思考スキル

「アドバンテージマトリクス」と4つの事業タイプとは?| 事業環境分析フレームワーク
「アドバンテージマトリクス」と4つの事業タイプとは?| 事業環境分析フレームワーク 1024 768 Biz Tips Collection

事業の戦略を考える上で、まず事業環境の分析が必要だ。そのための手法は様々あるが、その1つであるアドバンテージマトリクスについて解説する。

 

アドバンテージマトリクスは業界の競争環境を分析するフレームワーク

事業の戦略を決めるため、業界の競争環境を分析するフレームワークの1つとして、アドバンテージマトリクスがある。後述するが、規模の経済と差別化という観点から分析するフレームワークとなっている。

アドバンテージマトリクスでは、2つの軸で、事業を4つのタイプに分類する。
2つの軸は、「競争優位性の規模」と「競争優位性獲得のためのアプローチ数」だ。

  1. 特化型事業
  2. 分散型事業
  3. 規模型事業
  4. 手詰まり型事業

これらの4つに分類する。

 

「競争優位性の規模」とは?

「競争優位性の規模」とは、確保した競争優位性をどれほど規模化できるかだ。簡単に言うと、規模の経済が働く事業かどうかだ。(よく日本語では「優位性構築の可能性」と訳されているが、元々英語では「Size of Advantage」であり、規模の経済への言及である。)

「競争優位性獲得のためのアプローチ数」とは?

「競争優位性獲得のためのアプローチ数」は、その名の通り、競争優位性を獲得するための手段がどれくらいあるかだ。少なければ勝敗は単純に決まる。よく競争上の戦略変数とも訳される。言い換えると、どれほど差別化方法があるかだ。
例えばある業界ではコストだけが決め手かもしれないが、加えて商品特性、立地、ターゲットなど様々な差別化方法がある業界もあるだろう。

このように、2つの主流な経営戦略であった「規模の経済」と「差別化」の両方の可能性について、1つのグラフで分析したのが、アドバンテージマトリクスだ。

それでは、このマトリクスで分類された4つの事業をそれぞれ見ていこう。

 

規模型事業とその具体例

規模の経済が効き、競争優位性構築へのアプローチ方法が限られている(差別化要因が少ない)事業は、そのまま規模型事業と呼ばれる。言い換えると、競争要因がほとんど規模しかないと言える。明確な業界リーダーとしての大企業がいる業界となる。

例えば鉄鋼や自動車などが該当する。これらでは、製品での差別化が比較的難しいため、規模を追求する形になる。M&Aなども規模を追求するためのよくある選択肢の1つだ。

この事業タイプでは、シェア拡大が最も重要なゴールとなる。

 

分散型事業とその具体例

差別化要因が多くあり、規模の経済が効かない事業は、分散型事業と分類される。シェアが伸びてもROIやコストに大きな影響がないため、規模を大きくしにくい業界だ。「多数乱戦業界」とも呼ばれるように、大企業がほとんどなく、小さなプレーヤーがたくさんある状態だ。新規参入も多くなりがちだ。

例えば、飲食店や美容室、士業などは、多様なプレーヤーが様々な差別化をしながら、明確なリーダー企業はなく戦っている。

もちろん規模拡大がしにくい業界だからといって、全くできないわけではない。飲食店チェーンなどはその一例だ。しかし、基本的には無理に規模化せずほどほどの収益性を保つのが基本戦略となる。

 

特化型事業とその具体例

特化型事業は、差別化の可能性と規模化の可能性がある事業タイプだ。このような事業タイプでは、独自のポジショニングに特化することで収益を上げている企業が多数存在できる。それぞれの特化領域でそれぞれの規模で収益を上げているため、市場シェアと収益性は相関しない。

わかりやすい例が雑誌だ。雑誌はジャンル毎にその中で強いプレーヤーが存在できる上、それぞれが規模化することが可能だ。(ニッチすぎるジャンルでない限り。)専用機器メーカーも、各専用の用途毎にプレーヤーが生存できている。

この事業タイプでは、特化できる領域を見つけることが基本戦略となるだろう。

 

手詰まり型事業とその具体例

手詰まり型事業は、規模の追求も差別化も難しく、どのプレーヤーも収益性を上げにくい状態にある事業だ。このような業界では、中小企業は淘汰され残った大企業も苦しんでいるという状態になりやすい。

肥料などは1つの例だ。多くのコモディティ化した素材業界も、大規模化の限界を向かえ、手詰まり型事業となっている。

基本的には、参入しない方がいい。

 

まとめ

  • アドバンテージマトリクスでは、2つの軸で、事業を4つのタイプに分類する
  • 2つの軸は、「競争優位性の規模」と「競争優位性獲得のためのアプローチ数」
  • 「規模型事業」=競争要因がほとんど規模しかないため、明確な業界リーダーがいる業界となる
  • 「分散型事業」=差別化要因が多くあり、規模の経済が効かないため、中小企業で寡占している
  • 「特化型事業」=差別化の可能性と規模化の可能性があるため、独自のポジショニングに特化することで収益を上げている企業が多数存在できる
  • 「手詰まり型事業」=規模の追求も差別化も難しく、どのプレーヤーも収益性を上げにくい状態になっている
意図的な論点すり替え!「燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
意図的な論点すり替え!「燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 725 Biz Tips Collection

世の中は詭弁に溢れている。中には、それらしい論理ですらなく、うまく話や論点をそらそうとしてくる人もいる。そのためのテクニックが「燻製ニシンの虚偽」(Red Herring)と呼ばれる技だ。詭弁は知ることで対策することができる。今回はこの「燻製ニシンの虚偽」について解説する。

 

