本的な論理展開を理解する必要がある。

推論のための論理展開は実は2種類に集約され、それが演繹法と帰納法だ。それぞれの内容と違いを解説する。また、注意点をおさえることで、間違った使い方を避けることができるだろう。

帰納法は、複数の観察事項から共通点を見出し、結論を出す手法

帰納法では、様々な事例や事実から見出した共通点から、結論を出す論理展開だ。

例えば、観察事項が「Aさんが死んだ」「Bさんが死んだ」「Cさんが死んだ」だとする。
それらの共通点は、みんな「人間であること」と「死んだ」ことだ。
なので、帰納的に「人間は死ぬ」と結論を出すことができる。

帰納法の注意点

帰納法の注意点は、あくまで統計であり、必ずしも正しいとは言い切れないことだ。
例えば、たまたま食べた100個のアボカドがおいしかったからと言って、「アボカドはおいしい」という結論を帰納的に出しても、どこかにまずいアボカドが存在する可能性は論理的には否定できない。

そのため帰納法で重要なのは、納得感だ。観察事項が少なすぎたり偏りがあると、納得感に欠けてしまう上、結論が間違っている可能性が高くなる。
帰納的に推論を出す場合は、反証や例外がないか確認しよう。

 

演繹法は、観察事項にルールを結び付けて、結論を出す手法

演繹法では、まずルール(一般的で普遍的な事実)を前提にして、観察事項に当てはめて結論を出す論理展開だ。

例えば、前提のルールとして、「人間は死ぬ」とわかっているとする。
観察事項として、「Aさんは人間だ」とわかる。
だとすると、人間は死ぬので、「Aさんは死ぬ」と結論を出すことができる。

演繹法の注意点

演繹法は、ルールを前提に論理を展開するため、そもそもルールに間違いがあると破綻する。
例えば、「値下げをすると売れる」⇒「商品Aは値下げした」ので、「商品Aは売れます!」と説明しても、そもそも本当に「値下げをすると売れる」という前提が正しいのか微妙なところだ。例えば価格以外の性能で絶望的に負けている可能性もある。

逆に、前提のルールさえ正しければ、帰納法と違って、真理だと言い切れるのが演繹法なので、前提の正しさは一度疑うようにしよう。

 

まとめ

・論理展開は2種類ある
・帰納法は、複数の観察事項から共通点を見出し結論を導き出す展開
・帰納法の注意点は、観察事項が少なかったり偏りがあると、間違った結論になりやすいこと
・演繹法は、ルールと観察事項を結びつけて結論を導き出す展開
・演繹法の注意点は、前提となるルールがそもそも間違っていると、論理破綻すること

ロジカルシンキングにおいて、情報から新たな結論を出す際の基本となるのが、これら論理展開だ。どんなものであるかとその注意点を覚えておこう。

自由競争のメリット?弊害?ウィンブルドン現象とは | 実例と解説
自由競争のメリット?弊害?ウィンブルドン現象とは | 実例と解説 1024 682 Biz Tips Collection

グローバル化の流れに伴い、多くの国や産業で、市場の自由化・規制緩和が議論されてきている。自由化・規制緩和には当然いいこともあれば悪いこともある。ウィンブルドン現象(または、ウィンブルドン効果という)は、自由化・規制緩和によって発生する現象を呼んだ言葉だ。

ウィンブルドン現象とは

ウィンブルドン現象の語源は、テニスの世界的な大会であるウィンブルドン選手権から来ている。
今では「最も格式の高い大会」とまで言われるが、元々はイギリスのローカルな小さな大会だった。しかし、参加ルールを規制緩和し、外国人選手の参加を受け入れるようにしたことで、世界中から競合が集まる世界的な大会となり大成功した。それが今のウィンブルドン選手権の起源だ。大坂なおみ選手が活躍されていて、日本のテニス熱も再燃しつつあるので聞いたことがある方も多いだろう。

一見ハッピーエンドだが、実は弊害もあった。イギリスの大会なのに、イギリスの選手が全く活躍しなくなってしまったことだ。男子シングルスでは、実に77年間もイギリス選手の優勝はなかったのだ。

この件になぞらえて、市場の門戸を開き自由競争を促進した結果、市場自体は活性化するものの、地元企業が海外勢に淘汰されたり買収されたりしてしまう現象を、ウィンブルドン現象と呼ぶ。

 

ウィンブルドン現象の例

最も有名な例は、これもイギリスの、金融市場だろう。
サッチャー政権時代に、ビックバンと呼ばれる金融市場の大規模な規制緩和が行われた。これによって、停滞していたロンドンの金融市場は再び世界の金融ハブとしての地位に復活したのだが、代わりに伝統的な金融機関のほとんどが外資系企業に買収された。

また、1970年代には、主に日本のメーカーが家電や自動車を米国に輸出強化した結果、GMなど多くの現地企業が破綻したのも1つの例だろう。

程度の違いはあれ、市場自由化により海外プレーヤーだらけになってしまったケースは、世界中にある。

また、語源通りスポーツの世界での減少にもこの言葉が使われることはまだある。例えば、日本の相撲業界でウィンブルドン現象が見られる。特に一時期は、日本人選手の横綱が不在で海外出身選手だらけだった。プロゴルフや格闘技も同様だ。ちなみに、日本の観客はウィンブルドン現象があまり好きでないらしく、外国人選手が増えると視聴率が下がるという話もある。

 

ウィンブルドン現象はいいことか悪いことか

ウィンブルドン現象には、ポジティブの見方とネガティブな見方がある。
ネガティブな見方はもちろん、国内のプレーヤーが淘汰されるということだ。
ポジティブな見方は、国内のプレーヤーや競争が少なくても、競争を促進して経済を活性化させることだ。地元企業の淘汰よりも市場として発展させる方が経済効果が大きいという見方だ。(多くの場合、とはいえ地元企業の活躍の場は残りはすると考える。)自由主義の経済的合理性を正当化する際に使われることもある。

イギリスの金融市場の件は、よかったことだと見る考えも多い。地元プレーヤーの力が足りなくても、海外資本の注入や活性化される競争によって、結果市場が好況にできた。
話の元になっているウィンブルドン選手権も、結果世界的な大会となり大成功した。また海外の強豪との競争にさらされることで現地選手のレベルも上がったのではないだろうか。(優勝を取り返すまで77年かかったが。)

実際のところは、ネガティブな意味で使われることの方が多い。特に規制緩和に反対し市場を守るための議論の文脈で使われる。日本のみならず、韓国の銀行やインドのBPOなどの議論でも持ち出されたようだ。

 

まとめ

ウィンブルドン効果:市場の門戸を開き自由競争を促進した結果、市場自体は活性化するものの、地元企業が海外勢に淘汰されたり買収されたりしてしまう現象

  • 自由競争にさらされて地元企業が淘汰・買収されてしまうネガティブな現象としての見方
  • 海外勢による競争促進による市場発展というポジティブな現象としてとらえる見方

がある。