「レッドへリング」は、重要な論点から相手の注意をそらす技法

Red Herringの直訳は、赤いニシンだ。ニシンの匂いに気を取られて、本来の獲物を忘れてしまう猟犬の話が、語源になっている。

このニシンのように、本来の重要な論点とは外れているが、相手が食いつきそうな話題などを使って、論点をすりかえるテクニックが「燻製ニシンの虚偽」だ。
うまくいけば、本来の話題を忘れさせることができるし、脱線した話を使って議論に勝ったように周囲に見せることも可能だ。

話をそらせる方法はたくさんある。
実際、これまで紹介した詭弁のいくつかも、定義によっては燻製ニシンの虚偽の1つに分類できるだろう。
そのため全てを網羅することはできないが、いくつかのバリエーションを紹介しよう。

 

①無関係の話を持ち出す

一見関係しそうで、どうでもいい話を始めるのが、最も分かりやすい燻製ニシンの虚偽だ。
いくつか例を見てみよう。

A「Cさんは、仕事を頑張ってくれているし、成果を上げるだろう。リーダーに選出されるにふさわしい」
B「それはどうだろうか。Cさんの女性関係はルーズだからねぇ」

Cさんの女性関係は、仕事の成果を上げるかどうかとは、通常無関係だ。
しかし、女性関係は話題としてバズりやすいので議論をうまく脱線させてしまうかもしれない。

A「遅刻はやめましょう」
B「君だって先月遅刻したじゃないか」
A「いや、あれはこれこれこんな理由があって、、」
いわゆる「お前もな」のような議論も、論点をそらす技の1つだ。Aさんも遅刻したかどうかと、Bさんの遅刻の是非は、論理的に全く関係ない。しかし上の例では、Aさんはそのことをうまく指摘できずに、自分の遅刻の言い訳に話をうまくそらされてしまった。

A「A国が伸びるから、進出すべきだ」
B「みんな、Aさんは上司にゴマすってばかりで自分の意見なんて何もないよ。だから言ってることをまともに受け取る必要はない」
話し手の人格攻撃もこの一種だ。
本人の意見と本人の人間性は本来無関係だが、論点を本人の人間性の話に変えてしまうのは反対派の常套手段だ。

 

②そもそもの議論にすりかえる

A「浮気をするなんて倫理的に間違っている。」
B「でも、そもそも倫理とは何なんだい?」
A「それは皆が従うべき規範だろう。」
B「誰がそんなもの決めたんだ?自然界に倫理なんてあるのかい?」

上記の例では、浮気をしたことに対する是非の話をしていたはずだが、Aは途中でBにひっかかり、倫理とはの話になってしまっている。

意図的にとぼける技もある。
「ちょっと何言ってるかわからない」
「そもそも論点が不明確だ。ちゃんと話をまとめてくれ」
「よくわからないな。その話は今すべきなのか?」
このようなテクニックは、本題の議論をうまく避けて、そもそもの論点をどこにおくべきか、今この話をすべきかどうか、を論点に変えてしまうことができる。また、相手を馬鹿っぽく見せて、議論で負けたように見せることも可能だ。

 

③どうでもいい詳細に食いつく

そもそもの議論にすり返ることの逆パターンで、どうでもいい詳細な話にくいついてしまうテクニックもある。
重箱の隅をつついたり揚げ足をとったりする手法だ。

A「・・・ということで、A事業を推進するべきだと思います」
B「ちょっと待ってくれ、3ページのアンケートは母数が少なすぎないか?統計的にはこのサンプル数では本当にそうと言えるのだろうか。そもそもの属性の偏りも確認しているのか?」
この3ページのアンケートが、全ての議論の土台となるものであったら、このツッコミは正しいかもしれない。しかし、全体の議論に大きく影響しないものであったら、そこの是非ばかり議論することは本筋の妥当性とあまり関係ない。

A「ツールを見直すべきだ。使いづらすぎてみんなの効率性が下がっている。これだったら、全部手書きの方がマシだ。」
B「おいみんな、Aさんは何でも手書きがいいというアナログな人だからな。そんな古い考えの人の意見なんて真に受ける必要はないぞ。」
このように、ちょっとした例え話などに食いつく形もある。

 

まとめ

このように、燻製ニシンの虚偽(レッドへリング)は、重要な論点から相手の注意をそらす技法だ。まともな議論を避けて相手を倒そうとするずるい戦術だ。

対策は、常に今は何の議題なのか意識することだ。そうすれば、本筋から外れていればしっかりそれを指摘して議論を戻すことができる。

ちなみに、共通してよく見られる1つのテクニックは、逆質問だ。論点をずらした逆質問をされた時は、それが本題とずれていることを指摘しよう。

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
浮気は生物学的にOK?「自然主義的誤謬」とは?
合成の誤謬と分割の誤謬とは?
権威に訴える論証の解説と例
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

浮気は生物学的にOK?「自然主義的誤謬」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
浮気は生物学的にOK?「自然主義的誤謬」とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 717 Biz Tips Collection

浮気は生物学的に許される?遺伝子改良は不自然だから間違っている?
世はこのような詭弁にあふれている。論理的に間違っていることをしっかり見抜くには、どんな詭弁があるか頭に入れておくのが早道だ。今回は、自然主義的誤謬(自然主義の誤謬)を紹介する。

 

自然主義的誤謬とは、「である」から「であるべき」に飛躍すること

よくある例を見てみよう。以下のような主張を聞いたことはないだろうか。

「オスはできるだけ多くのメスを追いかけて、より多くの子孫を残すように遺伝子レベルでインプットされている。男が浮気をするのは生物学的にしょうがない。浮気を許すべきだ。」

確かに、オスは遺伝的に浮気しやすいようにできているだろうし、また自然界では一夫多妻の動物の方が多かったりするかもしれない。しかし、そう「である」という事実から、そう「であるべき」という規範は、論理的には導きだせない。

このように、「である」こと(物事の自然な状態)を、ゆえに「であるべき」だ(物事のあるべき状態)と、話を飛躍させるのが、自然主義的誤謬だ。
「である」事実としては、自然界の事柄に言及される場合が多い。

 

自然主義的誤謬の例

いくつか例を見てみよう。

「弱肉強食が自然界の摂理だ。弱者を救う制度はいらない。」
自然界がそうだからといって、人間が作り上げた制度が悪いとはならない。

「我々はずっとこの土地で暮らしてきた。なのでこれからもそうすべきだ。」
ずっと暮らしてきたのは事実だが、未来のあるべき論の根拠にはならない。

「女性が子育てをするのは、哺乳類として自然なことだ。女性は家庭を見て仕事は男性に任せるべきだ。」
別に人間がこれまでの哺乳類に合わせる必要はない。

「生命が死ぬのは摂理。死を受け入れるべきだ。」
これまで皆死んできたからといって、不死や長寿化の研究をするべきでないわけではない。

自然主義的誤謬の1つの注意点は、「である」事実から「であるべき」規範が論理的に導きだせないと言っているだけで、必ずしも文が間違っているとは限らないことだ。
例えば以下の文言は、大多数は正しいと同意するだろうが、論理的には正しくない。
「群れで生きる生物はみな協力しあうようにできている。なので、俺達も個人プレーにならずに互いに協力すべきだ。」

 

自然に訴える論証

自然主義的誤謬と非常に近い詭弁に、「自然に訴える論証」がある。
ほぼ同じなので、多くの場合多少混同しても問題ないが、厳密には論理構成に以下の違いがある。(分ける人と同じものとして扱う人がいる。)

自然主義的誤謬:
AはBである
ゆえにAはBであるべきだ

自然への訴え
隠れた前提:自然であるものは正しい/善い、もしくは自然でないものは間違っている/悪い
Aは自然である
ゆえにAは正しい/善い

自然に訴える論証の例:
「大麻は自然界に存在するものだ。悪いもののわけがない。」
この論理では、トリカブトだって摂取してOKになってしまう。

「遺伝子改良された食べ物は自然界に存在しない。ゆえに廃止すべきだ。」
この論理展開もよく見るが、そんなこと言ったらそもそも農業も育種法も自然界に存在しない。

 

事実→規範は論理的に繋がらない

このように、自然主義的誤謬とは、「である」こと(物事の自然な状態)を、ゆえに「であるべき」だ(物事のあるべき状態)と、話を飛躍させることだ。

こういったもっともらしい主張は、男女の役割や、遺伝子改良などの新技術といった、様々な分野で横行しているので、気をつけよう。

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
合成の誤謬と分割の誤謬とは?
権威に訴える論証の解説と例
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

【3分】2つの論理展開-演繹法・帰納法を使いこなそう!解説と例
【3分】2つの論理展開-演繹法・帰納法を使いこなそう!解説と例 1024 682 Biz Tips Collection

ロジカルシンキングができるようになるには、基本的な論理展開を理解する必要がある。

推論のための論理展開は実は2種類に集約され、それが演繹法と帰納法だ。それぞれの内容と違いを解説する。また、注意点をおさえることで、間違った使い方を避けることができるだろう。

帰納法は、複数の観察事項から共通点を見出し、結論を出す手法

帰納法では、様々な事例や事実から見出した共通点から、結論を出す論理展開だ。

例えば、観察事項が「Aさんが死んだ」「Bさんが死んだ」「Cさんが死んだ」だとする。
それらの共通点は、みんな「人間であること」と「死んだ」ことだ。
なので、帰納的に「人間は死ぬ」と結論を出すことができる。

帰納法の注意点

帰納法の注意点は、あくまで統計であり、必ずしも正しいとは言い切れないことだ。
例えば、たまたま食べた100個のアボカドがおいしかったからと言って、「アボカドはおいしい」という結論を帰納的に出しても、どこかにまずいアボカドが存在する可能性は論理的には否定できない。

そのため帰納法で重要なのは、納得感だ。観察事項が少なすぎたり偏りがあると、納得感に欠けてしまう上、結論が間違っている可能性が高くなる。
帰納的に推論を出す場合は、反証や例外がないか確認しよう。

 

演繹法は、観察事項にルールを結び付けて、結論を出す手法

演繹法では、まずルール(一般的で普遍的な事実)を前提にして、観察事項に当てはめて結論を出す論理展開だ。

例えば、前提のルールとして、「人間は死ぬ」とわかっているとする。
観察事項として、「Aさんは人間だ」とわかる。
だとすると、人間は死ぬので、「Aさんは死ぬ」と結論を出すことができる。

演繹法の注意点

演繹法は、ルールを前提に論理を展開するため、そもそもルールに間違いがあると破綻する。
例えば、「値下げをすると売れる」⇒「商品Aは値下げした」ので、「商品Aは売れます!」と説明しても、そもそも本当に「値下げをすると売れる」という前提が正しいのか微妙なところだ。例えば価格以外の性能で絶望的に負けている可能性もある。

逆に、前提のルールさえ正しければ、帰納法と違って、真理だと言い切れるのが演繹法なので、前提の正しさは一度疑うようにしよう。

 

まとめ

・論理展開は2種類ある
・帰納法は、複数の観察事項から共通点を見出し結論を導き出す展開
・帰納法の注意点は、観察事項が少なかったり偏りがあると、間違った結論になりやすいこと
・演繹法は、ルールと観察事項を結びつけて結論を導き出す展開
・演繹法の注意点は、前提となるルールがそもそも間違っていると、論理破綻すること

ロジカルシンキングにおいて、情報から新たな結論を出す際の基本となるのが、これら論理展開だ。どんなものであるかとその注意点を覚えておこう。

論理思考の基本MECE(ミーシー/ミッシー)とは?!例や注意点を解説!
論理思考の基本MECE(ミーシー/ミッシー)とは?!例や注意点を解説! 1024 682 Biz Tips Collection

ロジカルシンキングの1つ重要なことは「分解」・「構造化」することだ。MECE(ミーシーやミッシーと呼ばれる)は、この基礎となる概念だ。あらゆるフレームワークにもこのMECEの概念が使われている。MECEな考え方ができるようになることで、論理思考力を向上できるだろう。

 

MECE(ミーシー/ミッシー)とは、「モレなくダブリなく」のこと

MECEは、以下の略だ。
Mutually Exclusive (お互いに重ならない=ダブリなし)
Collectively Exhaustive(全体で網羅的=モレなし)

物事を分解する際に、抑えるべき概念だ。
図でまとめると以下のようになる。

例えば、新製品のターゲットにすべき層を決めるために選択肢を洗い出すとしよう。
顧客ターゲットをMECEに分解するには、以下のようなカテゴリへの分け方ができる。
・年齢別(0~9歳、10代、20代、・・・)
・在住地域別(東京都、北海道、神奈川県、・・・)
・血液型(A型、B型、AB型、O型)
どれも全ての人間をカバーでき(モレなし)、一人の人間は必ずどれか1つのカテゴリに入っている状態になる(ダブりなし)ことに気づくだろう。

 

MECEがなぜ重要か

そもそも、モレなくダブリなく分解することは、なぜ重要なのだろうか。
MECEにより、しっかり情報の全体像を把握でき、議論をわかりやすくし、大事な要因の見落としをなくすことができる。

いくつか悪い例を見ていこう。

例えば、ある小売店の赤字が続いているので、原因を特定したいとする。
思いつきで原因の候補をあげてしまうと例えばこのようになる:
競合店に客が取られている、客に飽きられた、商品単価が下がった、いい商品が仕入れられていない
これでは、売上に関する項目のみで、赤字の原因の可能性であるコスト増が検討すらされていない状態になってしまう。
検討した結果ターゲットから外すのと、検討し忘れるのは大きな違いがある。
小売店の赤字の原因をMECEに分解していくと、まず「売上減」と「コスト増」があり、そこから更に分解していけば、「売上減」から「顧客減」と「単価減」に分解して、というようにモレなく原因の候補を洗い出すことができる。
こうして議論はモレをなくすことで、結論がキメ打ちになることを防げるのだ。

また、売上見込みを出す場合はどうだろうか。
いきなり数値が出せないので、分解してそれぞれの数字を足し合わせるとしよう。
「地域Aの売上」、「地域Bの売上」、「新商品の売上」
この分解でそれぞれの売上見込みを出しても、「地域Aの売上」と「新商品の売上」にダブリがあるため、足し合わせると地域Aかつ新商品の売上見込みが多めに足されてしまう。この要素で足し合わせても、出したかった全体の売上見込みが出せないのだ。

 

MECEで注意すること

MECEに分解する際は、以下のようなことに気をつけよう。

全体が何か意識する

そもそも何を分解しているのかはしっかり意識しよう。
例えばあなたがコーヒーチェーンのオーナーで、市場を分析したいとする。
この市場の定義を「コーヒーチェーン」と置くのか、「飲食店」と置くのかで、どう分解すべきかは大きく変わってくる。
「コーヒーチェーン」にとってMECEな分け方は、「飲食店」にとってはモレだらけになるだろう。

 

分析の目的に合った切り口で分解する

MECEはあくまでツールだ。なんでもMECEにさえなっていればOKというわけではない。
顧客ターゲットを分析する際、先ほど血液型での分解を例に上げた。確かにMECEな分解になるだろう。しかし、血液型で分けたことで何か有意義な結論が出せるだろうか。(よしA型をターゲットにしよう!となるだろうか?)血液型占いを信じていない限り、通常の答えはNOだろう。
極論、「何か」と「その他」に分ければ、ほとんど何でもMECEになるが、その分解によって意味のある結論が出せるのか、一度考えてみるべきだろう。

 

切り口の定義を明確にする

曖昧な切り口では、しっかりMECEにならないし、各自が違う認識をしてしまうのでコミュニケーションが阻害される。
例えば飲食店の売上を時間別に分析するとする。「朝」「昼」「夕」「夜」と分けてしまった場合、20時は夕だろうか、夜だろうか?

 

MECEはロジカルシンキングの基本!

ロジカルシンキングの1つ重要なことは「分解」・「構造化」することだ。
あらゆる論理展開において、分解された概念1つ1つが、積み木のパーツのようなものだ。ここがしっかりMECEに分解されておらずあやふやなままだと、論理展開がしっかりしていても結論まであやふやになってしまう。
日ごろから、MECE(モレなしダブリなし)を心がけよう。

合成の誤謬と分割の誤謬とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
合成の誤謬と分割の誤謬とは? | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 684 Biz Tips Collection

世は詭弁にあふれている。論理的に間違っていることをしっかり見抜くには、どんな詭弁があるか頭に入れておくのが早道だ。今回は表裏一体である2つの詭弁である「合成の誤謬」と「分割の誤謬」を紹介する。

 

合成の誤謬は、部分的な特性を全体の特性とすること

「A高校のBさんは頭がいい。なのでA高校はみな頭がいいはずだ。」

合成の誤謬(fallacy of composition)は、一部分を取り上げて、一部分がこうだから全体もこうだ、と主張する論法だ。

論理展開は以下の通りだ。
・BはXである。
・BはAの一部分である。
・それゆえ、AはXである。

他にも例を見てみよう。

「分子に意識はない。なので、分子で構成された脳が意識の源であるはずがない。」
何かによって構成されたものが、その何かが持たない性質を持つ場合もある。

「サッカー観戦で立ち上がると試合がよく見れる。なので、皆が立ち上がれば皆が試合をよく見れる。」
他の人が座っているからこそ効果があるという条件を忘れて、全員に適用してしまった例だ。このように、一部だからこそ効果のあることを全体がすると効果はなくなる。

また、合成の誤謬は、早まった一般化と似ているが違うものだ。
合成の誤謬は、あるものの一部分の特性が全体に適用されるという前提から主張を展開しているのに対して、早まった一般化は少ないサンプルから主張を展開している。結果同じようなことを言っている場合もあるが、論理展開(論理は間違っているが)が違う。

 

分割の誤謬は、全体の特性を部分の特性とすること

「A高校は進学校だ。なのでA高校のBさんも成績がよいはずだ。」

上記の例文はどうだろうか。正しい場合もあるかもしれないが、必ずしもそうとは言えないだろう。
全体の平均や合計などから、個々の特性を必ずしも正しく当てることはできない。

分割の誤謬(fallacy of division)は、全体がこうだから、一部分もこうだ、と主張する論法だ。合成の誤謬の逆パターンと言える。

論理展開は以下の通りだ。
・AはXである。
・BはAの一部分である。
・それゆえ、BはXである。

他にも例を見てみよう。

「アメリカは世界一の経済大国だ。お隣のアメリカ人Aも金持ちに違いない。」
アメリカ人全員が金持ちとは限らない。

「Aさんは、ラーメンが好きだ。なので、ネギやメンマをそのまま食わせても好きだろう。」
ラーメンが好きだからといって、材料全てが好きとは限らない。

 

まとめ

今回は、表裏一体である合成の誤謬と分割の誤謬を紹介した。
まとめると以下の通りだ。
・合成の誤謬は、部分の特性を全体の特性とすること
・分割の誤謬は、全体の特性を部分の特性とすること

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
権威に訴える論証の解説と例
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

3分でわかる!バリューポートフォリオとは?株主と経営者の両視点の事業分析フレームワーク
3分でわかる!バリューポートフォリオとは?株主と経営者の両視点の事業分析フレームワーク 1024 683 Biz Tips Collection

バリューポートフォリオ分析は、経営戦略に使われるフレームワークの1つだ。事業ポートフォリオとして、どの事業に経営資源を投下し、どの事業から撤退するか、の判断に使われる分析だ。特徴は、事業を株主視点と経営者視点の両方から分析することだ。

バリューポートフォリオは株主視点と経営者視点の双方から事業ポートフォリオを分析

以下がバリューポートフォリオ分析の例だ。

ごらんの通り、バリューポートフォリオでは、以下の2軸で各事業を評価する。
・ROI (株主視点)
・会社ビジョンとの整合性(経営者視点)
また、円の大きさは投下した資本で表すことが多い。投下した資本の大きさによって事業の力の入れ具合がわかるので、大きいほうから順に優先的にポジショニングを確認していくべきだ。

それぞれについて見てみよう。

ROI

ROI(Return on Investment)は、「投資利益率」のことだ。
一言でいえば、その事業がいくら儲かってるかの指標だ。

式としては、「利益(儲かった金)÷資本(投入した金)」で、数値が高ければ高い程、投資した金に対してより多く利益を上げていることになる。

株主にとっては、自分が投資した金がより多く利益を上げることが一番の目的のため、このフレームワークでは、このROIが株主視点として位置づけられている。

ビジョンとの整合性

金を投資してそこから更なる利益を上げるのが会社の目的の1つである一方、会社には加えて「経営ビジョン」がある。
経営ビジョンとは、会社として「将来あるべき姿」や「実現したい姿」のことだ。

これは、利益目標と関連しつつもそれと別の、会社としての夢や目標なので、このフレームワークでは、経営者視点と位置づけられている。

例えば、ライオン株式会社の経営ビジョンは以下の通りだ。

次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ
「健康、快適、清潔・衛生を通じた新たな顧客体験価値の創造」により、毎日の習慣を、もっとさりげなく、楽しく、前向きなものへ”リ・デザイン”することで、1人ひとりの「心の身体のヘルスケア」を実現する。

このように、会社として何を目指しているかを、示している。

ライオン株式会社の例で言えば、健康や快適さに関係する事業であれば、ビジョンとの整合性は高いと判断できる。逆に、広告事業や出会い系事業などを始めたら、それはビジョンとの整合性が低いと判断されるだろう。

 

バリューポートフォリオの各セグメントの戦略

ROIとビジョンとの整合性の2軸で、会社の各事業を評価すると、以下の事業を4象限のセグメントに分けることができる。
・本命事業
・課題事業
・機会事業
・見切り事業

これら各セグメントの事業に対して、どんな戦略が望ましいのか。詳しく見ていこう。

本命事業は更なる拡大

ROIも高く、経営ビジョンとの整合性も取れている事業は、本命事業だ。
しっかり利益を上げつつ、あるべき姿に向かっているという、完璧な事業だ

これは、事業ポートフォリオの中で、最重要視すべき事業たちであり、更なる拡大を狙うべきだろう。

課題事業は利益向上を狙う

会社のビジョンと整合性は高いが、利益をいまいち上げていないのは、課題事業だ。
求められるのは、採算性を改善して、うまく本命事業に持っていくことだ。
長期にわたってそれができないと、いくら会社のあるべき姿に向かって貢献しようとも、株主や投資家から撤退するよう圧力を受けてしまうかもしれない。

機会事業はビジョンとの整合性を合わせる

利益を上げているが、会社ビジョンと合致しないのは、機会事業だ。
これも、課題事業と考え方は同じで、ビジョンとの整合性を持たせて、本命事業になるように持っていくのが望ましい。

方法は2通りある。①うまくビジョンと整合するように事業を微調整・ピボット(方向転換)する。②経営ビジョンを定義し直す。もちろん②の方がハードルが高い。しかし多角化した新事業がもはやメイン事業となり、それに合わせて経営ビジョンを変更した例は実際多々ある。

ビジョンと整合しなくても、あくまで収益源として位置づけて残すという手もある。主要事業としてWebサービスを作っているベンチャーが、主要事業が利益を上げるまでシステム開発の受託を主な収入源にする場合はよくある。

しかし、ビジョンと整合しない事業を長期に続けると、従業員のモチベーション低下や対外的なブランド力低下という悪影響があるとも言われており、できるだけビジョンに合わせるようにした方が望ましい。

見切り事業は見切る

利益も上げず、本業とも関係ない事業は、見切り事業だ。
これはその名の通り、撤退するのが望ましい選択だ。

 

まとめ

・バリューポートフォリオは、自社の事業を、ROIとビジョンとの整合性の2軸で評価・分析
・ROI高・ビジョン整合性高:本命事業⇒拡大
・ROI低・ビジョン整合性高:課題事業⇒採算性向上
・ROI高・ビジョン整合性低:機会事業⇒ビジョンとのすり合わせ
・ROI低・ビジョン整合性低:見切り事業⇒撤退

「戦略」と「戦術」の違いとは?ビジネスにおける具体例と解説
「戦略」と「戦術」の違いとは?ビジネスにおける具体例と解説 1024 682 Biz Tips Collection

よくごっちゃにされてしまう「戦略」と「戦術」という言葉。しっかり違いをわかっているだろうか。2つの違いを解説する。

戦略とは中長期の方向性。戦術は具体的な手段

戦略や戦術はもともと軍事用語だ。軍事では、全体的な攻め方、例えばどこに兵を配置するか、どの地域を攻めるかなどを、戦略と呼ぶ。個別の戦闘における戦い方は戦術と呼ばれる。今ではビジネスを含め様々な場面で使われる言葉だ。

簡単に言うと、戦略は、目標達成のための全体的な方向性だ。
まず目的がと現状があり、その間のギャップをどう埋めるのか、というのが戦略だ。

対して、戦術とは、戦略に沿った具体的な手段となる。
戦略の方向性に対して、実際にどんな個々の打ち手を打つのかが戦術だ。

戦略がWhat(何をするか)で、戦術がHow(どうやってするか)と考えるとよい。
戦略では大局的・長期的な視点で向かう方向性を決めるが、戦術は短期的な具体策だ。

 

ビジネスにおける戦略と戦術の例

まずシンプルな例を見てみよう。

商品の事業戦略:まずは認知を上げる。
戦術:TV CMを打つ。

人事戦略:エンジニア人員を拡大する。
戦術:①エンジニア向けの転職サイトに掲載する。②既存エンジニアによる社員紹介制度を導入する。

戦略と戦術の違いのイメージがついただろうか。
目的に対して戦略も複数設定されることや、1つの戦略に対して複数の戦術が設定されることは問題ない。
他にも実際の例を見てみよう。

ユニクロの例

企業戦略:価格の安さで競争優位性を確立する。(コスト・リーダーシップ戦略と呼ばれる)
戦術:SPA(製造小売業)。企画、生産、販売まで一貫して自社で行うことで、低価格を実現する。

ロケット・インターネットの例

企業戦略:既存のITサービスを速攻でパクり、まだない国でローンチする
戦術:アメリカのオークションサイト「イーベイ」をパクって、ドイツで「アランド」というオークションサイトをローンチする

この企業は、この方法で200以上のサービスをローンチした。

セブンイレブンの例

出店戦略:むやみに様々なエリアに進出せず、特定の地域に高密度に出店していく
戦術:①まずは○○区にXX店出店する。②○○区に絞ってフランチャイズオーナーの募集をかける

セブンイレブンのこれは、いわゆるドミナント戦略と呼ばれるものだ。同じエリアに大量に出店することで、認知度や親近度が上がる、物流や広告のコストが下がる、といったメリットがある。
コンビニが広まり始めていた頃、別のコンビニ企業は、各地域に一店づつ出店していきセブンイレブンよりカバーする地域は広かったが、この戦略を取ったセブンイレブンの方が業績がよかったという。まさに戦略勝ちのいい例だろう。

 

戦略と戦術のどちらかが欠けてもうまくいかない

戦略と戦術は、どちらかの方が重要ということではない。しっかり両方を意識することが重要だ。

戦術なき戦略では、実行が伴わない。
どんなすばらしい戦略の絵を描いても、実際に実行しなければ意味はない。

逆に、戦略なき戦術は、どこに向かうべきかわからない、かむしゃらな努力になってしまう。
労力も分散してしまうし、どの戦術をよしとすべきかの判断も難しい。ビジネスではリソースは限られている。戦略は何をするかを決めることで、逆に何をしないかを決めていると見ることもできる。「戦略とは捨てること」と言う人もいるくらいだ。

戦略がしっかりあることで、現場での判断がしやすくなる。ただ「売上を上げろ」という状態の営業部隊よりも、「特定の業界を狙う」、「商品Aをフックにして、後々Bを追加発注させる」、などといった販売戦略的な方針がある営業部隊の方が、動きやすい。

また、戦略も戦術もあるが、戦術が戦略に対応していないというケースもある。例えば、上層部は新規開拓への注力を戦略としてあげているのも関わらず、現場は既存顧客の対応ばかりしているという場合だ。戦略と戦術は、しっかり対応させることで意味がある。

 

戦略と戦術の両方を持とう

まとめると以下の通りだ。
・戦略は、目的達成のための全体的な方向性
・戦術は、戦略に沿った具体的な手段
・戦略と戦術はいずれも欠けず、しっかり対応していることが重要

話に上がった案は、戦略なのか戦術なのか、常に意識できるとよいだろう。事業全体の話をしているのに、戦術的な具体策の話に話題がひっぱられてしまうことは多々ある。

会社のヴィジョンや目的と、戦略や戦術の関連性については、以下の記事も参考頂きたい。
組織の目的と戦略に一貫性を持たせる! VMOSTモデル

論点とは解決すべき課題 | 論点思考の 基本と2つの考え方
論点とは解決すべき課題 | 論点思考の 基本と2つの考え方 1024 700 Biz Tips Collection

論点をうまく設定できるかは、仕事ができるかどうかの1つの分かれ目だ。この能力は特に立場が上がれば上がる程重要となる。コンサルティングなど一部の業種であれば、常に意識するよう教育される場合もあるが、あまり意識されないことが実際多いのではないだろうか。そもそも論点とは何か、また論点思考とは何か、解説する。

論点とは、答えるべき問い=解決すべき課題のこと

論点とは、「答えるべき問い」のことだ。文字通りの意味であれば、「論じるべき点」だ。
一言で言うと、これを常に意識することが論点思考だ。今話していることは、本当に答えるべき問いなのか。このプロジェクトで次に答えるべき問いは何なのか。そういったことを考えるのが論点思考だ。

ビジネスシーンでは、この「答えるべき問い」にあたるのが「解決すべき課題」だ。課題の解決にいくら時間をかけようが、そもそも課題の設定が間違っていれば、意味がないか、少なくとも非効率になる。この論点設定の精度を上げるのが論点思考だ。

論点思考は、2つの能力に分けられる。
①大論点の設定と、②サブ論点の設定だ。
(実際、大論点も通常何かのサブ論点ではあるので、本質的には変わらないが。)

 

①大論点の設定 – 本当に解決すべき課題を特定する

有名な例なのでどこかで聞いたことがあるかもしれないが、以下を見てもらいたい。

AさんとBさんの前にケーキがある。どう分けたらいいだろうか。

よくある間違った答えは、正確に二等分する方法ばかり考えてしまうことだ。これは、論点を「いかに正確に切るか」に設定してしまっている。だが、本当にそれが本当に解決すべき課題だろうか。要は二人が納得すればいいのである。正確に切ることは納得のための手段でしかない。これに気づければ、論点を「以下に2人が納得できるよう分けるか」に設定して考えることができる。模範解答は「Aが切り分けて、Bが取るほうを選ぶ」だ。始めに論点設定を間違えるとこの答えは中々出ない。

こんなジョークもある。
アメリカのNASAは、100億ドルかけて、無重力空間でも使えるボールペンを開発した。一方、ロシアは鉛筆を使った。
これこそ論点思考のいい例だろう。NASAは、「ボールペンを無重力空間で使えない」という問題を解決しようとした。ロシアは、論点は「無重力空間でいかに筆記できるようにするか」だと理解した。
このとき論点思考をでききていたのはロシアの科学者であり、ロシアは100億ドルを浪費せずに済んだのだ。

この論点設定をする際、事象と原因で分けて考えるのも重要だ。例えば、Cさんが仕事でミスを起こすという問題が発生したとする。ひとまずCさんを叱ったり罰するなりして終わりの場合も多い。だが、本当にこれはCさんが100%悪いのだろうか。Cさんのミスはあくまで事象に過ぎず、同様のミスが他にも起こってないだろうか。こんな時、「ミスが起こる背景は何だろうか」と考えるべきだ。もしかしたら、業務過多になっているのが原因かもしれない。であれば解決すべき課題は、「いかに業務量を減らすか」かもしれない。

この適切な課題設定の能力は、ほとんどどんな仕事でも応用できるだろう。常に、本当に解決すべき課題は何か、意識することが大切だ。上司が課題設定してくれ、言われたことをやってればいい立場もあるが、立場が上がれば上がるほど、これを自身で考えなくてはならなくなる。

 

②サブ論点の設定 – 論点を分解する

さて、先ほどの大元の解決すべき課題を、大論点とする。これを更にサブ論点に分解するのも、重要な能力だ。いわゆる「論点整理」と呼ばれるものでもある。

例えば、ある会社として「○○国に進出すべきか」という大論点があったとしよう。そもそもこれは本当に検討すべきかと考えるのも論点思考だが、会社の状況から考えて正しい大論点だったとしよう。じゃあこの論点がわかったところで、すぐに答えが出せるだろうか。話がざっくりしすぎていて、何から手をつけたらいいかわからないだろう。

こんな時は、大論点を更にサブの論点に分解することが大切だ。「○○国に進出すべきか」という問いに答えを出すためには、どんな問いの答えがわかればいいか考えるのだ。

例えばの例は、「市場の成長が見込めるか」、「競合に勝つ見込みがあるか」、「自社に進出できるリソースがあるか」だ。これら3つのサブ論点に答えが出せれば、「○○国に進出すべきか」の答えが出せるだろう。このサブ論点を更にサブサブ論点に分けていってもよい。

この論点整理する能力が弱いと、せっかく大元の課題の設定が合っていても、適切に答えが出せないだろう。「○○国に進出すべきか」という例でいうと、「○○国は日本語ができる人がいるか」などとサブ論点を設定しても(商品によるが)全く意味はないし、逆に「競合に勝つ見込みがあるか」の視点がもれていると、進出した後に間違いだったことが判明するかもしれない。適切なサブ論点を設定するには、ロジカルシンキングで論理的に考える能力も重要だ。

 

論点思考で真に解決すべき課題を特定しよう!

論点思考ができれば、本当に大切な問題に意識を集中して結果を出すことができる。先ほどのCさんのミスの例で見ても、その原因を特定して解決しようという意識がなければ、永遠に同じようなミスをもぐら叩きする状態になってしまう。また、論点思考は問題解決の効率化にもなる。無限のリソースがあれば、全ての手を打つことができるが、そんなことはないので、優先順位が必要だ。適切な課題設定、適切なサブ論点を設定することで、優先的に手を打つべきことだけにリソースを集中できるのだ。

また、論点思考以外にもロジカルシンキングなど、様々な思考法がある。これらはごっちゃにされることが多い。論点思考と他の思考法の違いは、以下を確認して頂きたい。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違いは?思考法の整理

わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ
わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ 1024 576 Biz Tips Collection

わら人形論法とは、ストローマン、ダミー論証とも呼ばれる詭弁の1つ。相手の意見を歪曲して、その歪曲した意見に基づいて論破する、というテクニックだ。Twitterなどでの言い争いでもよく見られる。実際にどんなものか、種類とそれぞれの例を見ていこう。

わら人形論法は、相手の主張を歪めて、それを攻撃する手法

わら人形では、相手の意見を歪曲、誇張、言い換えなどをし、本人の本来の意見でなく、都合よく歪曲した意見を叩く。あたかも本人でなく、自分で作り出したわら人形を攻撃するかのようにだ。これにより、相手を論破したことにしようとするテクニックだ。これは一種の論点のすり替えでもある。

相手の意見の歪め方には、複数のパターンや特徴がある。多くのわら人形論法は、以下のパターンを複合的に使っている。いくつか見ていこう。

 

パターン① 極端な逆のことを主張していることにする

以下の例を見てみよう。

Aさんの主張:「子供を道路で遊ばせるのは危ない。」
わら人形論法:「Aさんは、子供を家に閉じ込めておけと言っている。果たしてそんな教育が正しいのでしょうか。子供が外で遊ぶのはいいことだ。」

明らかにAさんは、子供を家に閉じ込めておけなどとは言っていない。もっと言うと、外で遊ぶのがいけないとも言っていない。主張しているのは、道路で遊ぶのが危ないということだけだ。
ここでは、まず道路で遊ぶのが危ないという意見を、外で遊ぶのがよくないと言っているとことにしている。「道路で遊ぶ」はあくまで「外で遊ぶ」の中の1ジャンルだ。その上で、つまり子供は家に閉じ込めておくべきだと主張したことにしている。

他にも以下のような例がある。
Aさんの主張:「世界中の民主主義国家で、ポピュリズムが台頭している。なんとかしなくてはならない。」
わら人形論法:「独裁国家を肯定するというのか!」

Aさんの主張:「軍事予算を減らすべきだ。」
わら人形論法:「Aさんは国を守らなくてもよいと言っている。」

 

パターン② 拡大解釈する

Aさんの主張:「警察は容疑者のメール履歴を見る権限を持つべきだ。」
わら人形論法:「疑わしいというだけで、国家が人のメールを見れるだなんて、とんでもない制度だ。これは明らかに市民のプライバシーの侵害だ。Aさんは監視国家を作ろうとしている。これを止めなければ日本は人権のない国になってしまう。」

Aさんは、そこまで言っていない。この論法は、論点を監視国家の是非や人権の話に摩り替えている。
このように、Aということは、Bも言っている、ということはCも言っている、とどんどん拡大解釈していき、最後のCを叩くのがわら人形論法の1つのやり方だ。

以下のような例も拡大解釈の一種だ。
Aさんの主張:「刑務所に年間5000億円かかっている。制度改革が必要だ。」
わら人形論法:「刑務所は必要だ。犯罪者を社会に出しておくことは、どう考えても容認できない。」

 

パターン③ 間違った例を持ち出す

Aさんの主張:「アンケートの結果、70%がXXに反対でした。アンケートでは、各年代からランダムで選択肢、合計800サンプルに聞きました。」
わら人形論法:「たった一部の人たちに聞いただけでそれを皆の意識というなんておかしい。だったら次の選挙もほんの数百人の一握りで決めればいい。そんなの民主主義と呼べるか。そんなアンケート無効だ。」

確かに選挙は、一握りの人たちだけに聞いたら、民主主義として終わっている。だが、アンケートで一部のサンプルに聞くことの是非と、選挙で一部のサンプルに聞くことの是非は、別の話だ。このように間違った例に当てはめて、相手の主張を否定するのも、1つのわら人形論法だ。

以下の会話も同じような手法が使われている。
「火の扱いは気をつけなさい。怪我するかもしれないでしょう。」
「それを言ったら、サッカーをしてても怪我するかもしれない。そんなこと気にしてたら何もできないよ。」

 

パターン④ 発言の一部を取り出す

Aさんの主張:「資本主義が競争を促して結果格差ができることは悪いことではない。重要なのは、結果の格差でなく、機会の格差を減らすことだ。皆が平等な機会を持った上で、努力の結果格差ができるのは悪いことではない。もちろん程度もあるが。」
わら人形論法:「Aさんは、格差社会を良いことだと言っている。」

発言の一部を取り出して、それが本人の主張であるかのように話すのも、一種のわら人形だ。意見を故意に単純化しているという見方もできる。

ただの例え話に噛み付くのもその1つのやり方だ。たとえその例があまりよい例じゃなかったとしても、主張自体が間違っていることにはならない。

 

パターン⑤ 関連する別のものを主張していることにする

Aさんの主張:「トランプの施策には、実際悪くないものもある。」
わら人形論法:「Aさんは、人種差別を肯定している!」

Aさんはトランプの一部を肯定しただけだ。この論法では、トランプの別の要素も肯定していることにしている。

有名な例では、かつてニクソン大統領も、このようなわら人形を使って批判を退けた。簡単に要約すると、以下のような話だ。
批判:「ニクソンがふところに納めた選挙資金$18,000は違法で返却すべきだ。」
回答:「確かに私は支持者から犬を譲り受けた。とてもかわいい犬で、子供も気に入っている。誰がどう批判しようと、私はこの犬はキープする。」
誰も、譲り受けた犬のことは批判していない。批判しているのは着服した金だ。しかし、こんなロジックでもうまく世間の目を批判からそらすことに成功したらしい。しかも犬と子供を持ち出して感情に訴えるのは、さすが政治家といったところだろうか。

 

わら人形論法では、冷静に相手の間違いを指摘しよう

わら人形論法を使われたら、一番の対策は、相手の論理展開の間違いを指摘してやることだ。例えば最初の道路で遊ぶ例であれば、「家に引きこもっていろとは一言も言っていません。外で遊ぶことも否定していません。道路で遊ぶのが危ないと言っただけです。」といった形だ。自分がいない場で使われるのが一番たちが悪いのだが。
わら人形論法(ストローマン)は、相手の主張を歪めて、それを攻撃する手法だ。勢いで押し切れる場合もあるだろうが、論理的に間違っていることは認識しよう。

 

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方

  • 1
  • 2